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2019年11月 9日 (土)

『「尊厳ある社会」に向けた法の貢献』

482286 島田陽一・三成美保・米津孝司・菅野淑子 編著『「尊厳ある社会」に向けた法の貢献 社会法とジェンダー法の協働』(旬報社)をお送りいただきました。浅倉むつ子先生古稀記念論集ということで、全30人による力のこもった論集です。

http://www.junposha.com/book/b482286.html

第Ⅰ部 差別・平等と法
第Ⅱ部 雇用社会と法
第Ⅲ部 ジェンダーと法
第Ⅳ部 ハラスメントと法

全30論文のうち、私の『働く女子の運命』と問題意識が大変近かったのは、島田陽一さんの「「同一労働同一賃金原則」と「生活賃金原則」に関する覚書」です。そこで引用されている様々な文書は、私もこの問題を考える中で渉猟したものでした。

「同一労働同一賃金原則」と「生活賃金原則」に関する覚書…………島田陽一
 はじめに
一 「同一労働同一賃金」論の登場とその具体的内容
二 「男女同一労働同一賃金」論と「生活賃金」原則
 むすびに代えて

あと、読みながらものすごく考えさせられたのは、笹沼朋子さんの「業務上の自殺、あるいは精神病者の自己決定について――業務上の自殺を考察する」です。

業務上の自殺、あるいは精神病者の自己決定について――業務上の自殺を考察する…………笹沼朋子
一 問題の所在――自殺の意思
二 判例(「意思」の客観的評価)
三 精神病者の声――躁うつ病を例にして 

これは、これだけではよくわからないかもしれないですね。笹沼さんが言いたいのは、自殺を労災認定するために精神障害に陥っていたと言うことは、自殺に追い込まれた、追い込まれて自殺という決断をした本人の立場からして却っておかしいのではないかという疑問です。加害者に対する怒りに満ちた遺書を、精神障害のため書かれた無意味な文書にしてしまっていいのか、というまことに実存的な疑問なのですが、それをうかつに正面から受け止めてしまうと、意図した自殺は労災にあらずという労災保険の大原則に抵触してしまうという矛盾。自分をいじめた人間に対する復讐としての自殺を、その意図通りに受け取ってしまうと労災にならなくなり、労災認定するためには頭がおかしくなっていたからだよ、遺書は気違いのたわごとなんだよと言わなくてはならないという、この矛盾に、笹沼さんは敢然と立ち向かっていきます。

 

 

 

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