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2019年7月25日 (木)

職場の黒騎士@『日本労働研究雑誌』2019年8月号

709_08 『日本労働研究雑誌』2019年8月号は、「変わるワークプレイス・変わる働き方」が特集です。ワークプレイスって、日本語では「職場」ですが、いわゆる「職場」というよりも、働く場所が揺れ動いているというニュアンスが込められているようです。

https://www.jil.go.jp/institute/zassi/new/index.html

日本のワークプレイスのこれまでとこれから─働く空間と働き方の関係及びその社会的背景に着目して 仲隆介(京都工芸繊維大学教授)
日本におけるテレワークの現状と今後─人間とICTとの共存はどうあるべきか 柳原佐智子(富山大学教授)
近未来のワークプレイスを創り出すソーシャルテレプレゼンス技術 中西英之(大阪大学大学院准教授)
ICTが「労働時間」に突き付ける課題─「つながらない権利」は解決の処方箋となるか? 細川良(青山学院大学教授)
活動に合わせた職場環境の選択が個人と組織にもたらす影響─ Activity Based Working/Office とクリエイティビティ 稲水伸行(東京大学大学院准教授)
産業社会学から見た職場 立道信吾(日本大学教授)
ワークプレイス研究と自然的な観察の意義─ある会議場面の分析から 山崎敬一(埼玉大学教授)山崎晶子(東京工科大学准教授)

JILPTから先日青山学院に移った細川良さんのは、テレワークの労働法問題とフランスのエルコムリ法で導入された「つながらない権利」の解説ですが、この問題まじめに考えていくとそもそも労働時間って何をどう測るの?という深刻な議論にはまり込んでいく気がします。

 2018年に成立した「働き方改革法」は、高度プロフェッショナル労働時間制度や、労働時間の上限規制など、新たな労働時間規制の手法を導入した。同時に、テレワークをはじめ、情報通信技術(以下、ICT)の発達に伴う働き方の変化に対応するための法政策の議論も進められている。しかし、「働き方改革法」による労働時間改革それ自体は、こうしたICTの発展がもたらす課題に正面から答えを出したものとはなっていない。ICTの発達に伴い、モバイルワークやサテライトワークにおける「労働時間」とそれ以外とではどのように区分されるのか、ICTによりいつでも接続可能な状況は労働に拘束されているといえるのか、使用者の直接の指揮命令下にある典型的な「労働時間」外においても、労働者に与える負担を考慮し、健康確保のために統制されるべき新たな「労働時間」を確立する必要はないのか等、労働法上の「労働時間」をどのように位置づけるのかという点については、多くの課題が残されている。この点、2016年にフランスにおいて立法化された「つながらない権利」は、ICTの発達がもたらす働き方の変化に対処するための方策として、一つの可能性を示すものといえるだろう。しかし他方で、「つながらない権利」という考え方そのものは2000年代から生じており、従来は私生活の確保、および裁量労働がもたらす過重労働への対処という視点から議論されてきたものである。その意味で、「つながらない権利」もまた、ICTの発展に伴う働き方の変化に、十分にこたえるものとなりうるのかについては、なお課題がある。

一方、立道さんのはワークプレイスというよりも古典的な「職場」をめぐる雇用関係、労使関係の問題ですが、それがICTの発達の中でいかに変容しつつあるかに着目します。

 これまで、日本の産業社会学者が、職場を研究する際に前提としてきたアプローチは、すべての原因を人間的要素に還元して説明する「人間遡及的アプローチ」である。この方法を用いて、産業社会学者達は、組織の構造だけでなく、組織で働く人間の感情や、集合現象としての集団も同時に職場研究の対象としてきた。本稿では、最近の職場の変化に関係する研究の中から、①雇用システム、②ブラック企業、③労使関係の3つの領域についてレビューした結果、以下の6点が明らかになった。第1に、企業の雇用システムの変化が労働者の意識に影響を与えている点である。第2に、〈職場の分断化〉という新しい現象が生じている点である。第3に、企業と労働者の関係性が従来よりも短期化している点である。第4に、近年、社会問題となっているブラック企業が登場した背景には、〈見返りのない滅私奉公〉を求めるというような企業の機会主義的な行動が増加した点である。第5に、労働組合と労使協議制が併存する状況が、労使のコミュニケーション上において望ましい結果をもたらす点である。第6に、職場における新たなステークホルダーとして、〈職場の黒騎士〉(workplace vigilante)の存在が明らかになった点である。現代の社会学者は、〈個人化〉の進展という社会変化に注目しており、その背景には、資本の移動速度の増加がある。この現象は、労働者と企業の関係の短期化を加速する1つの要因となっている。

読んでて目を惹いたのが「職場の黒騎士」という言葉です。これはデセルスとアキノの論文で出てくる概念のようですが、どういう存在かというと:

・・・著者によると<職場の黒騎士>は、組織の内外に向かって、組織や同僚の・上司らの不正を通報もしくは告発しようとする。ただし、告発もしくは通報の対象となる事象に関して、組織上は正式な監督権限を持たない非公式な存在が<職場の黒騎士>である。労働組合にも頼らず(あるいは頼れず)、ときには日本における内部通報制度などにもよらず、直接外部に向かって告発を行うこともある。彼ら<職場の黒騎士>が信じているのは、自らの持つ価値観と一致するかどうかであり、それが客観的に見た規範や正義と必ずしも一致するとも限らない。・・・

こうして、立道さんはこう予言します。

・・・ローカルな空間でしか交渉力を発揮し得ない既存の枠組みに代わり、交渉力を持ちうるのは、高度で、変化する環境にも対応できる、知的な意味での柔軟性が高い一部の個人となる。企業組織や職場集団の拘束を受けない、新しいステークホルダーとしての<職場の黒騎士>が、ひっそりと闇の中で発言を行うことで、組織や職場集団を規制する新たな力となる。

「黒騎士」という言葉のインパクトが強すぎて、脳内でさまざまな映像が流れていきます。

 

 

 

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