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2019年8月25日 (日)

個別紛争解決型ユニオンと退職代行業者の間

連合東京の今野衛さんがこういうツイートをしています。

https://twitter.com/funkykong555/status/1165249736011444225

呆れてしまう!
退職代行サービス会社が一斉に労組に組織変更している。
退職代行サラバ(SARABA)が労働組合にして、退職代行さらばユニオン発足だって!

会社との交渉権を確保するために労組法を悪用している。

29800円で退職代行とあるけど、これこそ非弁活動だろ!

退職代行業者が非弁活動だといわれないために、労働組合法により団体交渉権を有する労働組合になっているのはおかしいという指摘です。

これは、その点では確かにそうなのですが、それをさらに深く突っ込むと、いわゆる合同労組とかコミュニティ・ユニオンと言われるタイプの労働組合の、駆け込み訴えといわれるような事実上ほとんど個別労働紛争解決型の活動自体が、どこまで本来労働組合法が想定している労働組合としての活動なのかという古くて新しい問題にも関わってきます。

131039145988913400963 これは、10年前に出した『新しい労働社会』でもちょっと触れたことがありますが、今日まであまりきちんと議論されているとは言えません。

(コラム)労働NGOとしてのコミュニティユニオン
 以上述べてきたような職場の代表組織としての労働組合の性格を強調する考え方に対して、近年強く主張されているのは自発的結社としての労働組合の性格をより強調する考え方です。実は終戦直後から日本的な企業別組合を脱却して産業別・職業別組合を構築すべきという議論が繰り返し行われてきましたが、日本型雇用システムの支柱としての企業別組合が揺らぐことはありませんでした。そこで近年の議論は、個人加盟のコミュニティユニオンに期待を寄せるようになっています。
 コミュニティユニオンとは誰でも一人でもメンバーになれる企業外の労働組合で、未組織の中小企業労働者をはじめ、パートタイマーや派遣労働者、あるいは管理職といった企業別組合から排除されてきた労働者が多く参加しています。その主たる活動はこういった労働者に関わる個別紛争の処理です。
 もともと日本の労働法制は個別紛争処理のための仕組みを用意しておらず、不当な取扱いを受けた労働者は費用と時間のかかる民事訴訟をするか、泣き寝入りをするかしか道はありませんでした。近年、個別労働紛争解決促進法に基づき、都道府県労働局で労働相談を行い、必要に応じて労働局長の助言指導や斡旋委員による斡旋が行われるようになりましたし、司法部門においても労働審判法が制定され、裁判官と労使出身の審判員からなる労働審判が利用されるようになりましたが、それまでは公的なルートはほとんどありませんでした。
 そこで、本来は集団的な利益紛争の解決のために設けられた労働組合法や労働関係調整法に基づく法的枠組みが、個別的な権利紛争の解決のために活用されてきたのです。現行法上、労働組合には団体交渉権が保障され、正当な理由なく団体交渉を拒否すると不当労働行為になります。そこで、解雇や雇止め、労働条件の切り下げやいじめ・嫌がらせといった個別事案を抱える労働者が、企業外のコミュニティユニオンに駆け込み、その組合員となって使用者に団体交渉を申し入れると、複数組合平等主義に立つ現行法の下では、使用者はその団体交渉に応じなければなりません。拒否すると不当労働行為として労働委員会から団交応諾命令が発せられます。
 この形式的には集団的ですが実質的には個別的な「団体交渉」は、個別紛争を解決する上でかなり有効に機能してきました。近年の研究では、団体交渉を申し入れた事件の約8割が自主解決により終結しています。その意味で、コミュニティユニオンが社会的に存在意義の大きい団体であることは間違いありません。
 しかしながら、制度の本来の趣旨とあまりにもかけ離れてしまった実態をそのままにしていいのかという問題はあります。これは、やり方によってはせっかく確立してきた純粋民間ベースの個別紛争処理システムに致命的な打撃を与えかねないだけに、慎重な対応が求められるところですが、やはり個別は個別、集団は集団という整理を付けていく必要があるのではないでしょうか。少なくとも、現行集団的労使関係法制が主として個別紛争解決のために使われているという現状は、本来の集団的労使関係法制の再構築を妨げている面があるように思われます。
 現実にコミュニティユニオンが果たしている個別紛争処理の機能を集団的労使関係法制ではなく個別労使関係法制の領域において維持しうるような、適切な立法政策が求められます。それは、端的にいって個別労働者の権利擁護のための労働NGOというべきものでしょう。もちろん、それは労働組合法上の多様な労働組合の機能の一つとして規定してもいいのですが、その労働NGOが依頼者たる個別労働者のための代理人として使用者と「交渉」しうるような法制度を考案していく必要があるように思われます。
 

 

 

 

 

 

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