馬欣欣・岩崎一郎「中国共産党員資格と賃金プレミアム」@『アジア経済』2019年9月号
ジェトロ・アジア経済研究所が出している『アジア経済』2019年9月号に、馬欣欣・岩崎一郎「中国共産党員資格と賃金プレミアム」という論文が載っていて、なかなか面白いです。いや、労働経済学の論文なので、わたしには分析の要のところはよく理解できていないのですが、その問題意識というか、こういうテーマを追求しようという意図が面白いです。
これは、経済は極めて市場経済化しながら政治は共産党一党独裁を維持する中国ならではの問題設定で、欧米市場経済諸国でも、旧ソ連型共産圏でもこういう問題関心というのはありえなかったでしょうね。
上述のように、私には分析の詳細を紹介する能力はないので、結論だけ紹介しておくと、まず党員資格の正の賃金効果の存在が強く示唆されるが、国有企業と民間企業の間にはその効果にめざましい差異が存在し、近年になればなるほど党員効果の統計的有意性が低下する傾向にあるということです。
・・・漸進主義的改革路線を堅持する中国では、政治と経済の分離が不十分であるため、国内企業の経営活動が、共産党組織に依然として強く従属している。党員資格賃金効果の真の値が正であるという本稿のメタ分析結果は、その証左の一つである。しかし、推定結果の統計的有意性に見られる国有企業と民間企業の非対称性や時系列的低下傾向は、市場経済化の進展が、経済的合理性という観点から問題含みの党・企業関係を、徐々にではあるが、望ましい姿に導いている可能性を暗示している。・・・・
ちなみに、馬欣欣さんはかつてJILPTでアシスタントフェローをしておられましたが、今は富山大学におられるんですね。
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