フォト
2019年10月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
無料ブログはココログ

« 「就職氷河期世代」の現在・過去・未来 | トップページ | ワーク・ワーク・ワークじゃなくってジョブ・ジョブ・ジョブ »

2019年7月 4日 (木)

労働時間通算規定を適用した送検事例

兼業・副業の関係で、労働時間通算規定のあり方が論点になっていますが、(ピョンヤンじゃない方の)業界紙の『労働新聞』7月8日号に、その労働時間通算規定を適用した恐らく全国初めての送検事例が報じられています。

・・・三重・伊賀労働基準監督署は、違法な時間外労働をさせたとして、中西総合運輸(株)とウエストウインド(株)および両者の代表取締役を務める男性らを労働基準法第32条違反の疑いで伊賀地検に書類送検した。同代表取締役は労働者1人を中西総合運輸で働かせた後、ウエストウインドで働かせた。・・・

・・・同一人物が代表取締役であり、時間外労働の認識もあったと見ている。同労基署は「労働時間の通算規定を適用した送検は恐らく全国初」としている。・・・

この事案、法形式の上では異なる事業主の間での通算なんですが、両者は同一人物が代表取締役を務めており、いわば事実上は同一会社の異なる事業所の通算みたいなものなんですね。

ただ、複数の会社を1人が経営しているなんてことは別に違法でもないし、世の中に結構あったりするので、法人格否認とかいうような話でどうにかする話でもないわけです。

今進められているような、異なる事業主の通算は止めようということになった場合、こういう脱法行為みたいなのが出てくる可能性というのはあるわけで、そこをどう手当てしておくかというのはかなり重要な論点になりそうです。

あるいは、元は同じ業務を細かく切り分けで別の会社に委託して、それぞれで同じ労働者を雇って使うなんてケースもあり得るでしょう。

実は以前、東大の労働判例研究会で評釈した労災保険の通算が問題になったケースですが、議論しておく必要はありそうに思われます。

http://hamachan.on.coocan.jp/rohan151113.html国・淀川労基署長(大代興業ほか1社)事件(大阪地判平成26年9月24日)

 本件におけるA興業とB社はいずれもD事業団からC複合施設の中のプール設備という同一場所において設備管理業務と清掃業務という切り分けられてはいるが密接に関連した業務を請け負っている企業である。判決文からは両者に資本的人的関係があるとは言えないが、労災補償責任や安全衛生責任においてはそれらは関係がない。
 業務としてどの程度包括的に捉えることができるかで見ると、A興業のプール設備管理業務は、地下の機械室でプールと浴室の水温を確認して必要があれば追い炊きをする、玄関まわりで自転車を外に出す、カラーコーンを並べる、煙草の吸い殻入れを定位置に置く、女子浴室の塩素濃度を確認する、地下駐車場のシャッターを開ける、ブロワー、ジャグジーのスイッチを入れる、プールや浴室の塩素濃度等を確認記録する、照明を消し、機械警備を設定し、シャッターを閉め、玄関の自動ドアのスイッチを締め、施錠する、日によっては水を追加したり、電灯の交換、1月に1度程度採温室修理やプール消火栓さび取り等であり、B社の業務はプールサイドの掃除に加え、浴室と男性更衣室の清掃である。広い意味でのプール設備管理業務を切り分けて別の会社に委託することはもちろん可能であり問題はないが、それによって使用者責任が恣意的に切り分けられてしまう危険性も考慮する必要があるのではないか。
 上記1で一般論としては否定的に論じた労働時間の通算についても、空間的に同一場所において行われる類似した業務を別々の企業に請け負わせることによって通算を回避することがあり得るとすれば、むしろ通算を肯定的に解すべきではないかとも考えられる。
 本件ではA興業の業務だけで業務起因性が肯定されるほどの過重労働となっていたので、争点は主として給付基礎日額の算定にとどまったが、仮に上記さまざまな業務を細かく切り分け、別々の企業に行わせていたら、単体としては業務起因性が肯定され得ないような短時間の労働が同一場所で連続的に行われるような状況もありうるのであり、かかる状況に対しても「何ら関係のない複数の事業場において業務に従事し、何ら関係のない複数の事業主からそれぞれ賃金の支払いを受ける場合」とみなすような解釈でいいのかも考えるべきであろう。
4 現行法規を前提とする限り、本件において本判決の結論を否定することは困難であるが、従来から重層請負が通常であった建設業に限らず、近年広い業種においてアウトソーシングが盛んに行われている現在、少なくとも上記労災補償法制や安全衛生法制と類似した状況下にある者については、何らかの対応が必要であると思われる。会社をばらばらにして別々に委託すれば、まとめて行わせていれば発生したであろう使用者責任を回避しうるというようなモラルハザードは望ましいものとは言えない。

 

 

 

« 「就職氷河期世代」の現在・過去・未来 | トップページ | ワーク・ワーク・ワークじゃなくってジョブ・ジョブ・ジョブ »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 「就職氷河期世代」の現在・過去・未来 | トップページ | ワーク・ワーク・ワークじゃなくってジョブ・ジョブ・ジョブ »