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2019年12月

2019年12月12日 (木)

鈴木孝嗣・長谷川崇『あなたの会社に「ドラマクイーン」はいませんか?』

Dramaqueen 鈴木孝嗣・長谷川崇『あなたの会社に「ドラマクイーン」はいませんか?-残念な管理職への対処法-』(労働新聞社)をお送りいただきました。

https://www.rodo.co.jp/book/9784897617916/

本書は、ドラマクイーン、ナルシスト、ブレイマーなど、異常な言動をとる「残念な管理職」(その行動の多くは、パワハラに該当する可能性があります)の特徴を概観し、部下としての対処法を解説します。共著者の一人である特定社会保険労務士の鈴木氏が「残念な管理職」の実態分析と対応策を整理し、産業医として数多くの会社の現場を見てきた精神科医(医学博士)の長谷川氏が、異常な言動をとる管理職について、精神医学的な視点から分析を行っています。 

ドラマクイーンという言葉は本書で始めて知りましたが、「ドラマのヒロインのように芝居がかった行動をとる人、物事に対してオーバーリアクションをとる人、些細な事柄をさも大事のように誇張して語る人」のことだそうです。

そういうのが自分の上司に来たりしたらたまりませんね。本書にはそういう実例がいっぱい載っていて、そういう人々に対してどのように対処したらいいのか懇切丁寧に解説しています。

試し読みできるところからいくつかの例を:

会社幹部によるビジネスミーティングの席上、製品販売の入金が1週間後ろ倒しになったことを、会社倒産の危機でもあるかのように大げさに騒ぎ立て、担当部長を「給与泥棒」呼ばわりし、「今すぐ客のところに行って、集金できるまで帰ってくるな!」などと声を荒げ、延々と叱責する。

会社の業績が(赤字ではないものの)目標を達成できないことが見えてきた段階で緊急会議を招集した経営幹部が、「君たち一人一人がきちんと責任を果たさないからこうなった。こんなことでこれからどうやっていくつもりだ!?」と、涙目で絶叫する。悲劇のヒーローは自分で、駄目な部下たちのせいで自分は責任をとらざるを得ない、ということをアピールするワンマンショーになっている。

・・・・

仕事をするために会社に来ているのに、興奮して絶叫し続ける上司の三文芝居を見続けるほどこちらは暇ではない。。「早く職場に戻って、あの仕事、この仕事、それに部下への指示もしなければならないのに・・・」と思うと、拷問のような時間を耐えて黙り込むことに限界が来て、反論の一つもしたくなるかも知れないが、これにはそれなりの対処法があるので、第2章を参照していただきたい。

 

 

2019年12月11日 (水)

副業・兼業の労災認定

昨日開かれた労政審労災保険部会で、副業・兼業の場合の労災認定について、賃金額だけではなく、負荷についても通算するという方向でほぼ合意されたようです。会議に出された資料はこれですが、

https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000574648.pdf

論点1 見直しの方向について【79-1-1】
複数就業者について、それぞれの就業先の負荷のみでは業務と疾病等との間に因果関係が見られないものの、複数就業先での業務上の負荷を総合・合算して評価することにより疾病等との間に因果関係が認められる場合、新たに労災保険給付を行うことが適当。
論点2 認定方法について【79-1-2、80-2-1】
○ 複数就業先の業務上の負荷を総合・合算して評価して労災認定する場合についても、労働者への過重負荷について定めた現行の認定基準の枠組みにより対応することが適当。ただし、脳・心臓疾患、精神障害等の認定基準については、医学等の専門家の意見を聴いて、運用を開始すべき。
○ 現行、脳・心臓疾患や精神障害の労災認定に当たっては、複数就業先での過重負荷又は心理的負荷があったことの申立があった場合、労働基準監督署がそれぞれの就業先での労働時間や具体的出来事を調査している。このため、それぞれの就業先での業務上の負荷を総合・合算して労災認定する場合であっても、このプロセスは維持すべき。

で、これはあくまでも公法上の労災保険の認定基準の話であって、そのもとになっている使用者の労災補償責任ではないと、明確にそこを切り離しています。

論点3 労働基準法上の災害補償責任について【79-1-1】
○ それぞれの就業先の負荷のみでは業務と疾病等との間に因果関係が見られないことから、いずれの就業先も災害補償責任を負わないものと整理することが適当。
○ なお、一の就業先における業務上の負荷によって労災認定できる場合は、現行と同様、当該就業先における労働災害と整理することとし、当該就業先に災害補償責任があり、他の就業先には災害補償責任はないこととすべき。

ここが、使用者側が負荷の通算にネガティブであった理由なんですね。うちの会社だけなら安全配慮義務違反だといって裁判起こされるようなことはないのに、よその会社と合算して責任の半分はあるやろ、と言われたらたまらない、ということです。そこは別だと。国の管轄する労災保険制度で面倒見るだけだと。

 

 

 

2019年12月10日 (火)

中途採用率の公表義務化の出どころ

労務屋さんが、今労政審で審議されている法改正事項のうち、あまり注目されない方、というか、あまり深刻でない方、大して影響を与えそうでなさそうな方、というべきか、中途採用率の公表義務化について、そもそも論的にいろいろいじっておられます。

https://roumuya.hatenablog.com/entry/2019/12/10/133013 (中途採用率の公表義務化)

・・・そこでこの「中途採用率の公表義務化」がどれほどの有効性を持つかといえば、まあやって悪いたあ言わないもののたいした意味はないというところではないでしょうか。・・・
・・・となると転職・中途採用がしやすい環境づくりをすること自体は望ましいことだし必要なことだろうとも思います。企業間移動がやりやすい方が円滑な対応が可能になることはただそれが中途採用率の公表義務化かと言われればそうでもないんじゃないかと思うわけで(いやもちろんやって悪いというわけではないが)。

いやまあ、そうなんですが、ご承知の通り、これは今年6月の成長戦略実行計画に、例の70歳就業機会確保と並んで明記されちゃっているんで、やらないわけにはいかないわけです。

で、70歳の方は、これはもういずれそういう話になるとみんな分かっていた話ではありますが、中途採用率の公表ってのはいったいどこから湧いてきたんだろうか、と思って若干さかのぼっていくと、これも70歳就業と同様、官邸の人生100年時代構想会議から来た話のようです。

この人づくり革命基本構想の中に、第5章リカレント教育の最後のところに、こういう記述が出てくるんですね。

(企業における中途採用の拡大)

内閣府、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省 が連携して、中途採用に積極的な上場企業を集めた協議会を設置し、中途採 用を拡大する。 なお、「年齢にかかわりない多様な選考・採用機会拡大のための指針」を 活用し、中途採用の促進に向けた経済界の気運を醸成する

リカレント教育の文脈で中途採用というのもよくわからないところがありますが、どんな議論があったのだろうかと思ってみていくと、昨年3月の第6回会議がリカレント教育の話で、そこで日本総研の高橋進さんがこう言っていたんですね。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/jinsei100nen/dai6/gijiroku.pdf

○高橋氏 資料3をご覧いただきたいと思います。

大企業でも終身雇用はなくなっているのが現実であり、企業内教育にのみ人 材育成を期待するのは限界があります。教育機関、産業界、行政が連携してリ カレント教育の取組を進めることが必要だと思います。

雇用保険特会を活用して、教育訓練給付について、給付内容を拡充するとと もに、土日・夜間・通信課程など社会人が利用しやすい講座を充実すべきだと 思います。

リカレント教育の実践性を高めるためには、産業界の参加が不可欠です。インターンシップを取り入れるなど、企業参加型のプログラムの策定を行うべき だと思います。このため、産業界の全面的な協力が必要です。また、プログラ ムの開発と同時に、就職について大学における企業とのマッチング機能が不可 欠です。こうした取組を東京だけではなく全国に広げることが重要だと思いま す。

子育て女性だけでなく、企業の研究者、技術者についてのリカレント教育が 大きな課題だと思います。新卒社員を囲んで社内勉強会を開いたというような 笑えない話も聞きます。バイオ、化学、データサイエンス、情報処理などの分 野の学会と連携してプログラム開発を進めるべきです。

リカレント教育の提供体制を確保するため、企業出身の実務家教員の育成が 必要です。本人にとっても新しいキャリアにつながるものであり、教育経験の ない企業で働く実務家教員候補、彼らに対する教授方法の研修なども実施すべ きだと思います。

リカレント教育を受けた人たちが活躍するためには、需要側である企業の人 材採用の多元化が進むことが必要です。特に、大企業において中途採用が進ん でいません。例えば、中途採用に積極的な上場企業を集めた協議会を設置する など、総理のリーダーシップを含めて何らかの仕掛けを考えるべきではないか と思います。

最後に、20代、30代のうちからキャリアの節目節目でキャリアコンサルティ ングを企業内で実施することが必要だと思います。将来のキャリアパスを考え る習慣をつけるべきだと思います。また、転職の成功事例の見える化、副業・ 兼業の推進により、転職の環境整備を図るべきだと思います。  

なるほど、リカレント教育を受けた人の受け皿としての中途採用という発想だったんですね。でも、それってどれくらいの人々に共有されている認識なんでしょうか。

 

 

第107回労働政策フォーラム「職場のパワーハラスメント」

Jilpawahara

2019年12月 9日 (月)

佐藤博樹,藤村博之,八代充史『新しい人事労務管理 第6版』

L22144 佐藤博樹,藤村博之,八代充史『新しい人事労務管理 第6版』(有斐閣)をお送りいただきました。

http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641221444

ほぼ2年間隔がデフォルトになりつつある労働法に比べるとまだ改訂の間隔は大きいですが、それでもほぼ4年ごとの改訂というのは、この分野の変化の激しさを物語っているといえるでしょう・

日本企業の実態を踏まえて人事労務管理を解説する好評定番テキスト。労働法制の改正に加え,働き方改革等,多様な人材が活躍できる職場づくりへの対応など,雇用環境が大きく変化しつつある中,今後を展望するためにも必須となる基礎的な理解を得られる一冊。 

目次は次の通りで、第5版とそれほど変わっていませんが、第5章が「労働時間管理」から「労働時間と勤務場所の管理」になり、「勤務場所の柔軟化と多様化」という節が新設されているのは、時代を示していますね。

第1章 企業経営と人事労務管理──人事労務管理の機能と担い手
第2章 雇用管理──人と仕事の結びつき
第3章 職能資格制度と職務等級制度──人事制度と昇進管理
第4章 賃金管理──給与決定の仕組み
第5章 労働時間と勤務場所の管理──労働サービスの供給量と供給のタイミングの管理
第6章 能力開発──能力を高める意義と方法
第7章 非正規従業員と派遣労働者──コンティンジェント・ワーカーの活用
第8章 従業員の生活支援──企業の福利厚生制度
第9章 労使関係管理──労働者の利益をいかに守るか
第10章 人事労務管理の変遷と展望──歴史的・国際的な位置づけ
終 章 幸せな職業人生を送るために

コラムにも、44ページに「転勤と勤務地限定制度」というのが設けられています。

コラムといえば、79ページに「ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用」というのもあり、

・・・一般に、メンバーシップ型は評判が悪い。学会でもセミナーでもメディアでも、ゼミの学生の卒論でも、みなジョブ型がよいという。メンバーシップ型は常に『悪玉』である。・・・

と書かれていますが、いやあそうかな。

このコラム、それぞれのメリット、デメリットを挙げた上で、こう締めくくっています。

・・・ここから明らかなように、メンバーシップ型とジョブ型の違いは単に賃金を仕事で決めるかどうかという違いにとどまらず、人事権や、根源的には、その前提となる雇用保障の問題を内包している。しばしば職能給から職務給への転換が主張されるが、そのためには、まず人事制度を『メンバーシップ型』から『ジョブ型』に転換しなければならない。そして、それには外枠である『雇用』に関する考え方を変えなければならないのである。

も一つ、今日的なトピックを扱っているコラムが173ページの「部下育成とハラスメント」です。

・・・このハラスメント、特にパワハラが人材育成に悪い影響を与えている。部下育成のために上司が少し強い言葉で指導すると、その部下は『パワハラをされた』と感じ、社内のハラスメント委員会に訴え出る。上司としては、嫌がらせをしたつもりは全くないのに、部下からハラスメントだといわれ、、愕然とする。すると、『この程度のことでパワハラだと言われるのなら、指導するのは最小限に止めておこう』と考え、指導した方がいい局面でも指導に二の足を踏む。これは、部下にとって大きな損失になりかねない。・・・・

これも、さらに深く考えると、スキルをまったく持たずにまっさらの状態で入ってきた若者を、上司や先輩がびしびし鍛えて成長させるという、メンバーシップ型人事システムだからこそ起こる話なんですね。始めからその仕事ができる人間を採用するジョブ型社会では、そいつが仕事をできるように成長させる義務はないので、指揮命令に従わない奴や仕事ができない奴は契約違反にすぎないので、普通解雇するだけの話。成長させる義務もないのに余計なお節介をしていれば、それは嫌がらせ以外の何物でもない。そういうジョブ型社会の常識をそのままメンバーシップ型社会に持ってくると、いろいろと矛盾が生じるわけです。

 

 

2019年12月 7日 (土)

パワハラ罪はない、が、暴行罪、傷害罪はある

なんだか、同じことを繰り返し言っているような気がしますが、とはいえやはり言い続ける必要がありそうです。

https://news.nifty.com/article/domestic/society/12145-489198/ (楽天元社員 パワハラで労災)

「パワハラで労災」というから、暴言で精神障害かと思いきや、さにあらず。

ネット通販大手の楽天に勤務していた40代男性が、両手足のまひなどの後遺症を負ったのは上司による暴行のパワハラ行為が原因だとして、渋谷労働基準監督署が労災認定していたことが5日、分かった。認定は6月20日付。

だから、なんでもかんでもハラスメントと言えばいいと思うな!と何回言えば・・・。

刑法上のれっきとした犯罪である強制わいせつを、企業の措置義務の対象でしかないセクハラなどというなまぬるい馬鹿げた用語法がマスコミにはびこっているから、

刑法上のれっきとした犯罪である暴行、傷害を、企業の措置気味の対象でしかない(いや、まだ措置義務としても法が施行されていない)パワハラなどという、あたかもこの暴行障害犯を免罪するかのごとき馬鹿げた用語法に疑問を持たずに記事を書くのでしょう。

〇〇ハラといえばいかにもその行為を批判しているかのように思い込む薄っぺらい脳みその記者がこういう記事をはびこらせると、世間の感覚が狂っていく一方です。

いやもちろん、暴行傷害に当たらないパワハラであっても、場合によっては刑法上の犯罪である自殺教唆として書類送検されたりもしますが、それはやはり「異例」なのです。

https://www.sankei.com/affairs/news/191207/afr1912070006-n1.html (パワハラで自殺教唆疑い 兵庫県警、三菱電機30代社員を書類送検)

三菱電機の新入社員だった20代男性が今年8月に自殺したのは上司の暴言によるパワーハラスメントが原因だったなどとして、兵庫県警三田署が自殺教唆の疑いで、男性の教育担当だった30代の男性社員を書類送検していたことが7日、捜査関係者などへの取材で分かった。書類送検は11月14日付。職場でのパワハラが自殺教唆容疑で捜査されるのは異例とみられる。

まあ、もとをたどれば、刑法上のれっきとした犯罪である暴行、傷害、恐喝等々を、いかにも可愛げな子供の遊びめいた「いじめ」などという生ぬるい言葉で語り続けてきたことの延長線上なのかもしれません。

 

倉重公太郎編集代表『改訂版 企業労働法実務入門』

Kurage 本日、倉重公太郎の労働法実践塾でちょびっとだけお話をしましたが、その際、この本を直接お手渡しいただきました。

なんでも、先月職場あてに送ったのですが、分厚すぎるという謎の理由で返却されてきてしまったとのことです。

本書は、5年前にお送りいただいた『企業労働法実務入門』の改訂版で、企業で初めて人事労務を担当する人に、これだけはという知識をまとめた本です。

労働法ってなに?
人事部の役割と実務
採用に関する諸問題
就業規則と労働契約
賃金
労働時間
休憩・休日・休暇
人事
懲戒処分
ハラスメント
労災・安全衛生
メンタルヘルス
雇用契約の収量
非正規雇用管理
同一労働同一賃金
労基署対応
労働組合
人事関連の法律で知っておくべきもの
社会保険・労働保険の基礎知識
用語集 

労働法の解説部分もまことに丁寧に人事労務1年生に噛んで含めるように説明されていますが、特に今回増補された序章で、労働法とは何か、そして人事部の役割と実務が先輩が後輩に伝えるように書かれています。

また、最後の方の「労基署対応」の章も、ほかの労働法の本には出てこないような章ですね。

 

2019年12月 6日 (金)

第23回倉重公太朗の労働法実践塾

倉重公太朗さんのツイッターに案内が出ていました。

https://twitter.com/kurage4444/status/1194795909797707776

12月7日の労働法実践塾は【雇用改革のファンファーレ編】と【企業労働法実務入門編】豪華2本立てです。第1部は堅柔多様なメンバー①濱口桂一郎氏、②荻野勝彦氏、③田代英治氏、④森本千賀子氏、⑤豊田圭一氏とこれからの【働く】の変化について、トークセッションをします。 

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土田道夫編『企業法務と労働法』

9784785727505 土田道夫編・「企業法務と労働法」研究会著『企業法務と労働法』(商事法務)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.shojihomu.co.jp/publication?publicationId=9998367

企業の中で多岐にわたって生じる課題を労働法の観点から検討、解説
本書では、民法・会社法・倒産法・知的財産法・独占禁止法などの企業法と労働法が交錯する問題、さらには、コンプライアンス、ダイバーシティ、「働き方改革」などの先端的論点を取り上げ、ケーススタディを用いて法的な考え方を解説する。加えて、企業法務として紛争予防の観点からとるべき対策も示す。 

と言うことですが、実は本書、土田シューレの顔見世興行にもなっています。

なぜかリンク先の目次に執筆者名が書かれていないのですが、小畑史子さんと上田達子さんを除いて、全員同志社で土田門下で育った若手労働法研究者たちです。

第1部 理論編

企業法・企業法務と労働法 土田道夫

CSR(企業の社会的責任)・コンプライアンスと労働法 小畑史子

第2部 実務編

債権法改正と労働法 岡村優希

会社法と労働法1―事業取得型M&A(合併・会社分割・事業譲渡) 岡村優希

会社法と労働法2―株式取得型M&A土田道夫

会社法と労働法3―取締役の責任 天野晋介

倒産労働法 山本陽大

知的財産法と労働法1―営業秘密の管理・競業避止義務 河野尚子

知的財産法と労働法2―職務発明・職務著作 土田道夫

独占禁止法と労働法 河野尚子

グローバル人事―国際労働関係法1 土田道夫

グローバル人事―国際労働関係法2 土田道夫

コンプライアンス体制の構築と労働法 石田信平

企業の情報管理 坂井岳夫

女性の活躍―ダイバーシティ人事 上田達子

パワー・ハラスメントへの対応 上田達子

「働き方改革」と労働法務―労働契約法20条/パートタイム・有期雇用労働法) 篠原信貴

この中で一番若い岡村さんが、「債権法改正と労働法」のケース2で、食品宅配サービスのスマートフォンアプリによる配達パートナーが報酬を引下げられたという、(なんとも今日的な)事案を取り上げています。

設問1 X4は、Y2社に対して、手数料・その他費用を控除しない金額での報酬支払を請求できるか。

設問2 X4は、Y2社に対して、本件不利益変更前の水準での報酬支払を請求できるか。

設問3 仮に、本件不利益変更の際に、アプリにおいて、変更後の条件を表示させた上で、「承諾する」と「承諾しない」のボタンが表示され、前者を選択しないと新規の受注ができない扱いとされた場合において、X4が「承諾する」ボタンを選択したとき、設問2の場合とどのような差異が生じうるか。

いやあ、なかなか難しい問題を放り込んできます。岡村さんの回答は是非本書で。

 

『季刊労働法』2019年冬号

267_hp 『季刊労働法』2019年冬号(267号)の案内が既に労働開発研究会のサイトに載っていました。

https://www.roudou-kk.co.jp/books/quarterly/7312/

第1特集は「ILO100周年・その役割と展望」ということですが、JILPTからILOに転職した戎居さんも一本書いています。

●2019年で創設100周年を迎えたILO。日本の労働法制にも影響を与えてきたILOの節目を送るにあたり,ILOの今後の役割,課題を展望します。各論として,エンフォースメントと国際労働基準の関係,人権とILOといったテーマを論じます。 

◎特集 ILO100周年・その役割と展望

未批准条約の効果―日本労働法に与えた影響 ILO駐日代表 田口晶子

使用者は何処に? ILO事務局本部上級法務官 野口好恵

個別的労働・雇用関係法の実現方法におけるILOの役割と展望 ILO国際労働基準局・労働法務官 戎居皆和

未批准条約の意義と可能性―中核的労働基準の111号条約を例に 弁護士 大村恵実

非典型雇用とILO 早稲田大学名誉教授、現IDHE-ENS-Paris-Saclay客員研究員 鈴木宏昌

第2特集は「雇用によらない働き方」で、ちょうどいまウーバーイーツ・ユニオンが注目されている中で、時宜にあった特集です。

●このところコンビニ店主の労組法上の労働者性(中労委命令),業務委託契約の濫用などが争点となったベルコ事件,また「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」など,個別法,集団法を問わず「雇用類似の働き方」「労働者性」がビビッドな形で問題になるケースが増えています。第2特集では,こうした問題を取り上げます。 

◎第2特集 「雇用によらない働き方」の論点

個人就業者をめぐる議論に必要な視野と視座とは~「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会中間整理」を読みつつ 労働法学研究者 毛塚勝利

業務委託契約を利用した事業組織と労働者性・使用者性―ベルコ事件を契機として 岡山大学准教授 土岐将仁

再考・フランチャイズ契約と労働法―フランチャイジーの雇用類似の働き方 日本大学教授 大山盛義

その他の記事は以下の通りですが、

◎■論説■

民法(債権法)改正と労働法 同志社大学教授 土田道夫

労働契約法20条をめぐる裁判例の理論的到達点 労働政策研究・研修機構副主任研究員 山本陽大

◎■アジアの労働法と労働問題 第39回■

中国におけるプラットフォーム経済の発展と労働法の課題 中国西南政法大学准教授 戦東昇

◎■労働法の立法学 第56回■

管理職の労働法政策 労働政策研究・研修機構労働政策研究所長 濱口 桂一郎

◎■判例研究■

育児介護休業法に基づく短時間勤務措置を理由とする不利益取扱い ジャパンビジネスラボ事件(東京地判平30・9・11労判1195号28頁)専修大学教授 石田信平

間接差別法理の意義と可能性 国家公務員昇格等差別事件(東京地判平31・2・27)北海道教育大学教授 菅野淑子

◎■研究論文■

労働協約の法的規律に関する一考察(3・完)ドイツにおける社会的実力要件と交渉請求権の議論を契機として 京都女子大学准教授 植村新

新たな契約類型としての「ライフ・タイム契約(Life Time Contracts)」トレント大学(イタリア)法学部教授 ルカ・ノグラー訳・解説 井川志郎=岡本舞子=後藤究

◎■書評■

豊川義明著『労働における事実と法』基本権と法解釈の転回 評者 弁護士 宮里邦雄

◎■キャリア法学への誘い 第19回■

就職・採用とキャリア配慮 法政大学名誉教授 諏訪康雄

◎■重要労働判例解説■

修学費用貸付の返還請求と労基法16条 医療法人K会事件(広島高判平成29年9月6日労経速2342号3頁)社会保険労務士 北岡大介

就業規則の新設・変更と固定残業代合意の効力 阪急トラベルサポート(就業規則変更ほか)事件 (東京高判平成30年11月15日労判1194号13頁、原審:東京地裁平成30年3月22日労判1194号25頁)北海学園大学法学部教授・弁護士 淺野高宏 

私の連載は管理職の労働法政策です。

判例評釈に例のジャパンビジネスラボがありますが、つい先日高裁でひっくり返ったのは、タイミングとしてうーむですね。

 

 

2019年12月 4日 (水)

『生活経済政策』12月号

Img_month_20191204164101 『生活経済政策』12月号が届きました。特集は「年金改革の課題」です。やはり、年金法改正の決着が間近に迫ってくると、こういう特集をしたくなるのでしょうか。

http://www.seikatsuken.or.jp/monthly/index.html

明日への視角
•あなたはヤングケアラー(子どもケアラー)を知っていますか/堀越栄子

連載 Brexit とソーシャル・デモクラシーの行方[3]
•デモクラシーの生き残り方—イギリス政治にみるレジリエン/今井貴子

特集 年金改革の課題
•2019年年金財政検証とその課題—特集の解題も兼ね/駒村康平
•雇用の変容に対応した年金制度とは—長く働き続けられるために/西村淳
•保険料拠出期間延長の論点/西沢和彦
•ライフコースの多様化と2019年財政検証の課題/丸山桂

書評
•ジャスティン・ゲスト著/吉田徹・西山隆行・石神圭子・河村真実訳『新たなマイノリティの誕生―声を奪われた白人労働者たち』/武田宏子
•山口慎太郎著『「家族の幸せ」の経済学―データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実』/柳煌碩

私の関心事項からすると、西村さんの論文と、丸山さんの論文が的に嵌まってきます。

 

 

角田とよ子『認知症介護と仕事の両立ハンドブック』

9784818519053_400 例によって、経団連出版の讃井暢子さんより角田とよ子『認知症介護と仕事の両立ハンドブック』(経団連出版)をお送りいただきました。

http://www.keidanren-jigyoservice.or.jp/public/book/index.php?mode=show&seq=557&fl=

介護は突然やってくるといわれます。「親が認知症と診断された。さぁ、どうしよう」という事態に直面したときに大切なのは、「仕事は続ける」と決意することです。「辞める」という選択肢がなければ、あとは、どのように両立するか、その方法の問題です。本書では、認知症とはどのようなものかを理解したうえで、プロジェクトとして介護に取り組むことを勧めています。仕事と介護をどのように両立させたらいいか、その方法を具体的に紹介するとともに、公的支援の仕組み、認知症予防、認知症患者の言動に対する受け答えの具体策などを詳述しています。

113218_xl 本書の「はしがき」は、有吉佐和子の『恍惚の人』から始まっています。1972年に刊行されたこの小説は、その時のベストセラーですが、当時中学2年生だった私にとっても、痴呆状態になった当時の祖母(父の母)を嫁(私の母)が世話をする姿をそのまま小説に映し出しているようで、大変印象深かった思い出があります。

それから半世紀近く過ぎ、専業主婦の嫁が介護するのが当たり前の社会から、仕事を持つ息子や娘が親の面倒を見なければならない社会に世の中は大きく変わり、認知症介護と仕事の両立というテーマの本が出るようになりました。

1 認知症の基礎知識
  〇認知症とは 〇早期発見・早期対応のポイント 〇病院の選び方、本人への受信の進め方 
2 介護をプロジェクトにする
  〇介護で仕事をやめてはいけない 〇認知症介護を5W2Hでイメージする 〇仕事と介護を両立させるには
3 実践 認知症介護
  〇認知症介護のヒント 〇認知症進行度の目安 〇高齢者施設と病院 
4 公的支援の仕組みと介護休業法
  〇認知症の人と家族を守る 〇障碍者支援制度 〇介護休業法の概要
5 認知症予防、症状改善Q&A
  〇認知症を予防したい 〇認知症かもしれないと思ったとき 〇MCI(軽度認知障害)とは  

 

 

2019年12月 3日 (火)

『HRmics』34号

Hrmics_20191203104601 海老原さんちのニッチモの『HRmics』34号が届きました。今号の特集は「年金は破綻する論のウソ」。海老原さん、最近年金づいていますな。


http://www.nitchmo.biz/hrmics_34/_SWF_Window.html


中身は、先日出た『年金不安の正体』の今次年金改正に向けたアップデート版といえましょうか。基本的に、権丈節が鳴り響いております。



1章 年金をめぐる「故意のから騒ぎ」


§1.年金財政は、むしろ好転している
§2.老後2,000万円の自助が必要なのは35年前からの常識


2章 社会の変化を受け止めるためのIF


§1.厚生年金の適用拡大の目的は「取り立て強化」にあらず
§2.真の所得代替率は、過去・現在・将来、ほぼ変わらない
§3.長く生きるなら、長く働き、長く納めると言うリバランス


3章 多事争論 年金制度は、何が問題なのですか?


§1.MMTとBIが年金を救う
§2.概ね良い方向だが、基礎年金の悪化に対処すべき
§3.低年金者の所得代替率低下をどうするか
§4.「年金は世につれ人につれ」が正しい



この目次を見て。「あれ?3章はだいぶ方向がちげえよ」と思ったあなた。ピンポン、ここは権丈節とは反対の考えの方々にインタビューした部分なんですね。このタイトルを見て、それぞれ誰が喋っているか当ててみませんか。「MMTとBIが年金を救う」などとうそぶいているのは、さて誰でしょう。


さて、今号での私の連載は、とりあえずの最終回で、これまでの12冊を振り返ってその位置づけを試みています。これまでの12冊は以下の通りですが、さて、本ブログの読者はこのうちどれくらいお読みになっているでしょうか。


 


Hama

2019年12月 2日 (月)

組合員は勝ち組@『月刊連合』12月号

Covernew_20191202140601 『月刊連合』12月号がとどきました。今号の特集は「連合2020春季生活闘争中央討論集会」ですが、そのあとの連合結成30周年記念シンポジウム「私たちが未来を変える ~安心社会に向けて~」が面白いです。

https://www.jtuc-rengo.or.jp/shuppan/teiki/gekkanrengo/backnumber/new.html

特に、首藤若菜さんの講演が、連合の本質的弱点を突いていて、ここをどう考えるかが重要だと思わせます。

・・・こうして過去と現在を見ていくと、一つの重要な変化を指摘することができる。ろうどうくみあいはしょくばではいまだにさまざまな規制力を持っていて、賃金・労働条件改善を実現しているが、社会全般への波及力は弱まっている。そして全体の所得水準が下がり、雇用形態が多様化する中で、中間層を形成していた労働組合員は、いつのまにか「勝ち組」とみなされる社会の「上位層」となっている。少数派となった組合員の労働条件は守られていくかも知れないが、格差や長時間労働の是正は本当に進むのかと思わざるを得ない。・・・

 

2019年12月 1日 (日)

野川忍編著『労働法制の改革と展望』予告

野川忍編著『労働法制の改革と展望』(日本評論社)の予告がアップされたようです。

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784535524224

第1章 労働法制の展開――現状と動向 野川 忍
第2章 労働時間規制の手法――長時間労働規制と労働時間法制のあり方 長谷川 聡
第3章 年次有給休暇制度における付与義務構成の再評価――労基法上の義務としての休暇制度 奥田香子
第4章 裁量労働制の意義と課題――時間計算の仕組みと適用除外制度のあいだ 石田信平
第5章 派遣労働法制と均衡処遇の課題 國武英生
第6章 パートタイム・有期雇用労働法の制定と同一労働同一賃金理念 川田知子
第7章 企業変動に対応する労働法制の可能性 中井智子
第8章 労働安全衛生法の新たな機能 小畑史子
第9章 正社員の法的位置――合意型正社員の可能性 野川 忍
第10章 多様な労働者・就労者像の実態と法的位置づけ 岡田俊宏
第11章 労働市場活性化への法政策 大木正俊
第12章 マイノリティのための労働法制へ向けて――立法政策のための基礎理論的考察―― 有田謙司
第13章 日本の外国人労働者法政策――失われた30年 濱口桂一郎
第14章 労働法の規律のあり方について――隣接企業法との交錯テーマに即して 土田道夫
第15章 労働者代表制の構築に向けて 皆川宏之
第16章 使用者側からみたハラスメント法制の現状と課題に関する一考察 町田悠生子
第17章 「働き方改革」の到達点とこれからの労働法の可能性 水町勇一郎 

ということで、私も1章書かせていただいておりますが、タイトルから興味をそそられるような章もいくつかありますね。

 

 

藤本昌代/山内麻理/野田文香『欧州の教育・雇用制度と若者のキャリア形成』

487564 藤本昌代/山内麻理/野田文香『欧州の教育・雇用制度と若者のキャリア形成 国境を越えた人材流動化と国際化への指針』(白桃書房)を、著者の一人である山内麻里さんよりお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.hakutou.co.jp/book/b487564.html

日本の国際競争力の強化等の課題にあたり、大学教育のあり方や、また新卒一括採用などの人事制度が批判の対象となることが多く、根拠として米国に言及されることが多いが、本書の著者たちは、政府主導型の教育・雇用制度を持つことの多い欧州の方が比較するのに妥当と言う。

本書は経済学・政治学・社会学のバックグラウンドを持つ編著者が、それを活かして行った調査・分析の集大成である。2部からなり、第I部「教育訓練システムと雇用システムとの連動」は欧州各国の教育制度、労働市場への入職のしくみの整理、欧州の教育制度の標準化への制度変革などについてまとめている。第II部「各国の労働制度,教育制度および高度専門職の働き方」は、欧州および米国の労働制度について概観し、ドイツ、フランスの教育制度を詳述する。そして高度専門職の転職、定着の傾向の違いが発生する制度的要因を分析し、フランス、スイスにおける専門的職業従事者の働き方、キャリアについてまとめている。

佐藤教授には「欧州の高等教育と雇用制度の関係を包括的に分析する本書は、日本における大学から企業への移行や、リカレント教育における大学の貢献などに関して有益な視点を提供しよう」 との推薦の辞をいただいており、社会的にも大きな注目を集めるこの分野の研究において、本書が欠くことのできない書籍となるのは間違いない 

教育訓練システムと雇用システムの関連性を、ヨーロッパの特にドイツとフランスの状況を詳しく分析しながら論じていく本で、拙著でいえば『若者と労働』、海老原嗣生さんの本でいえば『お祈りメール来た。日本死ね』で論じたテーマを、徹底的に深堀りした本と言えます。

目次は以下の通りですが、

序章  欧州の教育・雇用制度と若者のキャリア形成
第I部 教育訓練システムと雇用システムとの連動
第1章 各国の教育訓練システムの特徴
第2章 各国の雇用システムと教育訓練システムとの補完性
第3章 欧州の高等教育改革─ボローニャ・プロセスが目指す調和と標準化
第II部 各国の労働制度、教育制度および高度専門職の働き方
第4章 欧州の労働と社会保障に関する制度と専門職の研究経緯
第5章 ドイツの教育訓練システムとキャリア形成
第6章 フランスの高等教育と学位・免状・資格制度
第7章 高等教育修了者の就職における学歴インフレと文理格差
第8章 フランスの管理職・専門職の長時間労働とノブレスオブリージュの瓦解
第9章 科学技術立国スイスの研究支援人材─リサーチ・アドミニストレーターの実態と動向
第10章 仏ジャーナリストの専門職化と専門教育の変容
終章  今後の高等教育修了者の働き方の展望 

フランスにせよ、ドイツにせよ、伝統的な高等教育システムが、21世紀初頭以来のEUのいわゆるボローニャ・プロセスによって、大きくその姿を変えつつあることがよくわかります。

ところで、ひとつ前のエントリで最年少准教授氏の本を読んだことが影響しているわけではないんですが、ドイツのいわゆる専門大学は、原語ではFachhochschuleであり、直訳すれば高等専門学校なんですね。もちろんファッハホッホシューレは中期高等教育卒業後に入るので専門大学と訳さないと誤解を招くからそうしているんでしょうが、日本の高専も実体的には大部分が大学3年時に編入して大学院にも進学していることからすれば、予科付きの専門大学みたいなものかもしれません。

 

 

大澤昇平『AI救国論』を読んで思ったこと

610828_l 例の最年少(特任)准教授氏は、さらに支離滅裂なことをつぶやいて火に油を注いでいるようですが、とはいえ人のことをいくつかのつぶやきだけで判断するのもいかがなものかという気もして、せっかくなので氏の『AI救国論』(新潮新書)をざっと読んでみました。正直、やたらにいきり気味のその文章はあまり読みやすいものではありませんが、彼自身の経験をもとに何かを論じようとしているその論の部分よりもむしろその経験そのものの部分は、なかなか興味深い体験談であり、かつ(彼が論を向けようとしている方向とは必ずしも一致しないかもしれませんが)いろんな意味で示唆するところがかなりあります。

その中でも、今回の件でいささか揶揄的な調子で語られた彼のこれまでの学歴にかかわる部分は、「救国」なぞという大風呂敷の話はともかく、若者たちの職業人生を考えたうえでの進路選択という観点からすると、極めて示唆的なものだと感じました。特任准教授に「登り詰めた」などという自意識過剰な表現はとりあえずスルーして読んでください。 

・・・このような事情があったので、特別な家庭に生まれたわけでもない私がいかにして今のポストに登り詰めたかというと、時間的・金銭的なリソースの欠乏を、テクノロジーによってカバーするという徹底的な省エネの術を、人生の早い段階で見つけたことが大きいように思う。・・・中学に上がっても、成績は常にトップレベルでったが、進学校には進まず、高等専門学校、いわゆる高専に入学した。・・・・

・・・私が経験した高等専門学校というのは極めて特殊な環境で、「大学受験のジレンマ」を解決する一つのソリューションになると考えてる。・・・

・・・高専に入り大学に編入するというのは、キャリアパス設計の上でいわばファストパスに相当する。なぜならセンター試験のための受験勉強をする必要がなく、早い段階でテクノロジストとしての必要なスキルを身につけることが可能になるからである。・・・

この部分を読んで、今から8年以上も前にあるつぶやきを見て書いたエントリを思いだしました。ここで書かれていることは、今回の准教授氏の言っていることそのものです。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/02/post-3393.html (高等専門学校についての興味深いつぶやき)

ある方のつぶやきに、高等専門学校についての興味深い指摘がありましたので、引用しておきます。「教育の職業的意義」とか論ずるなら、ここに書かれたことを表裏ともに踏まえておく必要があるのでしょう。

>中学時代、こんな下らん受験勉強で将来が決められるなんて冗談じゃない!と高専に行った。結果、受験勉強など7年間で一週間とせず大学院まで行けてしまった。こんなラクな脇道があるのにガチでセンター挑むとか考えられんわww

>5年間で大学相当の知識と、豊富な実習・実験で専門高校ばりの現場力も兼ね備えられるから、高専という教育システムは良いものだ。文科系の高専も作ればいいと思うよ。有力な専門学校を改組したりして。

>ただし高専は退学がめっちゃ多いんだよなぁ。大学なら留年なんてよくある話だけど、高専生は義務教育の中学生の感覚を引きずっているとこがあって、留年するとすぐ辞めちゃう。

>うちのクラスも44人入って、5年ストレートで出た人30人いなかったわ。3年や4年で留学生や高校(主に工業高校)からの編入生を補充するから、卒業人数だけ見ればさほど落ちてるように見えないけど実はごっぞり落ちてる。

>高専は工学に対する興味、やる気が無くなると終わる。私は受験勉強はめっちゃ嫌いだけど、専門の授業や実験は有意義に感じられたからさほど苦痛じゃなかった。逆に工学が嫌い・苦痛な人には高専は地獄だ。就職が良いからなんて動機でホイホイ入るとあっさり沈む

(つづき)

この方のつぶやきの続き。日本の教育制度への提言編。

>現状の高専は中学校の上位20%の生徒しか入れない上に、ほぼ工学系しかない。敷居が高すぎる上に品揃えが悪い。もっと拡充すべき。

>現実はそうなんよね~(´・ω・`) 工学系はこのくらいの定員でいいとしても、医療とか会計とかあったら選択肢が増えていいよねと思う。

>高専・専攻科という教育システムが優れているから、他の分野でも使うべきとおも。それにその方法で女子増えても、医療系と工学系高専はキャンパス別だろうとw

>純粋に教育システムとして、6334制より6352制の方が優れているのは事実。高専専攻科は貴重な成功例なのだから、文科省は自信を持って高専のシステムを他の分野にも拡大すればいいと思うよ。

少なくとも、経済的なリソースがそれほど潤沢でない若者が、技術系のハイエンドの職業人生を目指すのであれば、高専→大学後期課程に編入→大学院というコースは極めて有効な選択肢であることは確かでしょう。

先日亡くなった眉村卓の用語でいえば、産業士官候補生としての進路選択には有効な選択肢でしょう。ビッグタレントを目指すのであれば、もう少し雑学も齧ったほうがよかったのでしょうが。

 

 

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