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2019年10月22日 (火)

これはパワハラ?

昨日の労政審雇環分科会に、例のパワハラの指針案が提示されたということで、いろいろと批判もあるようですが、逆にではどこに線引きすればいいのかと聞かれれば、おそらく組織人であればだれもが頭を抱える面があるように思われます。

https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/000559314.pdf

そのパワハラに該当すると考えられる例、該当しないと考えられる例というのを見てみましょう。結構長いリストです。

<暴行・傷害(身体的な攻撃)>

(該当すると考えられる例) ・ 殴打、足蹴りを行うこと。 ・ 怪我をしかねない物を投げつけること。

(該当しないと考えられる例) ・ 誤ってぶつかる、物をぶつけてしまう等により怪我をさせること。  

<脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)>

(該当すると考えられる例) ・ 人格を否定するような発言をすること。(例えば、相手の性的指向・ 性自認に関する侮辱的な発言をすることを含む。) ・ 業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り 返し行うこと。 ・ 他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行う こと。 ・ 相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相 手を含む複数の労働者宛てに送信すること。

(該当しないと考えられる例) ・ 遅刻や服装の乱れなど社会的ルールやマナーを欠いた言動・行動が 見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して強く注 意をすること。 ・ その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行っ た労働者に対して、強く注意をすること。

<隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)>

(該当すると考えられる例) ・ 自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、 別室に隔離したり、自宅研修させたりすること。 ・ 一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させるこ と。

(該当しないと考えられる例) ・ 新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に個室で研 修等の教育を実施すること。 ・ 処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させる前に、個室で 必要な研修を受けさせること。

<業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大 な要求)>

(該当すると考えられる例) ・ 長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関 係のない作業を命ずること。 ・ 新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレ ベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責す ること。 ・ 労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせ ること。

(該当しないと考えられる例) ・ 労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せ ること。 ・ 業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時 よりも一定程度多い業務の処理を任せること。

<業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じるこ とや仕事を与えないこと(過小な要求)>

(該当すると考えられる例) ・ 管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行 わせること。 ・ 気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないこ と。

(該当しないと考えられる例) ・ 経営上の理由により、一時的に、能力に見合わない簡易な業務に就 かせること。 ・ 労働者の能力に応じて、業務内容や業務量を軽減すること。

<私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)>

(該当すると考えられる例) ・ 労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたり すること。 ・ 労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報に ついて、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること。

(該当しないと考えられる例) ・ 労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒア リングを行うこと。 ・ 労働者の了解を得て、当該労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、必要な範囲で人事労務部門の担 当者に伝達し、配慮を促すこと。

さっそく日本労働弁護団は批判する声明を出していますが、

http://roudou-bengodan.org/topics/8622/

個々の項目の是非適否については議論のあるところとして、「状況によってはパワハラに該当する可能性があるものを「該当しない例」とすることは、誤解・悪用を招きかねず、絶対に避けるべきである。「該当しない例」の記載は不要である」とまで言い切ってしまっていいのかは、少なくとも組織を管理するサイドからすると疑問を感じるところでしょう。セクハラのように、そもそも(ごく一部の特殊な企業を除けば)セクシュアルな発言や環境が事業運営に何ら必然的でないようなものであればともかく、パワハラの場合はその性質上業務上の不可欠な指揮命令と連続的でありうる領域であり、それゆえにその区別、線引きがもとめられているという状況があるわけです。

ただそれにも程度問題があり、事業体の本来業務にかかわるような「その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行っ た労働者に対して、強く注意をすること」と、必ずしもそうではなくある意味個人の自由にも関わりうるような「遅刻や服装の乱れなど社会的ルールやマナーを欠いた言動・行動が 見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して強く注 意をすること」とを単純に同列においていいのかという問題はありうるでしょう。

でも、弁護士事務所だって労働組合だって、「その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行っ た労働者に対して、強く注意を」したらパワハラだと訴えられたら、「ふざけんな、何言ってんだ!」という反応になりそうですけど。およそ人間を集めて何らかの事業を遂行する組織体においては目を背けて済ますわけにはいかない側面はあるように思います。

後ろの方には、「事業主が自らの雇用する労働者以外の者に対する言動に関し行うことが望 ましい取組」として、「他の事業主が雇用する労働者及び求職者」や「個人事業主、インターンシップを行っている者」などに対する言動についても必要な注意を払うよう配慮せよとか、「他の事業主の雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客 等からの著しい迷惑行為に関し行うことが望ましい取組」として「取引先等の他の事業主が雇用する労働者又は他の事業主からのパワーハラスメントや顧 客等からの著しい迷惑行為(暴行、脅迫、ひどい暴言、著しく不当な要求等) により、その雇用する労働者が就業環境を害されることのないよう」にせよといった注目すべき項目もあります。後者はいわゆるカスタマーハラスメントですが、正直気休め程度の記述ではありますが、現時点では法律の射程外であることもあり、まず第一歩としてはこんなところなのかもしれません。

 

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