神林龍『正規の世界 非正規の世界』に日本学士院賞
新型コロナウイルスで埋め尽くされるような日々ですが、気が付くと神林龍さんの『正規の世界 非正規の世界』に日本学士院賞が授賞されていました。
https://www.japan-acad.go.jp/japanese/news/2020/040601.html#003
神林 龍氏は、戦前期から現代にいたる日本の労働経済の諸側面—職業紹介制度、長期雇用と年功賃金によって特徴づけられる日本型雇用制度、正規・非正規雇用問題、自営業衰退問題、賃金および業務(タスク)構成からみた二極化現象、解雇権濫用・就業規則変更問題、最低賃金制度・労働者派遣法問題等—を取上げ、通念にとらわれない斬新な考察を加えてきました。神林氏の『正規の世界・非正規の世界—現代日本労働経済学の基本問題』(慶應義塾大学出版会、2017年11月)は、それらの興味深い発見事実を1世紀にわたる歴史のなかにおき、それによって、現代日本の労働市場の全体像を提示し、今後どの方向へ変容してゆくかを描き出した大著です。なかでも、非正規雇用の増加を説明する要因が正規雇用からの脱落ではなく自営業の縮小であったことを実証し、賃金格差の検討に加えてタスク分析を導入して二極化現象の実態を明らかにしたこと、そして労使自治と第三者介入の対比を軸に労働経済の基調とその変容を描き出したことは斬新で、特筆に値します。
神林さんは一流の労働経済学者であるだけでなく、歴史への造詣も深く、本書にはそういう神林さんらしさが存分に表れています。本ブログでは、本書をお送りいただいたときと、
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2017/11/post-9678.html
労働関係図書優秀賞を受賞されたときに、
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2018/10/post-4ef7.html
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