「就職氷河期世代」の現在・過去・未来
去る6月21日に閣議決定されたいわゆる骨太の方針には、「就職氷河期世代支援プログラム」が盛り込まれています。
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2019r/0621/shiryo_04-1.pdf
① 就職氷河期世代支援プログラム
(基本認識)
いわゆる就職氷河期世代は、現在、30 代半ばから40 代半ばに至っているが、雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った世代であり、その中には、希望する就職ができず、新卒一括採用をはじめとした流動性に乏しい雇用慣行が続いてきたこともあり、現在も、不本意ながら不安定な仕事に就いている、無業の状態にあるなど、様々な課題に直面している者がいる。
全ての世代の人々が希望に応じて意欲・能力をいかして活躍できる環境整備を進める中で、これら就職氷河期世代への本格的支援プログラムを政府を挙げて、また民間ノウハウを最大限活用して進めることとした。就職氷河期世代が抱える固有の課題(希望する就業とのギャップ、実社会での経験不足、年齢の上昇等)40や今後の人材ニーズを踏まえつつ、個々人の状況に応じた支援により、正規雇用化をはじめとして、同世代の活躍の場を更に広げられるよう、地域ごとに対象者を把握した上で、具体的な数値目標を立てて3年間で集中的に取り組む。
支援対象としては、正規雇用を希望していながら不本意に非正規雇用で働く者(少なくとも50 万人41)、就業を希望しながら、様々な事情により求職活動をしていない長期無業者、社会とのつながりを作り、社会参加に向けてより丁寧な支援を必要とする者など、100 万人程度と見込む。この3年間の取組により、これらの者に対し、現状よりも良い処遇、そもそも働くことや社会参加を促す中で、同世代の正規雇用者については、30万人増やすことを目指す。
社会との新たなつながりを作り、本人に合った形での社会参加も支援するため、社会参加支援が先進的な地域の取組の横展開を図っていく。個々人の状況によっては、息の長い継続的な支援を行う必要があることに留意しながら、まずは、本プログラムの期間内に、各都道府県等において、支援対象者が存在する基礎自治体の協力を得て、対象者の実態やニーズを明らかにし、その結果に基づき必要な人に支援が届く体制を構築することを目指す。(施策の方向性)
(ⅰ)相談、教育訓練から就職まで切れ目のない支援
○きめ細かな伴走支援型の就職相談体制の確立
SNS、政府広報、民間ノウハウ等も活用し、本プログラムによる新たな支援策の周知徹底を図り、できるだけ多くの支援対象者が相談窓口を利用する流れをつくる。ハローワークに専門窓口を設置し、キャリアコンサルティング、生活設計面の相談、職業訓練の助言、求人開拓等の各専門担当者のチーム制によるきめ細かな伴走型支援を実施するとともに、専門ノウハウを有する民間事業者による対応、大学などのリカレント教育の場を活用した就職相談の機会を提供する。
地方自治体の無料職業紹介事業を活用したきめ細かなマッチングの仕組みを横展開する。
○受けやすく、即効性のあるリカレント教育の確立
仕事や子育て等を続けながら受講でき、正規雇用化に有効な資格取得等に資するプログラムや、短期間での資格取得と職場実習等を組み合わせた「出口一体型」のプログラム、人手不足業種等の企業や地域のニーズを踏まえた実践的な人材育成プログラム等を整備する。「出口一体型」のプログラムや民間ノウハウを活用した教育訓練・職場実習を職業訓練受講給付金の給付対象とし、安心して受講できるように支援する。
○採用企業側の受入機会の増加につながる環境整備
採用選考を兼ねた「社会人インターンシップ」の実施を推進する。
各種助成金の見直し等により企業のインセンティブを強化する。
採用企業や活躍する個人、農業分野などにおける中間就労の場の提供等を行う中間支援の好事例を横展開する。
○民間ノウハウの活用
最近では、転職、再就職を求める人材の民間事業者への登録、民間事業者による就職相談や仕事の斡旋の事例が増加している。就職相談、教育訓練・職場実習、採用・定着の全段階について、専門ノウハウを有する民間事業者に対し、成果に連動する業務委託を行い、ハローワーク等による取組と車の両輪で、必要な財源を確保し、本プログラムの取組を加速させる。
(ⅱ)個々人の状況に合わせた、より丁寧な寄り添い支援
○アウトリーチの展開
受け身ではなく能動的に潜在的な支援対象者に丁寧に働きかけ、支援の情報を本人・家族の手元に確実に届けるとともに、本人・家族の状況に合わせた息の長い継続的な伴走支援を行う。このため、地域若者サポートステーションや生活困窮者相談支援機関のアウトリーチ機能を強化し、関係機関の連携を進める。○支援の輪の拡大
断らない相談支援など複合課題に対応できる包括支援や多様な地域活動を促進するとともに、ひきこもり経験者の参画やNPOの活用を通じて、当事者に寄り添った支援を行う。
以上の施策に併せて、地方経済圏での人材ニーズと新たな活躍の場を求める人材プールのマッチングなどの仕組みづくりやテレワーク、副業・兼業の拡大、柔軟で多様な働き方の推進により、地方への人の流れをつくり、地方における雇用機会の創出を促す施策の積極的活用を進める。
就職氷河期世代等の支援に社会全体で取り組む気運を醸成し、支援の実効性を高めるための官民協働スキームとして、関係者で構成するプラットフォームを形成・活用するとともに、本プログラムに基づく取組について、様々なルートを通じ、一人一人につながる戦略的な広報を展開する。
短時間労働者に対する年金などの保障を厚くする観点から、被用者保険(年金・医療)の適用拡大を進めていく。
速やかに、実効ある施策の実施に必要な体制を内閣官房に整備し、定期的に施策の進捗状況を確認し、加速する。
というわけで、改めて就職氷河期世代の問題をじっくりと考えてみようという方々に、労働政策フォーラムのご案内です。
https://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20190725/index.html
日本の若者の学校から労働市場への移行は90年代初めまで円滑に進んできましたが、長期にわたる不況のため、「就職氷河期」と呼ばれる概ね1993年から2004年に学校を卒業した若者たちは、目の前でドアが閉ざされ、社会に入る際に多くの苦難にぶつかることになりました。それから20年あまりが経過し、「就職氷河期世代」は中年期を迎えています。彼ら彼女らは現在どのような状況にあるのでしょうか。研究と現場の経験を擦り合わせ、「就職氷河期世代」をめぐる課題と将来に向けた希望について議論します。
JILPTの堀有喜衣の問題提起を受けて、玄田有史さんが基調講演を行い、現場で取り組む3人の方々が事例報告をして、小杉礼子さんを司会にディスカッションというものです。
ちなみに、このフォーラムに参加される方には、学習指定文献として(笑)つい最近出たばかりの報告書を読んでこられることをお薦めします。
https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2019/documents/217.pdf
資料シリーズ No.217 『若年者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現状③ ―平成29年版「就業構造基本調査」より―』
「就職氷河期世代」の3つの特徴を、現在正社員層、フリーター層、非求職無業者層のそれぞれについて指摘したい。
第一に、先行世代や若い世代に比べて「就職氷河期世代」は現在正社員である者であっても、正社員転職者や後から正社員になった層の割合が大きく、後から正社員になった者については正社員定着者に比べて収入も低い。
第二に、フリーターについては正社員への移行は進み、現状の人手不足の中でフリーターという人は何らかの理由があってアルバイトを継続している人も多いものと推測される。正社員化も重要であるが、非正規雇用の「質」の向上や雇用の安定化も期待される。
第三に、非求職無業者については課題がかなり大きいため、就労だけでなく福祉との連携や、さらには世帯全体を視野に入れた支援も重要である。就職氷河期世代は量的に多いので課題は大きいが、続く世代でも同様の困難を抱える人が存在する。今後の日本社会の継続的な課題となろう。
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