『社会政策』第11巻第3号
社会政策学会の『社会政策』第11巻第3号は、「一億総活躍社会」の現実を問うというのが特集で、いや個々の論文はなかなか面白かったりするんですが、肝心の「一億総活躍社会」との関りが(いや、一応説明はされているものの)なんだかぼけているという印象。その象徴が、仁田道夫さんの座長報告で、全体をとりまとめるどころか、各報告とは関係のない公共投資の話とふるさと納税の話に終始しています。
https://www.minervashobo.co.jp/book/b498424.html
これって、率直に言って、「一億総活躍」をテーマに選んだのが失敗だったということじゃないかという気がしますね。繰り返しますが、ここの論文はなかなか読みごたえがあって面白かったのです。ただ、全体像が像を結ばない。
【特集】「一億総活躍社会」の現実を問う
〈特集趣旨〉座長報告:「一億総活躍社会」の現実を問う(仁田道夫)
「一億総活躍」と身分制雇用システム(禹宗杬)
「一億総活躍社会」の背後で進む「外国人材の活用」:何が彼/彼女らの「活躍」を阻むのか?(鈴木江理子)
タクシー運転者を取り巻く様々な規制と「規制緩和」(中村優介)
日本の労働組合の変貌と現況(浅見和彦)
あと、この号で興味をひかれたのは、梅崎修さんらによる家族賃金の論文です。人権争議と謳われた近江絹糸争議後の労使交渉で、労働側が男女異なる賃金制度を要求していたという話。まあ、拙著『働く女子の運命』の一つのテーマでもあるんですが、生活給原理から男女異なる扱いを当然視していたのは労働組合サイドであったということを実証しています。
【投稿論文】
「家族賃金」観念の形成過程:近江絹糸人権争議後の交渉を対象に(梅崎 修・南雲智映・島西智輝・下久保恵子)
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