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2019年8月 2日 (金)

兵藤釗『戦後史を生きる』

9784886838575 兵藤釗『戦後史を生きる 労働問題研究私史』(同時代社)を、聞き手の1人である野村正實さんよりお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.doujidaisya.co.jp/book/b456806.html

 「兵藤さんは労働問題研究の最盛期を作り上げた中心的研究者です。兵藤さんの研究の歩みを理解することは、とりもなおさず労働問題研究とは何であるのか、何であったのか、を理解することにつながります」野村正實
「兵藤先生が私たちのどのような質問に対しても極めて率直に答えてくださったことです。研究についてはもちろんですが、思想形成や生き方そのものについても然りでした。その中には、東大闘争の際の行動や東大定年後に転任された埼玉大学で発生した学長選挙やり直し事件への対応等、先生が関与された事件の話も含まれています」上井喜彦
戦後生まれの研究者二人に、自らの思考の軌跡と時代精神を語る。

兵藤さんは、東大経済学部で「社会政策」を受け継ぐ「労働経済」担当教授として大河内さん、隅谷さんの後任、佐口さんの前任になります。なので、それこそその系列から出た稲葉振一郎さんとか金子良事さんあたりがちゃんとした書評を書いた方がいいでしょうから、私はもっぱら目についたつまらないトリビアだけ。

その前に、私は法学部時代、経済学部では「労働経済」だけど法学部ではなお「社会政策」と称していた兵藤さんの講義を半年聴いたことがあります。中身はすべて忘れましたが、たぶん脳みその奥底には何か沈殿するものがあったのかも知れません。拙著『日本の雇用と労働法』刊行時に金子良事さんとやりとりしたときに、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/10/post-9e2c.html (金子良事さんの再リプライ)

>チャート式が嫌いというのは、それはそうなんですが、別に不要であるという意味ではありません。ただ、今回の社会政策・労働問題チャート式への不満は内容がやや古いということです。

それはまったくその通りです。大河内一男まではいきませんが、私が学生時代に聴いた社会政策の講義は兵藤釗先生。頭の中の基本枠組みは『日本における労資関係の展開』で、その上に最近の菅山真次さんなどが乗っかってるだけですから。

ただ、それこそ「教科書を書くと言って書かない某S先生」に責任を押しつけるんじゃなく、kousyouさんの「金子さんの労働史を整理した本読んでみたいなぁ」という励ましのお便りに是非応えていただきたいところです。

てな台詞が出てきたりしてます。

さて、トリビアその1、敗戦直後の新制挙母高校時代、後に上坂冬子となる人と「エス」の関係の仲良しの女生徒から付け文をもらったと。上坂冬子といえば、拙著『働く女子の運命』に出てくる狂言回しの1人です。拙著ではトヨタ自動車の女子事務員として経験した争議の話で登場しますが、同じ三河は挙母の地で兵藤さんとかすっていたんですね。

トリビアその2、駒場の教養学部自治会で、香山健一委員長の下で兵藤さんが書記長をやっていたころ、その香山さんが東女(とんじょ)の自治会委員長に宛てたラブレターを見せて、「こういうのを出そうと思うのだけれど、どうだろうか」、そこには、「俺はレーニン、お前はクルプスカヤ」と書いてあったとか。ふむ、当時の学生気質の片鱗が垣間見えます。

トリビアその3、もう助教授になって講義しているころ、

・・・僕の講義はプリントが東大出版会の教材部から出ていたのですが、イギリス留学から帰ってきた年の講義プリントを見ると、僕が喋っていないことが沢山書いてある。そのプリントの最初に、これは経済学部学生のOさんのノートを素にして作成したものですと印刷してあるんです。

上井:大澤真理ですね。

そうでした。大澤君はG.D.H.コール『イギリス労働運動史』を主たる材料とし、他のものも使って、僕の講義が簡略に過ぎるところを勝手に書き加えているんです。・・・

これはすごい話ですね。いいことなのかどうなのか、例えば丸山真男講義録として出版されているのがこの調子であったら、少なくとも丸山著作としては怖くて引用できないでしょうけど、学内教材であるかぎりはいいのか。

トリビアその4、東大退官後、管理職にならない約束で埼玉大学に来たけど、学長選挙で当選した人がスキャンダルで引きずり下ろされ、その代役として学長になってしまったという話。このあたりの記述はなかなかどろどろしていますね。ちなみに、実はこのころ、当時埼玉大学にいた故小笠原浩一さんに呼ばれて、同大学でシンポジウムに出席し(当時連合総研にいた鈴木不二一さん、日経連にいた讃井暢子さんも)、その夜、兵藤学長とご一緒したことがあります。

以上は、本書の中のどうでもいいところであって、労働問題研究者としての道筋は是非本書の記述をじっくりとお読みください。

(参考)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/post-4256.html (春の叙勲労働編)

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