『世界』9月号の労働組合鼎談に拙著がちょびっと
岩波書店の『世界』9月号は、「なぜ賃金が上がらないのか」という、どこかで聞いたような特集ですが、
https://www.iwanami.co.jp/book/b472668.html
その中で面白いのは河添誠、本田一成、鈴木剛という3人による「労働組合の意義はどこにあるのか」という鼎談です。
本田さんの本は本ブログでも結構数多く紹介してきましたが、この鼎談でもなかなか鋭く論じています。
・・・雇用になると、労使が対峙するのですが、使用者はすぐに労働者から奪おうとします。ただし、日本では奪おうとするものが正規と非正規でまるで違う。正規に対しては、囲い込んで長く勤めてもらう中で何かを奪おうとするので、的は労働時間になります。しかし非正規の場合は短時間であったり臨時性があったりと労働時間の的が小さい。そのため直接に賃金を狙うのです。この別れ具合こそが、日本の労働者の二極分化そのものだと考えています。そして、この「労働者の宿命」に対抗できるのは労働組合しかありません。・・・
このあと議論が進み、河添さんが個人加盟ユニオンについて語る中で、その財政面の苦しさを語り、そしてやや唐突に私の名前が出てきます。
・・・濱口桂一郎さんが個人加盟ユニオンではある種の労働NPOだと指摘しています。労働組合という法的な手段をとって、問題を解決している組織、そういう風に考えればいいと思います。それをナショナルセンターが、あるいは社会的に支援する仕組みができればいい。・・・
これは拙著『新しい労働社会』の第4章での議論ですね。これを受ける形で、本田さんもこう語ります。
・・・ひとりひとりを救う労働運動をしている人たちは、その活動のために使えるお金がない。一方で非正規労働者は、お金だけでなく闘う時間も気力もなくなるほどいっぱいいっぱいで生きているし、かなり心の折れた人も多い。社会の中で自分の評価を下げ続けてしまうような状態の人たち、そういう人たちが労働運動をやっているんだということに思い至らない。本当は人生の尊厳にかかわる重大な問題なのです。だからこそ、資源のある労働組合や産別組織、ナショナルセンターは再配分を考えてほしい。・・・
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