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2019年11月11日 (月)

野川忍・水町勇一郎編『実践・新しい雇用社会と法』

L24319 野川忍・水町勇一郎編『実践・新しい雇用社会と法』(有斐閣)を、執筆者の一人である長谷川珠子さんよりお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641243194?top_bookshelfspine

働き方改革関連法により,長時間労働の是正や多様な働き方実現のための新たな施策等が導入される。本書では,実務に精通した研究者が,契約締結から終了にいたるプロセスの中で実際に問題となりうるケースを用いて,労働法実務の今後を描き出す。

というわけで、以下のような内容と執筆陣です。

第1章 労働契約の成立と若者・高齢者雇用(小西康之・山下 昇)
第2章 パート・有期雇用(野川 忍・水町勇一郎・北岡大介)
第3章 派遣労働(橋本陽子)
第4章 雇用平等・障害者差別の禁止(長谷川珠子)
第5章 人事制度(土田道夫)
第6章 労働関係の変動,企業における人格的利益,ハラスメント(水町勇一郎・大橋 將)
第7章 労働時間(山本圭子)
第8章 労働者の傷病,労働災害・メンタルヘルス(北岡大介・鎌田耕一)
第9章 労働契約の終了・退職金・年金(原 昌登・渡邊絹子・北岡大介)
第10章 国際化への対応(早川智津子)
第11章 今後の労使関係(野川 忍)
鼎談:雇用社会における労使関係の将来展望(菅野和夫・逢見直人・荻野勝彦)  

この目次を見たら、なんと言っても最後の鼎談に興味をそそられるでしょう。我らが労務屋こと荻野勝彦さんが、各方面にわたってやや慎重な言い回しながら持論をぶちかましています。

荻野 日本の正社員は、組織中枢から末端に至るまで、企業業績にコミットしているという意識を持っています。・・・そのためには、勤務地変更、職種変更、時間外・休日労働にも無限定で応じるわけです。・・・欧米でそうした無限定な働き方をしている人は、恐らくトップ10%程度のエリートだけで、そういう人は高い賃金と賞与を受け取る。残りの9割は決められた仕事を決められた通りにやって決められた賃金を受け取る。職務記述書と職務給の世界で働いていて、企業業績にコミットしているとは思っていない。・・・同一労働同一賃金も基本的にはこの90%の世界の話でしょう。

日本が特徴的なのは、正社員がすべてそうかは別としても、正社員が6割以上いるところで、欧米との違いは量的な違いに過ぎません。1割と9割だと比べようと思わないけれども、6割と4割だと比べたくなるというのは、気持ちとしてわからないではありませんが、やはり無理があるというか、筋が悪いと思います。そもそものスタート地点が悪いので、議論が先に行くほどまずくなる。それが派遣の話ではないかと思っています。・・・・

同一労働同一賃金という看板で進められた政策にはこのように辛口ですが、今後の方向としてはこういうみんながエリート目指して頑張る在り方に疑問を呈しています。

荻野 企業文化、風土については、頑張れば報われる、努力すれば成功するという意識が強すぎるのではないかと感じます。・・・あまりに一般的な価値観として徹底されすぎてしまうと、報われないのは頑張らないから、失敗するのは努力不足ということになってしまう。それがパワハラとか、長時間労働につながっているという面はあるのではないか。・・・

この点、私が結構以前から繰り返し言っていることなんですが、ある面で階級格差を導入せよみたいな面があって、なかなか受け入れられがたいようです。

Hyoshi17 もう7年も前に、『POSSE』17号で今野晴貴さんとの対談で、こう語ったことがあります。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-40cf.html

濱口:これはおそらく労働にかかわるいろんな人たちにとって、ややタブーに触れる議論になるんですが、ここに触れないと絶対にブラック企業の問題が解決しないと思っていることがあります。それは、エリート論をエリート論としてきちんと立てろということなんです。つまり、日本では、本当は一部のエリートだけに適用されるべき、エリートだけに正当性のあるロジックを、本来はそこには含まれない、広範な労働者全員に及ぼしています。・・・・ 

あと、この鼎談で連合会長代理の逢見さんがこうはっきりと従業員代表制の立法化に積極的な発言をされているのも、重要なポイントですね。

逢見 ・・・・非正規雇用の処遇改善についても、労使が議論もせず裁判所に丸ごと判断を任せるということではないと思います。むしろ労使で検討して解を求めていかなければいけない問題です。・・・そうすると組合のないところで過半数代表者をどういうふうに選んでいくかということの手続きが必要になります。ゆくゆくは従業員代表法制という方向に行くことになると思います。過半数代表として労働組合が機能していれば、そこは労働組合がやるし、なければそれに代わるものとして従業員代表を選んでいくというそういう枠組みで立法化するということは必要なことではないかと思っています。

 

 

 

 

 

 

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コメント

まあ、6割の正社員がエリート扱いだと、1割だけエリートの欧米と比べて、残りのノンエリート、日本の場合は非正規雇用者に対する搾取が厳しくならざるをえませんからね。

結局高度成長期の成長率が高い時代に適応したシステムであって、成長率が落ちれば機能不全に陥るのは必然だったといわざるをえません。

しかも6割の正社員も定年までエリート扱いで面倒などみれなくなっているわけですからね。割り増し退職金さえ支払えば、後は知りませんというのも無責任で、最後まで面倒を見切れないのなら、最初からそうするべきではない。

ただ労働者側も単線型の教育システムでトコロテンよろしく押し出されてきたのだから、みんなエリートを目指すシステムに乗らざるをえなくなる。

結局諸悪の根源は単線型の教育システムであって、複線化して職業教育の強化という方向に進まざるをえないわけですが、その問題に対して、大学入試をいじって対処しようとするから、すべてがおかしくなるのです。教育システム全体についての総合的な議論が必要です。独創性がどうたら、国際化がどうとか的外れで観念論的ではない、地に足のついた議論が望まれます。

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