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2019年12月13日 (金)

退職代行、法的にグレー@『日経新聞』

今朝の『日経新聞』2面に、「退職代行、法的にグレー 業者に交渉権なく トラブル増加 「団交」うたい労組に衣替えも」という渋谷江里子記者の「真相深層」記事が出ています。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53289420S9A211C1EA1000/

自分の代わりに退職の意思を伝える退職代行サービスを巡るトラブルが増えている。人手不足で職場での負担は重くなり転職したい人が増えている。料金は1回数万円と安くないが、需要をとらえ、代行業者は急増している。ただ法的にはグレーな存在で利用者が責任を問われるリスクもある。安易な利用は禁物だ。・・・・

 この記事の中に、わたくしのコメントも載っています。

・・・・労働組合は2人以上の労働者で構成するなど条件を充たせば組織できる。労組の衣をまとった代行業者は「本来、法律が想定した組合ではない」(労働政策研究・研修機構の浜口桂一郎所長)。

それでも形式上は団交を要求できる。浜口氏は企業の「団交拒否を(代行業者が)不当労働行為として訴えるなら労働委員会の審査が必要だが、退職代行だけでそうはならないだろう」とみる。業者の要求が退職だけなら、応じる企業が多いのが実態だからだ。・・・

 

 

 

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コメント

退職代行サービスに関する浜口先生の貴見を大変興味深く拝読しました。
そこで、一点だけ先生にご教授いただきたいことがあります。
件の記事に書かれている「労働組合の衣をまとった代行業者」とは、「当該労組が不当労働行為の救済を申し立てるとき、法人登記をするために必要な資格証明書の交付を受けるとき等に都道府県労働委員会に対して資格審査を申請し、資格証明書の交付を受けただけの組織であって、団体交渉権の行使としての退職代行以外の活動実態はない労働組合」と解釈してもよろしいでしょうか。
もし仮に前記解釈の通りであるならば、先生の「本来、法律が想定した組合ではない」とは、具体的に何を意味するのかご教授いただければ幸いです。
私としては、ペーパーカンパニー同然の実態のない幽霊労組は労組としての権利は有しない、また、法的保護は与えられないと考えています。
以上、不躾なお願いではありますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

違います。「当該労組が不当労働行為の救済を申し立てるとき、法人登記をするために必要な資格証明書の交付を受けるとき等に都道府県労働委員会に対して資格審査を申請し、資格証明書の交付を受けただけの組織であって、団体交渉権の行使としての退職代行以外の活動実態はない労働組合」ではありません。そもそも退職代行だけのために資格審査などやらないでしょう。「労働組合は2人以上の労働者で構成するなど条件を充たせば組織できる」のですから、それだけの労働組合(と称する組織)という意味で言っています。

濱口先生、小生の愚問に丁寧にご回答いただきありがとうございました。大変感激しております。
今、話題の退職代行サービスのビジネスモデルに関心があるため質問させていただきました。

私が業界で最も著名な某退職代行サービスを調査したところ、そのウェブサイトに「本サービスは労働組合法適合の資格証明を受けた労働組合と提携しており、退職にあたり会社との交渉は、労働組合の組合員が団体交渉権を持って、組合に加入した依頼者に代わって交渉を行うため、会社側は原則これを拒否することができない」旨が記載されていました。

そこで、同サービスが「提携している」と主張する某労働組合のウェブサイトを確認したところ、「労働組合は労働者が自主的に組織することができ、設立したことを会社や官公署に届け出る必要はない。ただし、不当労働行為の救済申し立てをするときなど特定の要件については、労働委員会にて労働組合法で定めた要件を備えた労働組合であるかどうかについて審査を受ける必要がある。当労働組合は労働組合法適合の資格証明を受けた合同労働組合である」旨が記載されていました。

そのため、私は、「労働組合が団体交渉権を行使して組合員の雇用主と退職交渉を行う場合」には、「当該労働組合は、労働委員会から資格証明書の交付を受けた労働組合でなければならない」と誤解していました(前記退職代行サービスは「お上のお墨付き」を得る目的で、本来は不必要な資格証明を受けたのであろうと推測します。)。

「労働組合は2人以上の労働者で構成するなど条件を充たせば組織できる」のであれば、極論すれば、その組織は町内会などと変わらない任意団体でしかないと思うのですが、当該組織が労働組合であることを自称すれば、町内会とは扱いが異なり、労働組合法の適用を受け、団体交渉権を有することになると理解してよろしいでしょうか。

そして、この理解が正しければ、「2人以上の労働者が規約を作成するなどの労働組合法に規定された所定の手続きを経れば合同労働組合を組織することができる。このことに行政の資格審査、法人登記手続き、雇用主への通知等は不要である。したがって、当該合同労働組合は、合法的に団体交渉権を行使して、組合員に関する退職交渉を雇用主と行うことができる」ことになります。

これは退職交渉が弁護士法に違反する非弁行為に該当するとの非難を回避するためには有効な仕組みだとは思いますが、やはり、私としては「ペーパーカンパニー同然の実態のない幽霊労組は労組としての権利は有しない、また、法的保護は与えられない」と考えてしまいます。

濱口先生には重ね重ね大変恐縮ですが、「合同労働組合と称する組織は、本来、労働組合法が想定した労働組合ではない」のであれば、(1)具体的にどのような状態が労働組合法が想定した労働組合ではないと言えるのか、また、(2)労働組合の衣をまとった退職代行サービスが行う退職交渉は違法又は法解釈のグレーゾーンに該当する行為と評価されるのかという2点について、ご教授いただければ幸いです。

以上、不躾な質問で大変恐縮ですが、何卒よろしくお願い致します。

実際に退職代行業者がどういう労働組合と提携しているのか私は全く知りませんので、一般論でしかお話しできません。団体交渉権があるかどうかは、団体交渉を申入れてそれが拒否されてそれが不当労働行為たる団交拒否である訴えてそれが認められるかどうかという段階まで行って初めて最終的に確定するので、それまではどちらに転ぶかはわからないとしか言い様がないでしょう。

ちなみに、東京都労委が労働組合の資格審査で「こんなのは労働組合じゃない」といった事案がありますので、参考までに

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/08/post-50e58d.html

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2021/06/post-b0c70e.html


濱口先生、早速のご回答、誠にありがとうございました。
個別の事例については、現実に法的紛争が起きなければ確定的判断はできないのは当然のことだと思います。
関係する労働委員会に問い合わせたところ、先生と同じく「事件にならなければ判断できないので、あくまでも一般論でしか回答できない」とのことでした。
しかしながら、結局のところ業者も1件当たり2万円程度の小口の商売ですので、「団交拒否を(代行業者が)不当労働行為として訴えるなら労働委員会の審査が必要だが、退職代行だけでそうはならないだろう」ということになろうかと思います。
今後も先生のご著書やブログ等を参考にさせていただきながら見識を高めていきたいと思います。
ご多忙の折、大変丁寧かつ迅速なご回答をいただき深く感謝致します。
ありがとうございました。

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