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2020年3月 9日 (月)

大橋弘編『EBPMの経済学』

491810 大橋弘編『EBPMの経済学 エビデンスを重視した政策立案』(東京大学出版会)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.utp.or.jp/book/b491810.html

EBPM(客観的な証拠を重視する政策立案)に対する関心が国内外で高まっている.経済学者と現役の政策立案者が,EBPMに求められる取り組みを6つの政策分野において論じる.現状を踏まえた,EBPMに関する議論を活性化するための材料を提供する.

ちょうどまさに今、新型コロナウイルスでエビデンスがどうとかこうとかという話が盛り上がっていますが、本書はそういう医学的エビデンスあるいはより広く自然科学的エビデンスの話というよりも、経済学的エビデンスの話が中心です。第3章がちょうど「医療・介護政策におけるEBPM」ですが、その副題が「医療費適正化政策の施策効果を検証する」ですから。

詳しい目次は上記リンク先にありますが、本ブログの観点から見て見落とせないのは、第2章です。

第2章 労働政策におけるEBPM――労働政策決定の正統性との関連から(神林 龍)
 1.はじめに
 2.旧来型労働政策決定の仕組み
 3.労働政策決定におけるEvidenced Based Policy Making
 4.おわりに

【コメント】労働政策におけるEBPMの可能性(中井雅之)
 1.はじめに
 2.労働政策審議会の三者構成原則とEBPMとの関係
 3.実効ある労働政策の実施のためのEBPMの実装
 4.おわりに
 補論 労働政策の財源について 

そう、神林龍さんはここで、例の三者構成原則との絡みで労働政策におけるEBPMを論じているんですね。

・・・現実的には、EBPMの実装を考えると、労使自治や民主主義的意思決定など日本の労働社会の根幹にある考え方とEBPM的発想との距離を測るのが難しく、どの場面でどのようにEBPMを用いるべきかの判断は定かではない。現状のデータ整備の貧弱さを考えると、一足飛びにEBPM的発想に基づく事前評価を導入するよりも、PDCA的発想に基づく事後的検証を着実に積み重ねるという方向も捨てるべきではないだろう。・・・・

思いつきでぶち上げた政策がその後知らんぷりという傾向の役所もあるだけに、事後的検証の重要性は強調する必要があると思います。

ちなみに、恐らく本書執筆者が想定している経済学的な意味でのエビデンスとはちょっと性格が違うかも知れませんが、6年前にエビデンスなる言葉をタイトルに入れたエッセイを書いたことがありますので、ご参考までに。

https://www.jil.go.jp/researcheye/bn/001_140609.html (エビデンスに基づいた解雇規制論議)

・・・・なお、個々の事案の内容は大変興味深いものがあるのだが、紙幅の関係でここでは触れられない。是非上記報告書に目を通していただきたいと思う。判例集から想像される姿とはまったく異なる日本の職場の実相が、エビデンスと共に伝わってくるはずである。


 

 

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