『令和元年版労働経済の分析』
『令和元年版労働経済の分析』いわゆる労働経済白書が本日公表されました。
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/19/dl/19-1.pdf
副題は「人手不足の下での「働き方」をめぐる課題について」ですが、第Ⅱ部は人手不足、働きやすさ、働きがいという3題話になっています。
働きやすさと働きがいの関係について、本白書はこう整理しています。
「働きやすさ」と「働きがい」は、いずれも、働く人の視点からの企業や職場に対する評価であり、企業収益や生産性などの企業経営上の視点からの評価とは異なる。また「働きやすい」職場と「働きがい」のある職場には、職場環境や雇用管理等で共通する点も多く、両者を実現している企業も多く存在するように密接に関連している概念であり「働きやすさと働きがい」とまとめて用いられることもある一方で、「働きやすさ」と「働きがい」は、それぞれ特徴のある概念であり、いずれも一般的にその違いは認識されている。
具体的には、「働きやすさ」は、働く人が安心して快適に働ける職場環境を示す概念であり、現在の職場における公正さや、将来的なライフイベントに応じた働き方の選択の可能性につながっていくものである。労働時間や休暇、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)などに関連する雇用管理と比較的関係が深いものと考えられる。一方で、「働きがい」は、働く人が生き生きと誇りをもって熱心に働ける職場環境を示す概念であり、現在の職場における達成感や将来的な仕事の上での成長可能性につながっていくものである。目標設定、仕事の進め方、進捗管理等の人材マネジメントと比較的関係性が深いといえる。
両者の関係は、「働きがい」は働く人の仕事への積極的な関わりを促す要因(プッシュ要因)である一方で、「働きやすさ」はそれを疎外する要因(プル要因)を取り除くものであると考えられ、いわば、「働きがい」は「働きやすさ」を前提として成り立つものであり、職場の「働きやすさ」なくして、持続的な「働きがい」は実現しないものであるといえる。
また、企業の立場で見れば、働きやすい職場環境の整備は、女性や高齢者のみならず、あらゆる人材の確保のためにも重要である。それに加え、働きがいのある職場では、働く人はより積極的に仕事にコミットするため、働く意欲やモチベーションが高まる可能性が高い。このような職場では、働く人にとっては自己充足感や達成感が得られるとともに、企業から見れば、企業の人的資本が効率的に活用されている状態ともいえ、生産性やパフォーマンスにもポジティブな影響が出ることが想定される。また、雇用の流動化が進む中で、自分で働く場所を選択する可能性が高くなっている環境下では、「働きやすさ」や「働きがい」といった働く人の視点からの評価を高めることは、当面の人手不足の解消のみならず、中長期的な企業の基幹となる人材を確保し、その能力を十分に発揮してもらうために重要である。
なお、「働きやすさ」や「働きがい」を基軸とした経営改革をより実効的に行うためには、企業側が一方的に取り組むのではなく、企業と従業員の双方が職場の現状や課題を共有し、共に創り上げていくことが重要であり、そのためには労使間の相互コミュニケーションの活性化が不可欠であることに留意が必要である。
ちなみに、本白書第Ⅱ部では、JILPTの人手不足等をめぐる現状と働き方等に関する調査(企業調査・労働者調査)が全面的に使われています。
https://www.jil.go.jp/press/documents/20190918.pdf
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