フォト
2020年2月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
無料ブログはココログ

« 芸人は民法上れっきとした雇傭契約である件について | トップページ | ポピュリズムの原動力は何か? »

2019年7月24日 (水)

「留学生のアルバイトというサイドドア」@『労基旬報』2019年7月25日号

『労基旬報』2019年7月25日号に「留学生のアルバイトというサイドドア」を寄稿しました。

http://www.jade.dti.ne.jp/~roki/index.html

 最近、東京福祉大学の留学生が大量に行方不明となった事件がマスコミを賑わせましたが、留学生のアルバイト(入管法上は「資格外活動」)が日系南米人や技能実習生と並ぶ外国人単純労働力の調達ルートとなっていることはよく知られています。
 今年1月に公表された「外国人雇用状況」の届出状況まとめによると、2018年10月末現在の外国人労働者総数1,460,463人のうち、留学生の資格外活動は298,461人(20.4%)です。これは、技能実習生の308,489人(21.1%)にほぼ匹敵し、専門的・技術的分野の在留資格276,770人(19.0%)や永住者の287,009人(19.7%)よりも多いのです。
 他の在留資格と明確に異なるその特徴は就労業種にあります。技能実習生は308,489人のうち186,163人(60.3%)が製造業、45,990人(14.9%)が建設業と、圧倒的に第2次産業に従事しているのに対し、留学生の資格外活動は298,461人のうち、宿泊・飲食サービス業が109,175人(36.6%)、卸売・小売業が61,360人(20.6%)、その他のサービス業が47,152人(15.8%)と、圧倒的に第3次産業に集中しています。
 そうした労働需要は今回の入管法改正によって設けられた「特定技能」によってもあまりカバーされないことを考えると、このサイドドアについてきちんと考えていく必要がありそうです。そこで今回はまず、戦後入管法の歴史を振り返り、留学生のアルバイトがどのような制度的枠組みの中で発展してきたのかを概観したいと思います。
 出入国管理令はいわゆるポツダム政令として1951年に制定され、翌1952年に法律としての効力を有することとなりましたが、30年以上にわたって留学生の資格外活動を原則として禁止し、すべて法務大臣の許可制の下に置いてきました。
第十九条・・・
2 前項の外国人は、その在留資格に属する者の行うべき活動以外の活動をしようとするときは、法務省令で定める手続により、あらかじめ法務大臣の許可を受けなければならない。
 この規定自体は1989年入管法改正まで変わっていませんが、1983年に運用方針が大きく変わりました。同年6月の閣議で留学生のアルバイト解禁が了承され、風俗営業や公序良俗に反するものでない限り、週20時間程度であれば資格外活動許可を得ることなく、自由にアルバイトをすることができるようになったのです。ただし、就学生のアルバイトは個別の法務大臣の許可を要しました。この時期、1984年には留学生受入れ10万人計画が打ち出され、中国からの留学生、就学生が急増しました。
 1989年法改正により第19条第2項は次のようになり、留学生と就学生のアルバイトについては一律かつ包括的な資格外活動許可が与えられることとされました。
第十九条・・・
2 法務大臣は、別表第一の上欄の在留資格をもつて在留する者から、法務省令で定める手続により、当該在留資格に応じ同表の下欄に掲げる活動の遂行を阻害しない範囲内で当該活動に属しない収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行うことを希望する旨の申請があつた場合において、相当と認めるときは、これを許可することができる。
 「包括的」というのは、通達で定める許可基準内であれば自由に行うことができるという意味です。具体的には、大学等の留学生は1日4時間以内、大学の聴講生、研究生は1日2時間以内、専修学校等の留学生、就学生は1日4時間以内です。いずれも夏休み期間は1日8時間以内です。
 この基準が緩和されたのが1998年です。1日単位の時間制限があるとアルバイトの選択肢が限られてしまうという意見を踏まえ、大学等の正規生や専修学校等の留学生は1週28時間以内、研究生と聴講生は1週14時間以内とされました。いずれも教育機関の長期休業期間は1日8時間以内です。また、個々の留学生が入管窓口で資格外活動許可申請をしなくても、留学生の在籍する教育機関が一括して申請を取り次ぐ制度も導入されました。これらは法務省令(入管法施行規則)で規定されました。なお、1999年法改正で留学生の在留期間が2年に延長されたことも、留学生のアルバイトを促進しました。なお就学生の取扱いは従前のままでしたが、2009年法改正で就学生という在留資格が留学生に統合され、1週28時間以内に統一されました。現在の入管法施行規則の規定は次の通りです。
第十九条 法第十九条第二項の許可(以下「資格外活動許可」という。)を申請しようとする外国人は、別記第二十八号様式による申請書一通並びに当該申請に係る活動の内容を明らかにする書類及びその他参考となるべき資料各一通を地方入国管理局に出頭して提出しなければならない。
3 第一項の規定にかかわらず、地方入国管理局長において相当と認める場合には、外国人は、地方入国管理局に出頭することを要しない。この場合においては、次の各号に掲げる者であつて当該外国人から依頼を受けたものが、本邦にある当該外国人に代わつて第一項に定める申請書等の提出及び前項に定める手続を行うものとする。
一 第一項に規定する外国人が経営している機関、雇用されている機関、研修若しくは教育を受けている機関若しくは当該外国人が行う技能、技術又は知識(以下「技能等」という。)を修得する活動の監理を行う団体その他これらに準ずるものとして法務大臣が告示をもつて定める機関の職員(以下「受入れ機関等の職員」という。)又は公益法人の職員で、地方入国管理局長が適当と認めるもの
5 法第十九条第二項の規定により条件を付して新たに許可する活動の内容は、次の各号のいずれかによるものとする。
一 一週について二十八時間以内(留学の在留資格をもつて在留する者については、在籍する教育機関が学則で定める長期休業期間にあるときは、一日について八時間以内)の収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和二十三年法律第百二十二号)第二条第一項に規定する風俗営業、同条第六項に規定する店舗型性風俗特殊営業若しくは同条第十一項に規定する特定遊興飲食店営業が営まれている営業所において行うもの又は同条第七項に規定する無店舗型性風俗特殊営業、同条第八項に規定する映像送信型性風俗特殊営業、同条第九項に規定する店舗型電話異性紹介営業若しくは同条第十項に規定する無店舗型電話異性紹介営業に従事するものを除き、留学の在留資格をもつて在留する者については教育機関に在籍している間に行うものに限る。)
 下表のように、近年の留学生資格外活動労働者数は急激な増加を示しています。外国人労働者総数も増えているのですが、その中でも割合を高めているのです。これまで労働政策の観点からはほとんど取り上げられてこなかった留学生のアルバイトですが、現実の日本社会では既に労働集約的な第3次産業の基盤を支える労働力になりつつあることを考えると、もっと正面から議論していく必要がありそうです。ちなみに、留学生のアルバイトに着目して外国人労働者の実態を探った最近の著書に、芹澤健介『コンビニ外国人』(新潮新書)があります。「日本語学校の闇」では、「日本語学校の中には、学校というよりただの人材派遣会社になりさがっているところもありますしね」という証言など、興味深い記述も多く、この問題を考える上で参考になります。
  留学生の資格外活動 割合
2012 91,727 13.4%
2013 102,534 14.3%
2014 125,216 15.9%
2015 167,660 18.5%
2016 209,657 19.3%
2017 259,604 20.3%
2018 298,461 20.4%
 

 

« 芸人は民法上れっきとした雇傭契約である件について | トップページ | ポピュリズムの原動力は何か? »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 芸人は民法上れっきとした雇傭契約である件について | トップページ | ポピュリズムの原動力は何か? »