周燕飛『子どものいる世帯の生活状況および保護者の就業に関する調査2018(第5回子育て世帯全国調査)』
JILPTの調査シリーズとして、周燕飛さんの『子どものいる世帯の生活状況および保護者の就業に関する調査2018(第5回子育て世帯全国調査)』が出ました。
https://www.jil.go.jp/institute/research/2019/192.html
記者発表資料も公表されているので、そちらの方がわかりやすいと思います。
https://www.jil.go.jp/press/documents/20191017.pdf
主な事実発見は:
■母子世帯の貧困率は5割超え、13%が「ディープ・プア」世帯
可処分所得が厚生労働省公表の貧困線を下回っている世帯の割合は、母子世帯では51.4%、父子世帯では22.9%、ふたり親世帯では5.9%となっている。可処分所得が貧困線の50%を満たない「ディープ・プア(Deep Poor)」世帯の割合は、母子世帯が13.3%、父子世帯が8.6%、ふたり親世帯が0.5%である
■子どもが小さい家庭よりも、子どもが大きい家庭の母子世帯は困窮している
母子世帯の場合、子どもの年齢が高い世帯ほど、経済的困窮度が高い。暮らし向きが「大変苦しい」と回答した母子世帯の割合は、末子が「0~5歳」層では21.4%、「6~11歳」層では23.0%、「12~14歳」層では27.9%、「15~17歳」層では29.4%となっており、末子の年齢上昇とともに、経済的困窮を感じている世帯の割合が上昇傾向にある。
■父親の就業時間が60時間超えの場合、母親のフルタイム就業率が顕著に低下
ふたり親世帯の場合、夫の週あたり就業時間が60時間を超えると、妻のフルタイム(FT)就業率が顕著に低下する。夫の週あたり就業時間が60時間以下であれば、妻のFT就業率がおおむね4割前後で推移しているのに対して、60時間を超えると、妻のFT就業率が3割に急落している
■離別父親の44%は子どもとの交流が「全くない」
過去の1年間、非同居父親と子どもとの面会や会話等交流の頻度は、「年に数回以上」の割合は、母子世帯の離別父親が37.3%、ふたり親世帯の単身赴任父親が93.8%である。離別父親の44.2%は子どもとの交流が「全くない」状態であり、そのうち離婚5年以上の離別父親の半数以上(51.6%)が子どもと交流なしの状態である。
■母子世帯では娘よりも息子は学業不振が深刻
小中高校生の第1子が学校での学業成績が「(まあまあ)良好」(4点以上)である割合は、母子世帯33.0%、父子世帯36.7%、ふたり親世帯46.0%である。ふたり親世帯の場合、4点以上の良い学業成績を挙げている子どもの割合は、小学生も中高生も、男子(息子)も女子(娘)も同じく4~5割程度となっている。一方、母子世帯の場合、娘は息子より学業成績が明らかに良い。その差は小学生の段階では5ポイントほどであるが、中高生の段階になると18ポイントまでに広がっている。
■「金銭的支援」の拡充を望むふたり親世帯が増加し、全体の8割弱に
育児と就業を両立する上で、拡充してほしい公的支援についてたずねると、「児童手当の増額」、「乳幼児医療費助成期間の延長」、「職業訓練を受ける際の金銭的援助」、「年少扶養控除の復活」といった「金銭的援助」の拡充を望む保護者がもっとも多く、そのいずれかを選択した保護者の割合は、母子世帯79.2%、父子世帯76.9%、ふたり親世帯78.6%となっている。ふたり親世帯は「金銭的支援」を選ぶ割合が、前回調査より5ポイントも上昇し、母子世帯と並ぶ8割前後の水準となっている。
さて、周さんは既にご案内している11月5日の労働政策フォーラム(女性のキャリア形成を考える─就業形態・継続就業をめぐる課題と展望─)で、「子育て女性の就業状況─子育て世帯全国調査結果から─」という報告をする予定です。
つまり、この資料シリーズはそのための学習指定文献(笑)になりますので、ご参加されようと思う方々は是非ダウンロードして目を通しておくとよろしいかと思います。
https://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20191105/index.html
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