フォト
2024年10月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
無料ブログはココログ

« 副業・兼業の場合の労働時間管理@WEB労政時報 | トップページ | 『季刊労働法』266号(2019年秋号) »

2019年9月 4日 (水)

呉学殊さんの近刊著の紹介(JILPTリサーチ・アイ)

Oh_h JILPTのホームページのリサーチ・アイで、労使関係部門の呉学殊さんが今月下旬に刊行予定の『企業組織再編の実像─労使関係の最前線』を自ら紹介しています。

https://www.jil.go.jp/researcheye/bn/033_190903.html

今月下旬に上記のタイトルで研究双書を刊行する。1991年に韓国から日本へ留学、また、1997年にJILPTに就職して今日に至るまで多様なテーマについての調査・研究を進めてきた。いずれも大変意義深いと思うが、今回の研究双書は特にそうだと思っている。・・・・

いままでの人脈を総動員して22事例を確保し、調査することができた。分割、合併、譲渡等の企業組織再編のプロセスについては、実は当事者が調査に協力したくない事柄でもあるが、快くご協力頂いた皆さんにはこの場を借りて心より感謝申し上げる。・・・・

ところが、この本に載っているのはそのすべてではありません。

・・・話を伺った22事例全部について調査内容を取りまとめたかったが、こちらのマンパワーや時間的制約、また、協力先の事情などにより、最終的に7事例の実像について執筆した。それ以外にもう1つの事例も執筆したものの、協力先から公にしないでほしいとの要請があり、今回、研究双書に一緒に載せることができなかった。実は、その事例は他の労使にとって最も参考になる良い内容だったので大変残念である。・・・

実は、この手の話は、とりわけ労使関係の研究者からよく聞きます。一昨年労働関係図書優秀賞を受賞した首藤若菜さんの『グローバル化のなかの労使関係  自動車産業の国際的再編への戦略 』(ミネルヴァ書房)も、本人によると、いちばん面白くて世の中に知らせたかった事例が、関係者の同意が得られず載せられなかったということで、ただでさえ先細り傾向の労使関係研究なのに、いちばんおいしいところが世に出せない状況というのはなかなか辛いものがありますね。

さて、いうまでもなく、詳しくは今月末刊行の本を読んでいただくべきものですが、呉さん本人がまとめたその要点は次のようなことです。

今回、企業組織再編7事例の中で、分割が6事例、合併1事例(分割と併行)、譲渡1事例であった。正直、再編の実像は調査をしてみないとわからないとの思いである。事例ごとに再編の環境やプロセス、また、労使関係においてそれぞれ特徴があった。例えば、再編の主要背景・形態についてみてみると、次のように7つのタイプに分けられる。

第1に、分割部門の業績悪化により、分割会社がそれを抱えることが難しく、他社同事業部門との合併を通じて、分割部門の維持・発展を図るタイプである(「分割部門業績悪化・他社同業部門との統合再編」)。一番典型的にはG事例である。2003年、電機大手2社が半導体部門を分割して新設会社に統合したのである。また、2010年、同新設会社の他社半導体子会社との合併も同じ背景といえる。

第2に、分割部門がより成長していくために、他社との統合を通じて規模の経済性を高める分割・統合である(「分割部門専業化・他社同業部門との統合再編」)。典型的なのはD事例である。世界の強豪と伍していくためには、2つの会社が火力発電部門を持ち続けるよりは、それを分割して新設会社に統合したほうがよいと判断した結果である。C事例のA事業、C事業の分割もこのタイプに当たるが、いずれも政府関連機関からの支援を得て、更なる成長を目指すために分割したのである。

第3に、分割部門の収益性が高いが、選択と集中の経営戦略を進めていくために、同部門の分割益を活用するために行う分割である(「分割益活用・選択事業集中戦略再編」)。F事例とC事例のB事業がこれに当たる。分割売却益は、前者の場合、経営の負担となってきた有利子負債の返済とともに集中事業への更なる投資に有効に活用された。

第4に、分割部門と他の異種部門子会社との統合を通じて、統合のシナジー効果を図るための分割である(「分割部門と異種部門子会社との統合シナジー効果再編」)。A事例がこれに当たる。A事例では、営業部門を分割して、エンジニアリングや保守サービスの子会社との統合により、顧客へのソリューション・サービスを効果・効率的に行うために再編が行われた。

第5に、分割部門と同種部門子会社との統合を通じて、統合のシナジー効果を図るための分割である(「分割部門と同種部門子会社との統合シナジー効果再編」)。E事例がこれに当たる。E事例では、4つの製造部門(工場)を分割し製造専門子会社に統合させて、高い品質・高い生産性を実現しようしたのである。

第6に、不採算部門を切り離して同業他社に譲渡するタイプ(「不採算部門切り離し同業他社への譲渡再編」)であるが、これにはB事例が当たる。半導体後工程を担当するJI社は、経営が厳しくいくつかの工場を閉鎖する等の対策を講じても改善せず、S工場を同業他社のB社に譲渡した。

こうした企業組織再編は、企業グループ内での再編とグループ外のものに分かれる。再編元も先も特定の企業グループ(親会社が子会社株の100%保有)に属しているのは、A事例、B事例とE事例である。再編先の資本金50%以上を持ち、再編元が再編先企業の主導権を持ち、当該企業の連携会計対象としているのはD事例である。分割会社が、分割当初、分割統合会社株の50%以上を保有していたが、その持ち分が低下して連結会計対象外となっているのがG事例である。その他の事例は、再編当初より再編先企業の株を50%未満保有するかまったく保有しない形であり、企業グループ外の再編に当たる。

各事例に特徴があるのは再編の背景・形態だけではなく、労使関係もしかりである。具体的な内容は研究双書をご覧頂きたい。

 

 

 

 

« 副業・兼業の場合の労働時間管理@WEB労政時報 | トップページ | 『季刊労働法』266号(2019年秋号) »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 副業・兼業の場合の労働時間管理@WEB労政時報 | トップページ | 『季刊労働法』266号(2019年秋号) »