末啓一郎『テレワーク導入の法的アプローチ』
同じく讃井さんよりお送りいただいたのが、末啓一郎『テレワーク導入の法的アプローチ -トラブル回避の留意点と労務管理のポイント-』です。
http://www.keidanren-jigyoservice.or.jp/public/book/index.php?mode=show&seq=564&fl=
折しも、新型コロナウィルスでテレワークだ、リモートワークだと、時ならぬ騒ぎになっていますが、そういうときのためにこそ、日頃からこういう本を準備しておかなければなりませんねえ。
テレワークの導入が昨今、多くの企業で検討されています。これは、働き方改革を推進する手段のひとつとして政府が推奨していることが、その要因としてあげられます。実際、テレワークを適切に実施すれば、業務効率の向上だけでなく、ワークライフバランスの実現を通じた優秀な人材の確保などの効果があり、企業の競争力向上が期待されます。しかし、やみくもにテレワークを導入しても、業務効率の低減や、労働法規遵守の観点からのコンプライアンスの問題などを引き起こしかねません。また、ひと言でテレワークといっても実は多義的であり、その導入についての理解が人により異なることも考えられます。
本書は、テレワークとはどのようなものか(テレワークに関する基本知識)を整理し、労働法規の適用を検討したうえで(テレワークについては、労働法規が適用される場合とそれ以外を区分することが重要です)、法律実務家の観点からテレワーク導入で生じる弊害や労使関係上の問題への対処法、業務体制の整備、社内規定や就業規則の整備なども取り上げ、テレワーク導入を効果的に進める方策を詳細にみていくものです。
テレワークは「時間と場所の柔軟性をはかれる働き方」と言われますが、雇用型の場合には「労働時間の規制」は通常勤務と違いがない中で、どのような問題が生じうるか、またテレワーク関連の訴訟管轄はどうなるのかなど、テレワークに関する種々の法的問題も網羅しています。テレワークの導入を検討している、あるいは検討を始めたい企業はもちろんのこと、すでに実施している企業の担当者や弁護士、社会保険労務士などの専門職にとっても役立つ一冊です。
さすが経営法曹のベテランらしく、総務省のホームページでテレワークとは「時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」などと書いてあるのにもきちんと、いや労働時間に関しては通常勤務と違いはないんだよ、離れた場所での勤務がその本質なんだよ、と諭すように説いていきます。
自営型テレワークに対して妙に前のめりなガイドラインの記述に対して、ライバルの日本労働弁護団の意見書を引いて、自営型テレワークの案になど右乳に釘を刺しているのも興味深いところです。
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