若手官僚二題:スレイブ厚労省vsポエム経産省
いや、タイトルの通りなんですが、
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000540524.pdf(厚生労働省改革若手チーム緊急提言)
厚生労働省に入省して、生きながら人生の墓場に入ったと ずっと思っている
https://www.meti.go.jp/press/2020/04/20200422001/20200422001-1.pdf(経済産業省・官民若手イノベーション論ELPIS)
半年かけて、若手100人で30年後の未来を議論
いやまあ、いろんな議論をするのはいいことです。
でも、ただでさえ少ない人数の中からコロナ医療対策に人を応援に出し、残った数少ない人数で(たとえば労働関係でいえば)必死に雇用調整助成金の要件緩和を作り、通達し、しかし支給決定が全然少ないと新聞に叩かれ、言い訳させられている若手官僚から見れば、この時期に若手100人で30年後の未来を議論できる役所がすぐ隣にあるなんて、夢の国の話みたいに感じるでしょうね。
(追記)
この半ば冗談めかした記事を、峰崎直樹さんに『チャランケ通信』で取り上げていただいているんですが、そこではもう少しまじめに「経産省的なるもの」に対する批判がさく裂していて、二木立さんの言葉を引いて
・・・かつて霞が関では、旧通産省は「千三つ官庁(千の提案で三つ実現すればよい)、旧経済企画庁は「公家の館」と呼ばれていました。いずれも軽やかではあるが、詰めの甘い、アイディア倒れの官庁といったニュアンスです。・・・・
とか、いや確かに、詰めの甘さ、アイディア倒れの典型例が眼前に展開していますな。ちなみにトリビアですが、せんだみつおという芸人の名前は、この「千三つ」からきています。千三つ芸人というわけです。
で、私のこのエントリを引いて、こう慷慨されます。
・・・この両省の置かれている現実、どう見ても同じ日本国の中央省庁のこととは思えないほどのひどい格差がありすぎると思う。経済が成熟していて、エネルギーと中小企業対策ぐらいしかやることがなくなった省と、厚労省のように総定員法の下での定数不足のしわ寄せをまともにかぶりながら、国の予算の半分近くを占める年金・医療・介護・少子化・雇用といった国民生活に密着した仕事に追われている省の違いがあまりにも露骨に出ているわけだ。・・・・
まあ、まじめな言い方をすれば、国民にとって一番大事な仕事をしている役所がスレイブにあえぎ、一番そうじゃない役所がポエムを謳歌するというのは、やはりどこかが間違っているというべきなのでしょう。
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厚労省の「提言」、多すぎる業務量はこれまでも知られていますが、省内でのハラスメントとか、廊下の蛍光灯の暗さとか、53ページに及ぶ涙の訴えという感じで、気の毒ながら笑ってしまったな。一方の経産省イノベ論、ポエムではありますが、今回のコロナ対策もいずれは感染対策と経済活動を含む国民生活対策の両立をめざさないとならないだろうし、また、つい昨年までは首都圏直下型地震が国難のメインテーマだったように思いますが、将来の様々なリスクマネジメントも考えた長期的視点での政策は必要かと。もっともそれは本来、政治家の役割のはずですが。スウェーデンのコロナ対策では、陣頭指揮をとっているテグネル氏はいわば同国厚労省の医系トップで、データに基づいて「必要なら何ヶ月も何年もこれで行ける」というスタンスでやっているようで、北欧万歳のつもりではないけれどもなかなか興味深いところ。
なお、どちらの省の引用も「若手から」。一気に話が卑小になりますが、ある省庁ではいまだにエレベーターに乗り降りする際でも「若手は後から」が断固として守られている、つまり、若手によって良き伝統が継承されているのですね。
投稿: 小人閑居中 | 2020年4月28日 (火) 07時53分