いやそれはパワハラじゃなくて不当労働行為なんだが
かつて本ブログで、なんでもかんでもハラスメントにしてしまう傾向を批判したことがありますが、
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/post-0136.html (妊娠を理由とする解雇の公表)
明日の新聞が「初のマタハラ公表」とか見出しを打ったら、「ハラスメントじゃないよ、解雇だよ」と言ってやりましょう。
なんでもハラスメントといえばいいわけじゃない。(星取表)
・産経新聞
http://www.sankei.com/economy/news/150904/ecn1509040014-n1.html (「妊婦はいらない」茨城の医院“マタハラ”で初の実名公表)
「マタハラ」だけで、「解雇」も出てこない。
・毎日新聞
http://mainichi.jp/select/news/20150905k0000m040028000c.html (マタハラ:職員解雇の事業所を初公表…厚労省)
一応「解雇」と明示しているけれど、なんで解雇が「ハラスメント」なんだ?という疑問はないよう。
・日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG04H5E_U5A900C1CR8000 (マタハラで初の事業者名公表 妊娠の職員解雇した病院 )
これも「解雇」と明記しながら疑問なく「マタハラ」。
・読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/national/20150904-OYT1T50118.html (「マタハラ」行った医院、厚労省が初の実名公表)
これも産経と同じく、ただの「マタハラ」で実名公表と。
・朝日新聞
http://www.asahi.com/articles/DA3S11948908.html (「妊娠で解雇」医院名初公表 是正勧告に従わず 厚労省)
ようやく、見出しに「マタハラ」と言わないのが出てきた。ただし、記事の最後にわざわざマタハラだと「解説」している。
こんどは、労働組合結成を理由とした解雇というれっきとした不当労働行為を捕まえて、パワハラだそうです。
https://mainichi.jp/articles/20190829/k00/00m/040/320000c (「労組結成直後、部長から草刈り係に異動はパワハラ」 53歳元社員の男性が提訴)
太陽光発電設備会社(神戸市中央区)の部長だったのに、草刈りだけを行う担当に異動させられたのはパワーハラスメントに当たるとして、元社員の男性(53)が29日、会社に約360万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。労働組合を結成した直後に異動を命じられたといい、男性は「組合を作ったことへの見せしめだ」と訴えている。
事実関係がどうなっているのかいないのかは別として、少なくともこの元部長の主張は、明白な不当労働行為のはずなんですが。
例の佐野SAの時も思いましたが、本来の労働法の概念がどんどん忘れ去られていき、世の中に通用するのは何ハラ、あれハラ、といったハラスメント系の概念だけというのは、あんまり健全ではないように思われます。
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