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2019年11月22日 (金)

日本型人事の花いちもんめ

小峰隆夫さんが「帰ってきた経済白書」というエッセイを書かれています。

https://www.jcer.or.jp/j-column/column-komine/20191118-4.html

冒頭、鶴光太郎、前田佐恵子、村田啓子『日本経済のマクロ分析 低温経済のパズルを解く』(日本経済新聞出版社)の著者3人がいずれも内国調査課の課長補佐経験者だと話を振っておいて、

・・・良い仕事をするコツは、良い人を得ることである。経済白書は補佐クラスの3~4人が原案を書く。この原案執筆者に人を得ることが、良い白書を作る上で決定的に重要である。

 では誰がその補佐クラスの人事を決めるのか。役所の人事の決め方にはいくつかの方法がある。一方の極端は「人事当局(秘書課)が一方的に通告してくる(Aタイプ)」というやりかたであり、もう一方の極端は「現場(課長)の方が特定の人を指名する(Bタイプ)」というやりかたである。ただしこれは両極端だから、現実にはこの中間の形を取る。つまり、ある程度の候補者の中から、人事当局と現場の課長が話し合って決めるということになる。・・・

役所という極めてメンバーシップ型の組織の中で、経済白書を執筆するというかなり特定のスキルを要求されるジョブに誰を充てるかという、日本の組織では結構見られるシチュエーションを、自らの経験に即して絵解きしています。

・・・例えば、私にはこんな経験があった。一つは、私自身が最初に内国調査課の補佐になった時のことである。当時私は、経済研究所で計量モデルの仕事をしていたのだが、突然内国調査課の補佐への異動を伝えられた。当時研究所で上司であったA氏は私に、「君を取られると我々も困るんだが、内国調査課長が是非君を補佐に欲しいと言ってるんでねえ。それに君にとってもこれは良い話だからね」と言った。つまり、私が補佐になったのは、当時内国調査課長であった横溝氏が私を指名したからであった。また、その人事案にA氏が反対しなかったのは、A氏自身がかつて内国調査課補佐を勤めた経験があるので、そのポストの重要性を良く知っていたからなのだった。 もう一つは、その1年後の話である。私が内国調査課補佐になった時、筆頭補佐は大来洋一氏(故人)であった。大来氏の任期が近づいたある時、守屋課長が私のところに来て「今、大来君の後任を誰にするか考えているのだが、新保さん、Bさん、Cさんの中で誰が適当だと思いますか」と訊ねたのだった。私は迷わず「それはもちろん新保さんでしょうね」と答えた。そしてその通り、新保氏が補佐になった。これは、守屋課長が私のアドバイスも参考にして新保氏を指名し、人事当局もその希望どおりにしたということである。

 こうした経験があったので、私も普段から「次の補佐を誰にしようか」ということを考えていた。補佐交代の時期が近づいてきたとき、私はかねてから考えていたD氏を人事当局に申し入れた。D氏は当時、エコノミスト的な仕事ではなく、行政的な仕事に従事していたのだが、私はその人物の人柄やエコノミストとしての素質を高く評価していたのだ。人事当局は「いいんじゃないですか。相談してみましょう」ということだったのだが、この人事は実現しなかった。その時D氏が所属していた課の課長が「今、当課は重要な業務の真っ最中であり、この時期にD氏を動かすことはできない」と強く拒否したからである。

 「現場がD君を離さない」と聞いた時、私は「こうして人の運命が分かれるのだな」とため息をついた。かつて私が補佐に指名された時、研究所の上司は「困ったな」とは思いながらも、私の将来を考えて、反対はしなかった。私は内国調査課の補佐となり、3回の白書を書く中でエコノミストとしての力を磨き、最初の著作を出すことができた。今日の私があるのは、この時補佐として内国調査課に配属されたからだとさえ言える。

 D氏はその後、行政的な分野でさらに実績を積み、かなり重要なポストにまで上り詰めている。それはそれで一つの人生だ。しかし、もしこの時、D氏が内国調査課の補佐になっていたら、D氏はエコノミスト的な分野で実績を積み、全く異なる人生を歩んでいた可能性があったのだ。

個人名がぞろぞろ出てきてリアル感たっぷりですが(旧経企庁の方なら、アルファベットの人名も全部わかるのでしょう)、日本型組織における人事メカニズム(少なくとも組織にとって枢要なポストについての)が、人事センターと現場管理者とのネゴシエーションであるという、誰もがうすうすわかっているけれども、人事管理の教科書なんかではあんまり明示的に書かれていないことが、非常にくっきりと浮かび上がってくるエッセイです。

 

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