桝本純さんのこと
昨日、情況出版の服部一郎さんより送られた櫻井善行『企業福祉と日本的システム』を紹介しましたが、実はそれに同封して、服部さんも編集に加わっている雑誌『情況』2020年冬号もいただきました。
http://www.mosakusha.com/newitems/2020/01/_202057.html
特集は「ポピュリズムの時代」で、下記のように結構硬派な論文が並んでいますが、ここではそれが主眼ではありません。
左翼ポピュリズムは、安倍政権へのオルタナティブとなりうるか-最近のイタリアの議論を参照して考える | 中村勝巳
右翼ポピュリズムの躍進-「左翼の衰退」と「非極右性」を中心として | 諏訪共平
中国革命の「群衆」-晋察冀軍区「抗敵劇社」を中心に | 丸川哲史
「ロペス・オブラドール政権」とポピュリズム | 山端伸英
実は目次の左端の方に、「追悼 桝本純さんを偲んで」とか「桝本純さんを偲ぶ会への弔辞」といった文章が載っているんですね。
桝本さんは、ここではかつてのブントの理論的リーダーとして「偲」ばれているんですが、彼はその後労働組合ナショナルセンターの同盟のプロパー職員となり、その後連合に移り、連合総研の副所長もされていて、私との関係ではこの頃にかなり密接なおつきあいをさせていただいたんですね。
彼のおじいさんが第1回ILO総会に労働者代表として出席した桝本卯平であったということは、本ブログでも何回か取り上げてきた話題です。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/02/post-570d52.html(桝本卯平@ILO第1回総会のその後)
・・・・ILO第1回総会における日本の労働者代表となった桝本卯平がその後どうなったかを知る人は少ないのではないでしょうか。実は彼は労働問題の論客となり、『労資解放論』などの著書もあるほか、持論の労働者自治生産を実行しようとしたりと、いろんな活動をしています。
さらに、彼の娘である桝本セツがその世界では有名人です。左翼運動に飛び込み、妻子ある岡邦雄を「略奪愛」して子どもを産む。その姿は澤地久枝の『昭和史のおんな』(文春文庫)に描き出されています。
そうして生まれた子どもが、昨年亡くなった元連合総研副所長の桝本純さんであったということを、知る人はどれくらいいるでしょうか。旧同盟から連合に移った組合書記プロパーとしての彼を知る人は労働界隈には結構多いと思いますが、その血脈を語ることはほとんどなかったですから。
退職後、卯平じいさまのことを調べて本にしたいみたいなことも語っていましたが、かなわなかったようです。
« 早川智津子『外国人労働者と法』 | トップページ | 『HRmics』35号は労使関係が特集 »
日本の労働運動にとっては由緒正しき血統のお方とはいえ、ブントの理論家が同盟の書記局へ入職するというのはやはり不思議です。当人によると共産党関係のコネを使った、とのことらしいのですが、それでも同盟が採用するものなのか、また同盟で働こうと決意したってのもやはりわからないです。内部から反旗を翻すとかそういうわけでもないですからね。これは実に不思議ですが、分からないままとなりそうです。
投稿: 希流 | 2020年4月 6日 (月) 21時58分
そこのところは語ることはなかったですね。
まあ、ブントも同盟も反日共ということでは共通しているのかなと思っていましたが、「共産党関係のコネを使った」というのでまた更にわからない。
でも、労働組合書記という顔の奥に、深く秘めたものを感じさせることがありました。その昔、Niftyserveの現代思想フォーラムで「純」というハンドルネームで活躍していたころの書き込みなんか、今読み返してみても凄いのが結構あります。
投稿: hamachan | 2020年4月 6日 (月) 22時37分