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2019年12月 1日 (日)

大澤昇平『AI救国論』を読んで思ったこと

610828_l 例の最年少(特任)准教授氏は、さらに支離滅裂なことをつぶやいて火に油を注いでいるようですが、とはいえ人のことをいくつかのつぶやきだけで判断するのもいかがなものかという気もして、せっかくなので氏の『AI救国論』(新潮新書)をざっと読んでみました。正直、やたらにいきり気味のその文章はあまり読みやすいものではありませんが、彼自身の経験をもとに何かを論じようとしているその論の部分よりもむしろその経験そのものの部分は、なかなか興味深い体験談であり、かつ(彼が論を向けようとしている方向とは必ずしも一致しないかもしれませんが)いろんな意味で示唆するところがかなりあります。

その中でも、今回の件でいささか揶揄的な調子で語られた彼のこれまでの学歴にかかわる部分は、「救国」なぞという大風呂敷の話はともかく、若者たちの職業人生を考えたうえでの進路選択という観点からすると、極めて示唆的なものだと感じました。特任准教授に「登り詰めた」などという自意識過剰な表現はとりあえずスルーして読んでください。 

・・・このような事情があったので、特別な家庭に生まれたわけでもない私がいかにして今のポストに登り詰めたかというと、時間的・金銭的なリソースの欠乏を、テクノロジーによってカバーするという徹底的な省エネの術を、人生の早い段階で見つけたことが大きいように思う。・・・中学に上がっても、成績は常にトップレベルでったが、進学校には進まず、高等専門学校、いわゆる高専に入学した。・・・・

・・・私が経験した高等専門学校というのは極めて特殊な環境で、「大学受験のジレンマ」を解決する一つのソリューションになると考えてる。・・・

・・・高専に入り大学に編入するというのは、キャリアパス設計の上でいわばファストパスに相当する。なぜならセンター試験のための受験勉強をする必要がなく、早い段階でテクノロジストとしての必要なスキルを身につけることが可能になるからである。・・・

この部分を読んで、今から8年以上も前にあるつぶやきを見て書いたエントリを思いだしました。ここで書かれていることは、今回の准教授氏の言っていることそのものです。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/02/post-3393.html (高等専門学校についての興味深いつぶやき)

ある方のつぶやきに、高等専門学校についての興味深い指摘がありましたので、引用しておきます。「教育の職業的意義」とか論ずるなら、ここに書かれたことを表裏ともに踏まえておく必要があるのでしょう。

>中学時代、こんな下らん受験勉強で将来が決められるなんて冗談じゃない!と高専に行った。結果、受験勉強など7年間で一週間とせず大学院まで行けてしまった。こんなラクな脇道があるのにガチでセンター挑むとか考えられんわww

>5年間で大学相当の知識と、豊富な実習・実験で専門高校ばりの現場力も兼ね備えられるから、高専という教育システムは良いものだ。文科系の高専も作ればいいと思うよ。有力な専門学校を改組したりして。

>ただし高専は退学がめっちゃ多いんだよなぁ。大学なら留年なんてよくある話だけど、高専生は義務教育の中学生の感覚を引きずっているとこがあって、留年するとすぐ辞めちゃう。

>うちのクラスも44人入って、5年ストレートで出た人30人いなかったわ。3年や4年で留学生や高校(主に工業高校)からの編入生を補充するから、卒業人数だけ見ればさほど落ちてるように見えないけど実はごっぞり落ちてる。

>高専は工学に対する興味、やる気が無くなると終わる。私は受験勉強はめっちゃ嫌いだけど、専門の授業や実験は有意義に感じられたからさほど苦痛じゃなかった。逆に工学が嫌い・苦痛な人には高専は地獄だ。就職が良いからなんて動機でホイホイ入るとあっさり沈む

(つづき)

この方のつぶやきの続き。日本の教育制度への提言編。

>現状の高専は中学校の上位20%の生徒しか入れない上に、ほぼ工学系しかない。敷居が高すぎる上に品揃えが悪い。もっと拡充すべき。

>現実はそうなんよね~(´・ω・`) 工学系はこのくらいの定員でいいとしても、医療とか会計とかあったら選択肢が増えていいよねと思う。

>高専・専攻科という教育システムが優れているから、他の分野でも使うべきとおも。それにその方法で女子増えても、医療系と工学系高専はキャンパス別だろうとw

>純粋に教育システムとして、6334制より6352制の方が優れているのは事実。高専専攻科は貴重な成功例なのだから、文科省は自信を持って高専のシステムを他の分野にも拡大すればいいと思うよ。

少なくとも、経済的なリソースがそれほど潤沢でない若者が、技術系のハイエンドの職業人生を目指すのであれば、高専→大学後期課程に編入→大学院というコースは極めて有効な選択肢であることは確かでしょう。

先日亡くなった眉村卓の用語でいえば、産業士官候補生としての進路選択には有効な選択肢でしょう。ビッグタレントを目指すのであれば、もう少し雑学も齧ったほうがよかったのでしょうが。

 

 

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コメント

(同様に?)芸能人枠ということで

ビートたけし「いっそ公立校は職業訓練校にしたらどうか」
https://www.news-postseven.com/archives/20191202_1499445.html
> 「公立校は義務教育だから辞めさせられない」ってナメてるから、ドンドン悪さをするヤツが出てくるんだからさ。「教育無償化」は最近の政治の流行りだけど、このままじゃ税金でバカを量産するだけだぜ。
> イイ大学に入りたいヤツラはみんな塾に行って私立の学校を目指してる。そっちは自分たちのカネでもう勝手にやればいい。
> 公立校は全部「職業訓練校」にしちまったほうがいいと思うね。最近は猫も杓子も大学に行くようになったけど、それで大学が厳しい現実から目を背けて、ちょっとボーッとしてようっていう休憩所みたいな存在になっちまってるからね。

>>中学時代、こんな下らん受験勉強で将来が決められるなんて冗談じゃない!と高専に行った。

高専に行くのに受験勉強は必要なかったのでしょうか?


>>純粋に教育システムとして、6334制より6352制の方が優れているのは事実。

純粋に教育システムとして、6334制より6352制の方が優れている理由が分かりません。
6334制の3→3(高校入試)や3→4(大学入試)よりも、6352制の3→5(高専入試)や5→2(大学後期課程に編入試験)が負担が少ない理由が分かりません。


>>現状の高専は中学校の上位20%の生徒しか入れない上に、

高専で大学後期課程に編入できるのは上位10%~20%までだそうです。単純計算では、これは全中学生の上位2%~4%になります。このレベルの人であれば、普通に高校受験→大学入試のコースでも合格できると思います。


>少なくとも、経済的なリソースがそれほど潤沢でない若者が、技術系のハイエンドの職業人生を目指すのであれば、高専→大学後期課程に編入→大学院というコースは極めて有効な選択肢であることは確かでしょう。

高専→大学後期課程に編入→大学院というコースが、高校→大学→大学院という一般的なコースに比べて経済的なリソースが少なくてすむ理由が分かりません。どちらのコースも大学院に入るまでの期間は同じなので、必要な費用はそれほど違わない様に思うのですが?高専の授業料は大学の授業料より安い とか 大学後期課程に編入すれば入学金は払わなくてよい という事があるのでしょうか?


高専→大学後期課程に編入→大学院というコースが、高校→大学→大学院という一般的なコースよりも少ないコストで可能だとしたら、それは前者が一般的でない(知られていないから競争相手が少ない)からではないかと思います。私は、提示された記事の以下のコメントに同感です。

>脇道は気づかれないから脇道なんです。気づかれたときに、あるいは、大多数が目覚めたときに競争が始まるのです。この種のルートが一般化したら、逆に、脇道でなくなるだけのことです。

なんだかとんでもなくあさっての方向、どころかはるか冥王星の彼方に飛んでいってしまったようですが、本件が高等専門学校から大学編入、大学院というコースをたどっている圧倒的多数のまっとうな方々に不利益を与えるようなことがないようにと、ただそれだけを心配しております。

いやいやどんな世界にも変なのはいるから。駒場で教養とやらを学んだはずの人でも、似たようなことを口走るのはいるから。

学科で1、2番程度の高専からの工学部編入学者、つまり「上澄み」の人達が「優秀」というのは知られてきたことです。しかし、人口比率からすれば上澄みどころか極少の存在であるし、高専学生教員内においてさえ、これらの人は「もともと頭がいい人」論(つまり、「高専」かどうかは関係ない)があります。6、7番程度の人になると、ガクッと落ちます。高専の促成栽培的な教育によって、普通科出身者よりも、専門科目の理解が表面的で数学や語学ができないことが目立ちます。一般教養ともなると格段に落ちます。それ以下になると、(難関と言われる高専入試を突破した成績優秀者であったにもかかわらず)勉学進学意欲を失っていることが多いです。そして、これも周知のことですが、大学一般入試を受験をし直すなど進路変更する人も大変多く、遠回りをしてながら結構いい大学に受かったりします。同じくネット上の意見でいえば、同じく高専からの東大院卒である人は、本件の最年少?准教授の高専キャリアに関して、同様の指摘をしたうえ、大学工学部で学ぶのであれば中卒後に「専門科目を早くから学ぶ優位性はほとんどない」「高専は勧められない」とコメントしています(quora上)。そういう構造上にある学校から輩出される一部の人材をして、「まっとう」と片付けられない人材も多く含み始めた人たちをして、「優秀」であるとか「職業教育の成功例」などと持ち上げるのはやはり問題の本質を誤らせると思います。続く・・・。

さて、最年少准教授の件ですが、この人の発言が(「駒場」の)「教養」と絡めて論ぜられている、あるいは、東大内部にそういうことを言う人がいることは、「やむを得ない」とも言えます。確かに、高校経由大学受験経由の東大生にも教養(とやら)がない者は大勢いる。駒場で教養科目を取れば教養が身につくわけでもない。名門私学では付属校上がりのバカと自嘲または揶揄される存在さえある。しかし、意味のない暗記や受験を否定し、徹底的に無駄を排してきたと宣言しているのは彼であるし(歴史は雑学だと切り捨てたとも・・・)、彼が礼賛する高専こそが「専門科目に関係しない『一般科目』は『省いて』」「効率的」に教育を行えると宣伝し現にそうなのである(もっとも「必要」はずの英語力も低いのだが)。高専は少数派の学校であり、閉鎖的な空間であります。このシステムにいると、これが唯一の正しいルートと信じてしまうか、信じさせられます。一般の受験生は、大学入試に苦しみ葛藤しながら何だかんだで受験勉強に励んでいる(工学部に入ってエンジニアになりたければ、この程度の暗記は必要と腹を括っているのだ)。しかし、彼には、この閉鎖的な高専システムと葛藤した形跡がない。クラスの10名近くが退学しているのを彼は見ているはずなのに、である。「つぶやき」さんが、高専システムからの脱落者が多いことを指摘しながら、次の段では全く思考力を欠いて「医療」や「会計」に拡大すればよいなどと嘯くのと同じである。「医療」や「会計」なら大量の脱落者を生まないとでもいうのだろうか。「医療」に関する豊富な実習は、看護・医療専門学校で大昔から行われております。

たとえ「少なくとも」という留保付きであっても、「経済的リソースが潤沢でない若者」には、奨学金によって、一般的なルートを歩ませてやるべきでしょう。経済力はない家庭だが、奨学金によって名門大学に行った高校生はたくさんいました。日本を支えてきました。もちろん、泣く泣く進学をあきらめた人もたくさんいましたが・・・。理工系の「産業士官」の圧倒的多数は、4年制大学工学部またはその前身で育ってきました。士官という言葉を使っていいなら、階級社会である軍隊組織になぞらえていいなら、高専卒は士官というより、下士官に留め置く、下士官養成システムです(促成栽培の変則コース)。士官になるには士官学校がちゃんとあるのだから、普通にそこを目指せばいいことです。幸い、日本には多くの大学工学部がありますし、一番下の大学工学部でもそれなりに努力していますから。受験が無駄、あるいは、良いほうに捉えて才能を図る試験をというなら、名門私学を含む中堅大学の理工系なら、受験の負担はかなり少なくて済みますからね。それぐらいの努力はしてください。そういう人のため奨学金制度なら、高専の維持費よりもはるかに低いコストで維持できます。極めて高い退学率・不適合率の危険のある制度にわざわざ飛び込む必要はないのです。

>士官という言葉を使っていいなら、階級社会である軍隊組織になぞらえていいなら、高専卒は士官というより、下士官に留め置く、下士官養成システムです(促成栽培の変則コース)。士官になるには士官学校がちゃんとあるのだから、普通にそこを目指せばいいことです。

高専は、みんなが士官=エリートを目指してしまう戦後の単線型教育システムにおいて、下士官を養成するのに特化したものであって、早くから欠陥が認識された戦後の教育システムの弥縫策といった側面が強い。なのに大学編入、大学院進学の抜け道を作ってしまっては、そもそもの制度趣旨を没却することになる。まあ、大学が肥大化していくなかで高専のプレゼンスを維持するにはやむをえないことであったろうが。

件の最年少氏のことはともかく、教育システムの複線型への再編成、職業教育の拡充が必要なのは明らかです。そのような流れの中では高専という変則的な制度は役割を終えるのかもしれない。単なる大学入試いじりではない、大局的な観点からの議論がなされるべきです。

>通りすがり2号様
 確かに私には、大局的に考えて、高専という変則的な制度はどうなのか、という問題意識があります。単線型の上に18歳以降で非大学型の職業教育を充実させるか、逆に、16歳あたりから徹底して複線化を図る、というなら私も理解できるのです。欧州ではそうです。
 そうした大局観にたたず、複線化モデル、職業教育モデルの理想像として、特殊例外的な高専が一般の人に捉えられしまうなら、それは間違いだろうと思ったのです。下士官養成の高専に、普通に士官を目指すべき人が巻き込まれてきた(多くは、経済的理由や親の教育意識)に過ぎないから、企業にとって彼らが「なかなか出来るやつ」みたいに思われしまう。しかも数が少ないから、そのことが社会的に問題になることもない、逆に、数が少ないから高専側が宣伝するほどには産業社会にインパクトを与える存在ではない・・・ 。
 ただし、二点、留意しておきたいことがあります。「欠陥のある」単線型教育制度で、大学工学部が膨張し、中堅以下水準があまり高くない大学工学部から輩出される多くの人材が、実は、中堅以下の企業群や地場産業において一応は「技師」であることが、末端の産業の開発力を上げるなどの底上げをしている側面があるのではないかということです。もう一点は、(実は高専関係者の憂慮でもありますが)、これらの大学出身者が中堅または大規模企業群(さすがにメガ企業の技術職とはいかないが)の中下級技術者としての役割を果たしつつあるということです。そうすると、理工系・技術系に関して言えば、職業高校・職業学校モデルの狭義の「職業教育」を複線化システムのもとで充実化させるべきということについては、かなり慎重になるべきではないでしょうか。

いろいろ書きましたが、hamachan様が、眉村卓「産業士官候補生」という言葉を、至高のテクノロジスト・エンジニアの意味で肯定的に引用しているのか、それとも、「末恐ろしい」「皮肉」な意味で引用されているのか、考えてみたいと思っています。こういうところが、このブログの深いところです。もちろん、この若者が採ったルートが「極めて有効な選択肢」かどうかについては、大変懐疑しておりますが・・・・。

>中堅以下水準があまり高くない大学工学部から輩出される多くの人材が、実は、中堅以下の企業群や地場産業において一応は「技師」であることが、末端の産業の開発力を上げるなどの底上げをしている側面があるのではないかということです。もう一点は、(実は高専関係者の憂慮でもありますが)、これらの大学出身者が中堅または大規模企業群(さすがにメガ企業の技術職とはいかないが)の中下級技術者としての役割を果たしつつあるということです。そうすると、理工系・技術系に関して言えば、職業高校・職業学校モデルの狭義の「職業教育」を複線化システムのもとで充実化させるべきということについては、かなり慎重になるべきではないでしょうか。

これは私もうすうす認識していて、今後職業教育を拡充してシステムを複線化していくうえで、理工系をどう扱えばよいのか、既存の中堅以下の大学工学部をどうするか、正直答えに詰まるところです。
まあ、私の主要な問題意識は、到底ホワイトカラー上層にたどりつけない大量の中堅以下の文系大卒を、日本型雇用が崩壊するなかでどうするかという点にあります。文系廃止と騒がれた文科省の通達も同様の問題意識に立つものでしょう。しかしこの問題は個々の大学がミクロで対処できるものではない。政府は一刻も早くビジョンを示すべきでしょう。

>通りすがり2号様、元祖Alberich様
まさに卓見と思います。今は景気や就職率がよくなり忘れられていますからね。一刻も早くです。

>そして、このような問題設定をしたうえ、差別なく怖れを知らず掲載して下さる(意見は全く異なりますが、あるいは論点をずらしてしまった部分もありますが)hamachan様。
ありがとうございます。

ようやく「雑学」を齧りだしたようです。

https://twitter.com/Ohsaworks/status/1214142107465633793

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