菅野和夫『労働法 第12版』
遂に出ました。労働法の超基本書、菅野和夫『労働法 第12版』です。
https://www.koubundou.co.jp/book/b481404.html
「働き方改革」関連法改正に完全対応!「労働法のバイブル」の最新版。
「働き方改革」に伴う労働法制の大改正をはじめとした最新の法改正をフォローし、近時の重要な裁判例・実務の現状等にも目配りして労働法の姿を描き出した基本書の決定版。
時代の変化のなかで形成されてきた新しい労働法の姿を体系化し、その中で個々の解釈問題を相互に関連づけて検討した、労働法の現在を知るために最適の書。
まず形而下的なことから言うと、ページ数は1227ページ。第11版が1166ページだったのがさらに増えています。しかし分厚さはほとんど変わっていません。
内容的にはもちろん、この間の働き方改革等が盛り込まれているわけですが、とりわけ「日本版同一労働同一賃金」に対する冷静かつ鋭利な批評(p361~p363、特にp363の注31)に見られるように、その筆致はますます冴え渡っています。
31) 欧州の同一労働同一賃金原則も、裁判では、学歴、資格、勤続年数、キャリアコースの違い等、職務以外の諸要素を考慮した合理性の有無、として判断されているので、日本に導入可能であるという指摘もあるが(中略)、職務給が普遍的賃金制度となっている欧州での「職務以外の要素の考慮」と、職務給の普遍性が全くない日本での「職務以外の要素の考慮」とは、その意義や程度が大きく異なる。端的には、欧州の非典型雇用者に関する同一労働同一賃金の法規定について、裁判で争われるのはほとんどが手当に関する相違である。これに対し、日本では、正社員・非正社員の手当の相違を争う事例も多いが、基本賃金(さまざまな基本給、そして賞与と退職金)の相違がより大きな、そして困難な問題となる。
また、解雇権濫用法理についても、p785~p786の*コラム「解雇権濫用法理の日本的特色」が、「日本では正社員の解雇は労働法上ほとんど不可能である」といったたぐいの誤解を、懇々と諭すように雇用システムとの関係から解説しているところも、是非切り出して日経新聞あたりに載せたいところです。
一方で、p19~p22では、フリーランスやデジタル情報革命といった今世界的に最先端の議論にも言及し、JILPTの調査研究も引用していて、目配りも行き届いています。
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