中途採用率の公表義務化の出どころ
労務屋さんが、今労政審で審議されている法改正事項のうち、あまり注目されない方、というか、あまり深刻でない方、大して影響を与えそうでなさそうな方、というべきか、中途採用率の公表義務化について、そもそも論的にいろいろいじっておられます。
https://roumuya.hatenablog.com/entry/2019/12/10/133013 (中途採用率の公表義務化)
・・・そこでこの「中途採用率の公表義務化」がどれほどの有効性を持つかといえば、まあやって悪いたあ言わないもののたいした意味はないというところではないでしょうか。・・・
・・・となると転職・中途採用がしやすい環境づくりをすること自体は望ましいことだし必要なことだろうとも思います。企業間移動がやりやすい方が円滑な対応が可能になることはただそれが中途採用率の公表義務化かと言われればそうでもないんじゃないかと思うわけで(いやもちろんやって悪いというわけではないが)。
いやまあ、そうなんですが、ご承知の通り、これは今年6月の成長戦略実行計画に、例の70歳就業機会確保と並んで明記されちゃっているんで、やらないわけにはいかないわけです。
で、70歳の方は、これはもういずれそういう話になるとみんな分かっていた話ではありますが、中途採用率の公表ってのはいったいどこから湧いてきたんだろうか、と思って若干さかのぼっていくと、これも70歳就業と同様、官邸の人生100年時代構想会議から来た話のようです。
この人づくり革命基本構想の中に、第5章リカレント教育の最後のところに、こういう記述が出てくるんですね。
(企業における中途採用の拡大)
内閣府、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省 が連携して、中途採用に積極的な上場企業を集めた協議会を設置し、中途採 用を拡大する。 なお、「年齢にかかわりない多様な選考・採用機会拡大のための指針」を 活用し、中途採用の促進に向けた経済界の気運を醸成する
リカレント教育の文脈で中途採用というのもよくわからないところがありますが、どんな議論があったのだろうかと思ってみていくと、昨年3月の第6回会議がリカレント教育の話で、そこで日本総研の高橋進さんがこう言っていたんですね。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/jinsei100nen/dai6/gijiroku.pdf
○高橋氏 資料3をご覧いただきたいと思います。
大企業でも終身雇用はなくなっているのが現実であり、企業内教育にのみ人 材育成を期待するのは限界があります。教育機関、産業界、行政が連携してリ カレント教育の取組を進めることが必要だと思います。
雇用保険特会を活用して、教育訓練給付について、給付内容を拡充するとと もに、土日・夜間・通信課程など社会人が利用しやすい講座を充実すべきだと 思います。
リカレント教育の実践性を高めるためには、産業界の参加が不可欠です。インターンシップを取り入れるなど、企業参加型のプログラムの策定を行うべき だと思います。このため、産業界の全面的な協力が必要です。また、プログラ ムの開発と同時に、就職について大学における企業とのマッチング機能が不可 欠です。こうした取組を東京だけではなく全国に広げることが重要だと思いま す。
子育て女性だけでなく、企業の研究者、技術者についてのリカレント教育が 大きな課題だと思います。新卒社員を囲んで社内勉強会を開いたというような 笑えない話も聞きます。バイオ、化学、データサイエンス、情報処理などの分 野の学会と連携してプログラム開発を進めるべきです。
リカレント教育の提供体制を確保するため、企業出身の実務家教員の育成が 必要です。本人にとっても新しいキャリアにつながるものであり、教育経験の ない企業で働く実務家教員候補、彼らに対する教授方法の研修なども実施すべ きだと思います。
リカレント教育を受けた人たちが活躍するためには、需要側である企業の人 材採用の多元化が進むことが必要です。特に、大企業において中途採用が進ん でいません。例えば、中途採用に積極的な上場企業を集めた協議会を設置する など、総理のリーダーシップを含めて何らかの仕掛けを考えるべきではないか と思います。
最後に、20代、30代のうちからキャリアの節目節目でキャリアコンサルティ ングを企業内で実施することが必要だと思います。将来のキャリアパスを考え る習慣をつけるべきだと思います。また、転職の成功事例の見える化、副業・ 兼業の推進により、転職の環境整備を図るべきだと思います。
なるほど、リカレント教育を受けた人の受け皿としての中途採用という発想だったんですね。でも、それってどれくらいの人々に共有されている認識なんでしょうか。
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