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« ポピュリズムの原動力は何か? | トップページ | 職場の黒騎士@『日本労働研究雑誌』2019年8月号 »

2019年7月25日 (木)

健康増進につながる働き方改革@『ビジネス・レーバー・トレンド』2019年8・9月号

201908_09 JILPTの『ビジネス・レーバー・トレンド』2019年8・9月号は、去る3月15日に開催されたJILPT・EHESS/FFJ共催ワークショップが特集記事です。

https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2019/08_09/index.html

JILPT・EHESS/FFJ共催ワークショップ

働き方改革・生産性向上・well-being at work――日仏比較・労使の視点から

【特別講演】日仏関係における働き方改革の重要性クリステル・ペリドン 在日フランス大使館公使 

【基調講演1】労働組織と労働者の脆弱性 ――OECD成人スキル調査からナタリー・グリーナン フランス雇用労働問題研究所所長

【基調講演2】働き方改革における長時間労働是正山本勲 慶應義塾大学商学部教授

【基調講演3】フランスにおける就業日の昼休み ――幸福の一要素と捉えられるかフランス・カイヤヴェ フランス食・社会科学研究所上級研究員 

パネルディスカッションでは、日仏財団理事長のルシュバリエさん、連合総研の古賀理事長、岩田喜美枝さんが長めのコメントをされ、私が司会役でディスカッションをしております。興味深い議論になっていると思います。

その他いろいろな記事が満載ですが、最近のある報道との絡みで興味を惹かれたのが、海外労働事情のうちのアメリカの記事です。

アメリカ農業労働者に労働基準法の適用と団体交渉権を認める――ニューヨーク州

ニューヨーク州議会は6月19日に上院、よく20日に下院が賛成多数で農業労働者に労働基準法を適用するとともに、団体交渉権を認める法案を可決した。

農業労働者は1937年からこれらの適用から除外されてきたが、初めて州労働法に組み込まれることになる。

日本では労働組合法も労働基準法も原則として農業労働者にも適用されますが、労働基準法の労働時間に関する規定だけは適用除外とされています。

(労働時間等に関する規定の適用除外)
第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの 

別表第一(第三十三条、第四十条、第四十一条、第五十六条、第六十一条関係)
六 土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業
七 動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他の畜産、養蚕又は水産の事業

で、これに対して異議を申し立てる訴訟が提起されたと報じられています。

https://www.asahi.com/articles/ASM7M5724M7MTIPE01W.html

「農業は残業代ゼロ」おかしい 養鶏社員が勤務先提訴へ 

 天候に左右されがちな農業は労働時間が定まらず、残業代を支払う必要はない――。そんな労働基準法の規定を理由に残業代を出さない養鶏会社を相手に、社員が支払いを求めて近く福岡地裁に提訴する。現場では機械化が進み、規定は実態に合わないと主張する。・・・

法律上は明確に適用除外なんですが、それにどこまで合理性があるのか、突っ込んでいくといろんな論点がありそうです。同じ農林業の中から林業が一足先に適用されるようになっていたり、屋外型で天候に左右されるといえば建設業も同じだとか。

もう一つ興味深い論点として、外国人の技能実習制度では、法律上は適用除外とされながら、2000年3月の農林水産省農村振興局地域振興課の通知「農業分野における技能実習移行に伴う留意事項について」が、技能実習生の労働時間等を決める場合は、基本的に労働基準法の規定に準拠し、①の労働契約、②の就業規則において、具体的に定めることを求めているのです。

1369_o_20190725114301 この点については、先日『ジュリスト』6月号に掲載された拙評釈「技能実習生の請負による残業等 -協同組合つばさ他事件」で若干論じております。関心のある方は是非。

・・・・ 

Ⅴ 労働時間規制の適用の有無

 Ⅱで述べたように、Y2は個人の農家であり、労基法41条1号で労働時間規制は適用除外されている。それゆえ少なくとも法令上は、X1には法定労働時間規制や時間外・休日労働に係る36協定の締結義務や残業代の支払義務といった規定は適用されていない。ただし、2000年3月の農林水産省農村振興局地域振興課の通知「農業分野における技能実習移行に伴う留意事項について」は、「農業労働の特殊性から、労働基準法の労働時間・休憩・休日等の規定は適用除外されているが、技能実習生の労働時間等を決める場合は、基本的に労働基準法の規定に準拠し、①の労働契約、②の就業規則において、具体的に定める」ことを求めている。これにより、労働基準監督の対象にはならないが、労働契約上の権利義務としては残業代が発生するというのが法令上の状況である(通達を無視して契約上に定めを置かなければ残業代は発生しないことになる)。

 本件の場合、X1雇用契約上に勤務時間と時間外割増賃金が明確に規定されており、従って大葉巻き作業が大葉摘み取り作業と同一の雇用契約に基づく労務として労働時間が通算されるのであれば、当然契約所定の時間外割増賃金が支払われるべきものとなり、請負名目で支払われた報酬との差額が未払賃金額ということになる。

 なお、本判決では未払賃金額に相当する付加金の支払を命じており、これは労働基準法114条の上限に等しい。しかしながら、本件の残業代は「裁判所は、・・・第三十七条の規定に違反した使用者・・・に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる」という要件には該当せず(あくまでも私法上の契約に基づき「支払わなければならない金額」)、そもそも同条に基づく付加金の支払を命じることができないはずである。・・・・

 

 

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