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2019年10月 3日 (木)

水町勇一郎『詳解 労働法』

457194 とてつもなく分厚いのが送られてきました。水町勇一郎さんの超絶テキスト『詳解 労働法』(東大出版会)です。

http://www.utp.or.jp/book/b457194.html

働き方のルールを定めた労働法制のすべてが分かる概説書.歴史的な経緯・成り立ちや理論的な考え方・筋道に根差して労働法の全体像を分かりやすく解き明かし,実務の世界で起こるさまざまな問題も解決に導く.「働き方改革」がはじまる時代に不可欠な知識を網羅した,働く人すべてに必携の決定版.

どれくらい分厚いかというと、物理的には拙著『日本の労働法政策』とほぼ同じくらいなんですが、

Image0_20191003090301

ページ数が、拙著が1074ページに対して、水町本は1429ページと、4割くらい多い。

いやいやそんなことよりも、中身も凄い。

目次は下にコピペしておきますが、これは世間の普通の労働法テキストとそれほど変わりません。

でもね、冒頭の第1章労働法の歴史の、第1節労働法生成の前史の最初のところが、こういう文章で始まるんですぜ。

・・・労働を統一した概念で捉えこれに国家が社会的な保護を与えるという近代的な意味での「労働法」は、産業革命後の資本主義経済の発展の中で生まれる。しかし、それ以前の社会においても、働くことに対して国家が規制を課すことがなかったわけではない。古代ローマにおける雇傭契約が奴隷の賃貸借に由来することと同様に、日本の古代から近世にかけての労働法は、人身売買または長期の人身拘束に対する規律を中心とするものであった。また、その下で、主人ト使用人(従者)との間の身分的または契約的な関係が形成され、法的な権利や義務が観念されることもあった。・・・・

そして、歴史叙述は「律令制下の労働関係」から始まり、そこで真っ先に参照されているのが、瀧川政次郎の『日本労働法制史研究』なんですな。これ、拙著の労働契約法政策の冒頭の所で参照している文献ですが、水町さん、そこまで目配りしてんだ、と。

そういうやや趣味的なトリビアは別としても、たとえば第10章非正規労働者の、パート、有期、派遣と来て、最後の第6節に「個人業務請負業者等をめぐる法的対応」という2ページばかりの節に、労働者性をめぐる諸問題を詰め込むだけでなく、JILPTの先日の雇用類似の働き方の者の数の推計値まで注で引用しているくらい、目配りが効いています。

第1編 総 論
第1章 労働法の歴史
 労働法生成の前史/戦前の労働関係と労働法/戦後の労働法制の確立と展開
第2章 「労働者」
 総説――「労働者」概念の意義と種類/労働基準法上の「労働者」/労働組合法上の「労働者」/労働契約(法)上の「労働者」
第3章 「使用者」
 総説――「使用者」概念の意義と種類/労働契約上の使用者/労働基準法上の使用者/労働組合法上の使用者――概要
第4章 強行法規
 労働関係を規律する法源(総論)/憲法,条約と労働法/労働法規の規制枠組
第5章 労働協約
 労働協約の意義と法的性質/労働協約の効力発生要件/労働協約の効力/労働協約の拡張適用(一般的拘束力)/労働協約の終了
第6章 就業規則
 就業規則の意義/就業規則の手続き――労基法上の作成・変更手続/就業規則の効力
第7章 労働契約
 労働契約の意義/労働契約の基本原則/労働契約の成立要件/労働契約の解釈枠組み/労働契約上の権利義務

第2編 個別的労働関係法
第8章 労働者の人権保障
 労働者の人権保障の経緯と背景/労働憲章/人格権の保護/内部告発の保護
第9章 雇用差別の禁止
 雇用差別禁止法制の状況/均等待遇原則(労基法3条)/男女賃金差別の禁止(労基法4条)/賃金以外の男女差別の禁止(男女平均取扱法理と男女雇用機会均等法など)/女性活躍推進法
第10章 非正規労働者
 日本における非正規労働者の状況/正規・非正規労働者間の待遇格差に関する学説・裁判例の展開/パートタイム労働者をめぐる立法――パートタイム・有期雇用労働法など/期間の定めのある労働契約をめぐる立法/労働者派遣をめぐる立法――職業安定法44条,労働者派遣法など/個人業務請負業者等をめぐる法的対応
第11章 労働関係の成立
 採用の自由/労働契約の成立と労働条件の明示/労働契約の締結過程――採用内定・採用内々定/試用期間
第12章 教育訓練
 教育訓練の概要と背景/教育訓練を命じる権利/教育訓練を受ける権利
第13章 昇進・昇格・降格
 人事考課(査定)/昇進・昇格・昇級/降格
第14章 配転・出向・転籍
 配転/出向・転籍
第15章 休職
 意義/法的規則
第16章 企業組織の変動
 合併/事業譲渡/会社分割/会社の解散
第17章 懲戒
 服務規律と「企業秩序」論/懲戒の意義と根拠/懲戒権の法的規制の枠組み/懲戒の種類/懲戒の事由
第18章 賃金
 賃金の形態と法制度/賃金請求権/賃金の法規制
第19章 労働時間
 労働時間規制の意義と展開/労働時間制度の基本的枠組み/労働時間制度の特則――労働時間の柔軟化
第20章 年次有給休暇
 年次有給休暇制度の意義と展開/年次有給休暇の権利の構造/年休権の発生/年休の時期の特定/年休の使途/年休取得に対する不利益取扱いと年休取得の妨害/年休権の消滅
第21章 労働安全衛生
 労働安全衛生法制の経緯と展開/労働安全衛生法の基本枠組み・性格/安全衛生管理体制/危険・健康障害の防止措置/機械・有害物等に関する規制/労働者の就業にあたっての措置/健康の保持増進のための措置/規制の実施方法
第22章 労働災害の補償
 労災補償制度の経緯と展開/労災保険制度――労災保険法による給付/労働災害と損害賠償――労災民訴/労災上積み補償制度
第23章 年少者の保護
 年少者保護の経緯/労働契約の締結に関する規制/賃金・労働時間に関する規制/安全衛生に関する規制/帰郷旅費
第24章 女性の保護(母性保護)
 女性保護政策の経緯と目的/危険有害業務・坑内業務の就業制限/産前産後の保護/育児時間/生理日の休暇
第25章 育児・介護等の支援
 育児介護休業法の意義と展開/育児を行う労働者の支援/介護を行う労働者の支援/育児・介護支援措置を理由とする不利益取扱いの禁止/育児・介護に関するハラスメントの防止措置義務/育児・介護支援措置に関する紛争解決制度/次世代育成支援――次世代育成支援対策推進法
第26章 外国人雇用
 外国人労働者の受入れ政策/外国人労働者への労働法等の適用
第27章 障害者雇用
 障害者雇用政策の経緯と展開/障害者雇用促進法の目的と枠組み/障害者雇用の促進/障害者差別の禁止
第28章 知的財産・知的情報の保護
 職務発明等と労働者の権利/労働者の秘密保持義務と競業避止義務
第29章 労働関係の終了
 解雇/辞職と合意解約/当事者の消滅/労働契約終了後の権利義務
第30章 高齢者・若者雇用
 高齢者雇用/若者雇用

第3編 集団的労働関係法
第31章 労働組合
 労働組合法制の経緯と枠組み/労働組合の類型と実態/労働組合の意義と要件/組合自治と法的規制/組合への加入・脱退・組織強制/労働組合の統制権/労働組合の組織の変動
第32章 団体交渉
 団体交渉の意義と機能/団体交渉の主体――「当事者」と「担当者」/団体交渉義務/団体交渉拒否の救済
第33章 団体行動
 団体行動の法的保護の枠組み/団体行動の正当性/正当性のない団体行動と法的責任/争議行為と賃金/使用者の争議対抗行為
第34章 不当労働行為
 不当労働行為制度の沿革と目的/不当労働行為の成立要件/不当労働行為の救済

第4編 労働市場法
第35章 雇用仲介事業規制
 雇用仲介事業規制の趣旨と経緯/職業紹介事業の規制/労働者の募集の規制/労働者供給事業の規制
第36章 雇用保険制度
 制度の背景と展開/制度の基本的枠組み/失業等給付/雇用保険二事業
第37章 職業能力開発・求職者支援
 背景と経緯/職業能力開発――職業能力開発促進法/求職者支援制度――求職者支援法
第38章 特定分野の雇用促進政策
 高年齢者の雇用促進――高年齢者雇用安定法/障害者の雇用促進――障害者雇用促進法/特定地域の雇用開発促進――地域雇用開発促進法/生活困窮者の自立支援――生活困窮者自立支援法/若者の雇用促進――若者雇用促進法

第5編 国際的労働関係法
第39章 適用法規と裁判管轄
 適用法規の決定/国際裁判管轄
第40章 国際労働基準
 国連条約/ILO条約

第6編 労働紛争解決法
第41章 行政による紛争解決
 企業内での紛争解決の意義と限界/行政による紛争解決制度の概要と経緯/都道府県労働局長による個別労働紛争の解決促進/労働委員会による紛争解決
第42章 裁判所による紛争解決
 裁判所による紛争解決制度の概要と経緯/労働審判/民事通常訴訟/保全訴訟/少額訴訟/民事調停

 

 

 

 

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