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2020年3月 1日 (日)

『月刊経団連』3月号

202003_coverthumb140xauto10726 『月刊経団連』3月号は、「エンゲージメントと価値創造力の向上 ―2020年春季労使交渉・協議に向けて」が特集ですが、

http://www.keidanren.or.jp/journal/monthly/2020/03/

座談会:Society 5.0時代を切り拓くエンゲージメントと価値創造力の向上
大橋 徹二 (経団連副会長、経営労働政策特別委員長/コマツ会長)
岡本 毅 (経団連副会長、雇用政策委員長、教育・大学改革推進委員長/東京ガス相談役)
畑中 好彦 (経団連審議員会副議長、イノベーション委員長/アステラス製薬会長)
武石 恵美子 (法政大学キャリアデザイン学部教授) 

ワーク・エンゲイジメントの向上に向けて 加藤勝信(厚生労働大臣) 

「経済の自律的成長」「社会の持続性」実現のために、分配構造の転換につながり得る賃上げに取り組む ―2020春季生活闘争の意義と役割 神津里季生(日本労働組合総連合会会長) 

持続可能な社会に向けて徳島の挑戦 林 香与子(徳島県経営者協会会長/マルハ物産会長) 

日本型雇用システムの今後 濱口桂一郎(労働政策研究・研修機構(JILPT)労働政策研究所長) 

アウトプット重視の働き方改革 大橋智加(パナソニックコネクティッドソリューションズ社人事・総務担当常務) 

トヨタ生産方式で全業務を見直せ―良き伝統をさらに磨き、悪しき習慣を断絶せよ 瀧 康洋(水明館代表取締役) 

日吉の働き方改革に見るダイバーシティ―中小企業だからこそできる不断のイノベーション 大角浩子(日吉総務課課長) 

2020年版経営労働政策特別委員会報告―Society 5.0時代を切り拓くエンゲージメントと価値創造力の向上 (経団連労働政策本部) 

というわけで、わたくしも「日本型雇用システムの今後」というタイトルで寄稿しております。

http://www.keidanren.or.jp/journal/monthly/2020/03/p28.pdf

日本型雇用に対する評価の変遷
日本型雇用の本質的な課題~メンバーシップ型とジョブ型
専門能力を活用するジョブ型正社員の中核化 

歴史を概観した前半に続き、後半でこう述べて、25年前のアイディアをもう一度思い出してみたら?と問いかけております。 

・・・・日本型雇用システムに対する改革論の本丸は、職務無限定のメンバーシップ型正社員でも家計補助的非正規労働者でもない、欧米やアジア諸国では一般的なジョブ型正社員をいかに広げていくかである。しかし、それが非正規労働者の救済策として持ち出されたことも影響してか、旧来の正社員モデルに固執し、ジョブ型正社員をメンバーシップ型正社員よりも格落ちであるかのようにみなす発想が牢固として根強く、なかなか広がっていく気配がない。会社への帰属よりも専門的な職務で職業人生をわたっていくという本来のジョブ型のモデルが、日本社会では今なお周縁化されているのである。

 改めて振り返ってみると、今から25年前の『新時代の「日本的経営」』は功罪含めて示唆するところが大きい。そこでは「長期蓄積能力活用型」と「雇用柔軟型」の間に「高度専門能力活用型」の創設が提起されていた。これが両者の中間におかれているのは、その定着性(裏返せば流動性)の観点からであって、その社会的地位がメンバーシップ型正社員とパート・アルバイトの中間という意味ではなかったはずである。ところがこの四半世紀、「契約社員」という名の新たな非正規労働者は明らかにメンバーシップ型正社員の下に位置付けられ、パート・アルバイトと大して変わらないような存在となってきた。高給の「働かないおじさん」の隣で、薄給の非正規労働者たちが主戦力化しているという、現代日本のあちこちで見られる光景は、日本社会がやるべきであったのにやってこなかったことがなんであるのかを雄弁に物語っている。メンバーシップ型正社員をそのままにして、その下に申し訳程度にジョブ型正社員をくっつけるというような解法はもはや通用しがたい。

 今日喫緊の課題となっている日本型雇用システム改革の切り口として、この25年前の「高度専門能力活用型」を中核に位置付ける形で改めて見直してみてはどうか。必ずしも「高度」でなくても、専門能力を活かし、専門分野で生きていく職業人生の在り方を、(あえて別様に定めない限り)労働者の基本モデルとして中核化するのである。その場合、具体的な専門能力を欠く抽象的な長期蓄積能力などというものは一切認められないこととなろう。

 もっとも人事の現場にとっては、現に新卒一括採用で入「社」しているメンバーシップ型正社員をいかにして専門能力活用型のジョブ型正社員に移行させていくかが、最大の課題にならざるを得ない。人口の高齢化に対応して、65歳を超えて70歳まで就業する社会が求められる中では、例えば30代のような職業人生の早い段階で自分のライフワークとなるべき専門職を見いだし、ジョブ型のトラックに乗り換えることが必要になるだろう。それを会社がどこまで支援できるのか、それとも邪魔をするのか、が問われることになろう。

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コメント

教育社会学者殿

>“ジョブ型正社員をメンバーシップ型正社員よりも格落ちであるかのようにみなす”
>“「優秀」=「無制限的な働き方に向いてる」という論理は「日本限定」で広く共有されている「常識」”

hamachan先生は、
http://hamachan.on.coocan.jp/roukijunpo121125.html
  『労基旬報』11月25日号  「日本特有の“普通のエリート”を見直す時期」
で以下の様に仰っています。

>職務の限定なく会社の必要に応じてどんな仕事でもやる、時間や空間の限定なくいつでもどこでも仕事をする、残業や配転を断るような者は解雇されても仕方がない、といった日本型「正社員」の規範は、欧米ではごく一部のエリート層労働者にのみ適用されるものです。アメリカのエグゼンプト、イギリスのマネジリアル、フランスのカードルなど、こうしたエリート層は、入口からその身分であり、若い頃からそれにふさわしい極めて高い処遇を受けています。
それに対して圧倒的多数の普通の労働者は、そのような義務は負わず、ほどほどの処遇とほどほどのワーク・ライフ・バランスを享受しています。

つまり
 ・エリート層労働者はメンバーシップ型であり、非エリート層労働者はジョブ型である
 ・エリート層労働者は無制限的な働き方である
という事は、「世界(欧米)共通」で広く共有されている「常識」のようです。
「日本限定」で広く共有されている「常識」は、
 ・正社員は入口ではエリート層労働者と非エリート層労働者が明確に分離されていない
  (全員がエリート層労働者(の候補)として扱われる)
という事ではないかと思います。

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