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2019年9月17日 (火)

『季刊労働法』2019年秋号

483_o 『季刊労働法』266号(2019年秋号)が刊行されました。

https://www.roudou-kk.co.jp/books/quarterly/7137/

特集は今注目の「医師・教員の働き方改革 」。

働き方改革において,医師については,他職種と比較しても抜きんでた長時間労働の実態があり,医師の働き方改革に関する検討会で独立して議論が進められてきました。3月に上記検討会における報告書がまとめられ,2024年度から勤務医に適用される残業時間の上限規制の取り組みや,医師の負担軽減策が盛り込まれました。今号では医師,そして,同時期にやはり独立して議論されていた教員の「働き方改革」について考えます。

ということで、こういうラインナップになっています。

◎特集 医師・教員の働き方改革
医師の働き方改革と今後の労働時間規制 早稲田大学教授 島田 陽一
医師も人間らしく働ける社会に向けて,着実な取り組みを ~「医師の働き方改革」,労働組合の立場から~ 日本労働組合総連合会総合労働局長 村上 陽子
医師の立場からみた働き方改革 日本医師会副会長/日本医師会女性医師支援センター長 今村 聡
医師の働き方改革 ~医療を未来につなぐ取組~ 厚生労働省労働基準局労働条件政策課医療労働企画官/同医政局医療経営支援課医療勤務環境改善推進室長 安里 賀奈子
公立学校教員の労働時間規制に関する検討 金沢大学准教授 早津 裕貴
労働組合の立場から見た教員の働き方改革 みらいの教育プロジェクト呼びかけ人代表(元日教組組織労働局長) 藤川 伸治
学校における働き方改革の推進について 文部科学省初等中等教育局財務課課長補佐 鞠子 雄志

どちらも「せんせい」と呼ばれる仕事ですが、その聖職としてのイメージがその労働条件悪化を加速させてしまうという矛盾の中で苦しんでいるという意味では共通する面があるとともに、教員の場合、なまじ公立学校教員の公務員法上の妙な扱いが事態をこじらせているという特殊性もあり、なかなか複雑怪奇な世界ではあります。

私も議論の動向を追いかけつつ、小文をちょこちょこ書いていた分野ですが、今回の特集記事の中で面白かったのはやはり藤川伸治さんの論文です。私も少し調べたことがありますが、給特法ができるまでの経緯や、その後の文部省と日教組の交渉経緯、さらには学校5日制との関係など、複雑怪奇な歴史の一端が垣間見えます。

私の連載「労働法の立法学」は、今回は「集団的労働紛争解決システムの1世紀」を取り上げました。

 本連載の第37回*1で「個別労働紛争解決システムの法政策」を取り上げましたが、1990年代に個別労働紛争解決システムをめぐる議論が湧き上がるまでは、ただ「労働紛争」といえば集団的な労働紛争-労働争議-をイメージするのが常識でした。今日では、たとえば労働局への相談件数が毎年100万件を超えるなど個別労働紛争が圧倒的多数を占め、労働争議は300件台、しかもその多くは争議行為を伴わないもので、争議行為を伴う労働争議は年間50件台という、ほとんど絶滅危惧種のような状態です。しかしかつては、頻発する労働争議が国政の最重要課題であった時代もあったのです。今回は今や労働法政策の表舞台から消え去って久しい集団的労働紛争解決システムの歴史を振り返ってみたいと思います。

1 労働争議の禁圧時代
2 治安警察法第17条問題*2
3 労働争議調停法*1
4 労働争議調停法の運用
5 労働争議調停法改正の試み
6 戦時労使関係システムへの構想*1
7 戦時体制下の労働争議法制
8 敗戦直後の労働争議調停政策
9 1945年労働組合法*1
10 労働関係調整法*1
11 1948年公労法
12 1949年労使関係法改正
13 1952年労使関係法改正*2
14 スト規制法*1
15 公労法のその後
16 労働争議の減少とその個別紛争化

・・・・本連載の第37回「個別労働紛争解決システムの法政策」で見たように、1990年代後半には政府や労使団体から個別労働紛争解決システムの整備を求める意見が出され、2001年の個別労働紛争解決促進法により、都道府県労働局における斡旋の導入とともに、都道府県労働委員会も自治体の自治事務として個別労働紛争の斡旋ができるようになりました。その後、2004年には裁判所における個別労働紛争解決システムとして労働審判制も設けられました。これはまさに上述のような機能を果たす個別労働紛争解決システムを、「労働争議」の扮装を身にまとうことなく、正面から設けようという法政策でした。
 にもかかわらず、それ以来約20年にわたって、実質的個別労働紛争である合同労組事件や駆込み訴え事件の割合が増えているのは、個別労働紛争としての解決よりも労働争議としての解決の方になにがしかのメリットがあるからでしょう。とりわけ、当の労働委員会の個別紛争斡旋事件数が300件前後で推移していることを考えると、この点は重要です。おそらくそれは、合同労組やコミュニティユニオンが持つ個別労働者の利益擁護機能が、当事者には高く評価されていることの現れでしょう。
 しかしながら、その「機能」は、実際には「労働争議」と呼び得ないものを労働争議と呼ぶことによって達成されているものであり、法の本来の趣旨とはかけ離れた運用の上に成り立っていることもまた確かです。そして、実質的には個別労働紛争でしかないものばかりを「労働争議」として法の手続に載せ続けることによって、本来の集団的労使関係の存在感が我々の社会からますます失われていってしまうという効果もじわじわと働いているようにも思われます。この問題に答えることは容易ではありません。

 

 

 

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