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2019年8月19日 (月)

梶谷懐・高口 康太『幸福な監視国家・中国』

000000885952019_01_234 梶谷懐・高口 康太『幸福な監視国家・中国』(NHK出版新書)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000885952019.html

習近平体制下で、人々が政府・大企業へと個人情報・行動記録を自ら提供するなど、AI・アルゴリズムを用いた統治が進む「幸福な監視国家」への道をひた走っているかに見える中国。
セサミ・クレジットから新疆ウイグル問題まで、果たしていま何が起きているのか!?
気鋭の経済学者とジャーナリストが多角的に掘り下げる! 

第4次産業革命、AI、IoT、ビッグデータ、シェアリングエコノミー、ギグエコノミー等々という話題は世界共通に燃え上がっていますが、その中でも中国は、共産党一党独裁体制を堅持しつつ、情報革命の最先端を突っ走っているという点で、本書の中の表現を使えば「異形」の印象を与えています。本書は、その印象を出発点としつつ、むしろ欧米や日本でも進行しつつある現象との共通点に着目する形で、この問題に深く突っ込んでいる本です。少なくとも、欧米や日本のこれらがユートピアで、中国のこれらがディストピアというような認識は間違いだと。中国で起こっていることが問題だとしたら、それは欧米や日本でもそうだし、そもそも中国では何の制約もなく進みつつある監視社会化も、根っこをたどれば現代世界共通の功利主義から来ているという分析は犀利です。

第1章 中国はユートピアか、ディストピアか
    間違いだらけの報道/専門家すら理解できていない
    「分散処理」と「集中処理」/テクノロジーへの信頼と「多幸感」
    未来像と現実のギャップがもたらす「認知的不協和」
    幸福を求め、監視を受け入れる人々
    中国の「監視社会化」をどう捉えるべきか

第2章 中国IT企業はいかにデータを支配したか
    「新・四大発明」とは何か/アリババはなぜアマゾンに勝てたのか
    中国型「EC」の特徴/ライブコマース、共同購入、社区EC
    スーパーアプリの破壊力/ギグエコノミーをめぐる賛否両論
    中国のギグエコノミー/「働き方」までも支配する巨大IT企業
    プライバシーと利便性/なぜ喜んでデータを差し出すのか

第3章 中国に出現した「お行儀のいい社会」
    急進する行政の電子化/質・量ともに進化する監視カメラ
    統治テクノロジーの輝かしい成果/監視カメラと香港デモ
    「社会信用システム」とは何か/取り組みが早かった「金融」分野
    「金融」分野に関する政府の思惑/トークンエコノミーと信用スコア
    「失信被執行人リスト」に載るとどうなるか
    「ハエの数は2匹を超えてはならない」
    「厳しい処罰」ではなく「緩やかな処罰」/紙の上だけのディストピアか
    道徳的信用スコアの実態/現時点ではメリットゼロ
    統治テクノロジーと監視社会をめぐる議論
    アーキテクチャによる行動の制限/「ナッジ」に導かれる市民たち
    幸福と自由のトレードオフ/中国の現状とその背景

第4章 民主化の熱はなぜ消えたのか
    中国の「検閲」とはどのようなものか/「ネット掲示板」から「微博」へ
    宜黄事件、烏坎事件から見た独裁政権の逆説
    習近平が放った「3本の矢」/検閲の存在を気づかせない「不可視化」
    摘発された側が摘発する側に/ネット世論監視システムとは

第5章 現代中国における「公」と「私」
    「監視社会化」する中国と市民社会/第三領域としての「市民社会」
    現代中国の「市民社会」に関する議論/投げかけられた未解決の問題
    「アジア」社会と市民社会論/「アジア社会」特有の問題
    「公論としての法」と「ルールとしての法」/公権力と社会の関係性
    2つの「民主」概念/「生民」による生存権の要求
    「監視社会」における「公」と「私」

第6章 幸福な監視国家のゆくえ
    功利主義と監視社会/心の二重過程理論と道徳的ジレンマ
    人類の進化と倫理観/人工知能に道徳的判断ができるか
    道具的合理性とメタ合理性/アルゴリズムにもとづく「もう1つの公共性」
    「アルゴリズム的公共性」とGDPR
    人権保護の観点から検討すべき問題
    儒教的道徳と「社会信用システム」/「徳」による社会秩序の形成
    可視化される「人民の意思」/テクノロジーの進歩と近代的価値観の揺らぎ
    中国化する世界?

第7章 道具的合理性が暴走するとき
    新疆ウイグル自治区と再教育キャンプ/問題の背景
    脅かされる民族のアイデンティティ/低賃金での単純労働
    パターナリズムと監視体制/道具的合理性の暴走
    テクノロジーによる独裁は続くのか
    士大夫たちのハイパー・パノプティコン
    日本でも起きうる可能性/意味を与えるのは人間であり社会
    
    おわりに
    
    主な参考文献  

ただ、とりわけ第5章以降の梶谷さんの記述は、人間や社会のあり方の深奥部に迫る議論を展開していて大変興味深かったのですが、やはり個人情報と言うことに何らの制約もない中国と、情報社会のあり方を論じるときに必ず最重要事項として個人情報の問題が意識される欧米(とりわけヨーロッパ諸国)との間には、それこそ文化的としか言いようのない深い深淵がありそうな気もします。

いずれにしても、これはこの夏絶対に読まれなければならない本の一つです。

 

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