『社会のためのデモクラシー』
網谷龍介さんより、網谷さんも2章執筆されている『かわさき市民アカデミー双書 6 社会のためのデモクラシー ヨーロッパの社会民主主義と福祉国家』(彩流社)をお送りいただきました。小川有美さんが総論を書き、宮本太郎さんがスウェーデン、水島治郎さんがオランダ、網谷龍介さんがドイツという、鉄壁の布陣です。
http://www.sairyusha.co.jp/bd/isbn978-4-7791-5071-5.html
ただ、もとは2014年にかわさき市民アカデミーで開講された「社会民主主義と福祉国家-ヨーロッパと日本から」の講義録であるということもあり、この激変の5年間の後の視点から見ると、いささか古くなってしまっている面もあります。特に、ドイツではこの間、AfD(ドイツのための同盟)が急速に勢力を伸ばし、社会民主党は縮む一方ということもあり、オランダ編で水島さんが強調している新右翼ポピュリズムとどこが共通でどこが違うのかといった話を聞きたかった感が残るのはやむを得ません。
ほんとに、ヨーロッパの社会民主主義政党は、20年前の元気良さがどこに行ってしまったのかと思うくらい、ほぼどこでも元気がありませんね。コービンのイギリス労働党も支持率は低迷気味のようだし。
とはいえ、意外にも現在でも欧州各国で社会民主党は結構与党に参加しているんですよ。欧州社会党のサイトによると、ポルトガル、フィンランド、デンマーク、スウェーデン、スペイン、マルタ、スロバキア、ルーマニアで首相を出しています。
https://www.pes.eu/en/about-us/leadership/
また、つい先月の10月24日にも「デジタル経済における労働者の権利」(Workers’ rights in the digital economy)という社民党雇用社会相宣言を出しています。少なくとも、極東のどこかの国の労働組合の支持を受けているはずの政党よりはずっとこういう問題に敏感なようです。
・・・We are all getting used to ordering services on a phone app or goods via the internet. But let’s be clear: a teenager delivering meals on a bike is not an entrepreneur, neither is a mother of four children, driving people through the city after her day-job in order to make ends meet. We need to ensure that those people are neither treated as start-ups in the making nor as second-class workers, but with the respect and rights they deserve.
It is obvious that the labour market of the 21st century can’t be the resurrection of the labour market of the 19th, with a digital lumpenproletariat working paid per task, without social protection and without knowing if they will get enough work to make a living.・・・・
我々はみんなスマホアプリでサービスを、インターネットで商品を注文するのに慣れてきている。しかしはっきりさせよう。バイクで食べ物を配達する十代の若者は企業家じゃないし、4人の子供を抱えて生計を立てるために昼間の仕事の後で市内で客を乗せて運転するお母さんも企業家なんかじゃない。我々はこれらの人々を創立途中の新規企業とも二流の労働者とも扱うのではなく、それにふさわしい尊敬と権利を持って扱う必要がある。
21世紀の労働市場は、タスクごとに賃金が払われるデジタル・ルンペンプロレタリアートが、社会保護もなく生計を立てるために十分な仕事を得られるかどうかもわからないような、19世紀の労働市場の再臨であってはならない。・・・・
ふむ、デジタル・ルンペンプロレタリアートか、いい言葉見つけたな。
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>とはいえ、意外にも現在でも欧州各国で社会民主党は結構与党に参加しているんですよ。欧州社会党のサイトによると、ポルトガル、フィンランド、デンマーク、スウェーデン、スペイン、マルタ、スロバキア、ルーマニアで首相を出しています。
55年体制以来のリベラル右派自由民主党と、それに対抗するリベラル左派の立憲民主党というアメリカ式の「リベラル対リベラル」が日本でも定着するんでしょうか?
現状では自民党と野党という「1と2分の1体制」が再来しているという印象です。
投稿: Phi | 2019年11月 7日 (木) 17時58分