研究時間が3割の大学教授は専門業務型裁量労働制が適用できない件について
朝日にこういう記事が載って、
https://www.asahi.com/articles/ASM6V4V2JM6VULBJ00B.html (労働時間の3割だけで研究? 大学教員、他の仕事多く…)
大学教員が研究に使えるのは働いた時間の3割強で、16年前より10ポイント以上減っていることが文部科学省が26日に公表した調査でわかった。学生を教育するのに費やす時間や、医学教員が診療する時間の割合が増えたことなどが影響した。事務作業には2割弱が割かれており、担当者は「事務時間を研究に回せる対策が必要だ」と話している。・・・・
ネット上では、いやいや俺は3割もないとかコメントがついているようですが、いやいやほんとに研究時間が労働時間の3割、というか半分未満であれば、労働基準法第38条の3によって大学教授諸氏に適用されている専門業務型裁量労働制は本来適用できないはずなんですが、そこんとこわかった上で言ってんのかな、と。
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/roudou/senmon/a12.html
(12) 学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る。)
当該業務は、学校教育法に規定する大学の教授、助教授又は講師の業務をいうものであること。
「教授研究」とは、学校教育法に規定する大学の教授、助教授又は講師が、学生を教授し、その研究を指導し、研究に従事することをいうものであること。患者との関係のために、一定の時間帯を設定して行う診療の業務は含まれないものであること。
「主として研究に従事する」とは、業務の中心はあくまで研究の業務であることをいうものであり、具体的には、講義等の授業や、入試事務等の教育関連業務の時間が、多くとも、1週の所定労働時間又は法定労働時間のうち短いものについて、そのおおむね5割に満たない程度であることをいうものであること。
なお、患者との関係のために、一定の時間帯を設定して行う診療の業務は教授研究の業務に含まれないことから、当該業務を行う大学の教授、助教授又は講師は専門業務型裁量労働制の対象とならないものであること。
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これ、そもそも「研究時間が3割」の母数が法定労働時間でも所定労働時間でもなく、実労働時間だというところも外せないポイントですね。
「競争的資金を申請するための書類作成に費やした時間も調べた。平均して年間43時間で、研究時間の5%、働く時間の1・7%」とありますから、年間の実労働時間は2500時間ほどでしょう。
そのうち「研究時間」(研究資金獲得のための書類作成の時間も含まれているようなので、大学教員自身の体感する研究時間とはかなり違いそうですが)が33%ですから825時間くらい。のこりの1675時間が教育関連業務という計算になります。
労働日が年48週(240日)程度として、週当たり実労働時間が約52時間、うち教育関連業務が約35時間、研究が約17時間という計算です。
もし週当たりの所定労働時間が法定労働時間と等しい40時間だったとしても、「教育関連業務が概ね5割」の週20時間を1.75倍も超過していると。
もちろん平均ですから、週20時間に収まる教員や大学も「なかには」あるのでしょうが…
投稿: 匡樹 | 2019年7月 4日 (木) 16時55分