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2019年12月27日 (金)

賃金請求権消滅時効3年の語られざる理由

恐らく本日の労政審労働条件分科会で、懸案になっていた賃金請求権の消滅時効をどうするかに一応の決着がつく見込みですが、今までの2年と、改正民法の5年の間を取って3年という数字に批判が集まっているようです。

一昨日の公益委員見解では、

https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000580253.pdf

しかしながら、 そもそも今回の 民法一部改正法 によ り 短期消滅時効が廃止されたことが 労基法上の消滅時効期間等の 在 り方を検討する契機であり、また、 退職後に未払賃金を請求する労働者の権利保護の必要性等も 総合的に 勘案 すると 、

・ 賃金請求権の消滅時効期間は 、 民法一部改正法 による使用人の給料を含めた短期消滅時効廃止後の契約上の債権 の消滅時効期間 とのバランスも踏まえ 、5年とする
・ 起算点は、現行の労基法の解釈 ・ 運用を踏襲 するため 、客観的起算点を維持し、これを労基法上明記する

こととすべきである。
ただし、賃金請求権について直ち に長期間の消滅時効期間を定めることは、 労使の 権利関係を不安定 化 するおそれがあり 、 紛争の 早期解決・ 未然防止という賃金請求権の消滅時効が果たす役割への影響等も 踏まえて慎重に検討する必要がある 。このため、当分の間、 現行の 労基法第 109 条に規定する記録の保存期間に合わせて3年間 の消滅時効期間 とすることで、企業の記録保存に係る負担を増加させることなく、未払賃金等に係る一定の労働者保護を図る べきである。そして、改正法施行後 、 労働者の権利保護の必要性 を踏まえつつ、 賃金請求権の消滅時効が果たす役割への影響等 を検証 し、 6の 検討規定も踏まえて必要な検討を行うべきである 。 

原則は5年だけど、記録保存期間に合わせて当面3年としていますが、そんなん関係ねえだろ、という声もあるようです。

でも、実はこの問題、本来的な賃金不払いというか、払わないときからそれが違反だとわかって払わなかった話が中心ではなく、その時には(管理監督者だからとか、固定残業制だからとか)なにがしか残業代を払わないことが正当だと使用者側が考える理由があって払っていなかったことが、(多くの場合、当の労働者が辞めた後で)昔に遡って不払いの残業代を払えと言ってくるというケースが大部分なわけです。

もちろん、超越論的鳥瞰的な観点からは、いかなる状況であったとしても正しく適用されるべき法令が正しいのであって、当事者どう思っていたかによって左右されるべきものではありませんが、とはいえとりわけこの手の事案に係る使用者側からすると、この手の過去に遡った残業代請求というのは、その時にはなんの文句も言わなかったくせに、後出しじゃんけんで不意打ちしてきやがって、と見えてしまうのもまた事実なんですね。現象学的な意味での「生きられたいま・ここの職場関係」の実感からすると、勝手に法律を変えられて過去に遡及されてしまったという風に見えてしまう。実はその落差が、この問題の最大のネックなんだと思うわけです。

で、2年と5年の間で適当に3年という数字を持ってきて、記録保存期間とか理屈を付けていると、とりわけ法律に詳しいクラスタからすると見える今回の問題も、そういう現象学的な観点を踏まえて見ると、また違った様相が見えてくるのではないでしょうか。

 

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