『福祉社会へのアプローチ 久塚純一先生古稀祝賀』(上)(下)
『福祉社会へのアプローチ 久塚純一先生古稀祝賀』(上)(下)(成文堂)が届きました。上下巻合わせて1500ページに及ぶ大冊です。
わたくしは下巻に「国家と企業の生活保障」を寄稿させていただいております。
久塚さんは社会保障法学者なので、そちらの論文が多いのですが、そうでないかなりはなれたテーマの論文もいくつか散見され、久塚さんのおつきあいの広さを窺わせるものとなっています。
労働法、労働研究の観点から興味を惹きそうなものをいくつかピックアップしておきますと、
フランスにおける障害者雇用支援システム 大曽根寛
地方公務員の退職勧奨における性別格差-1960年代の一般行政職を中心として 大森真紀
ワークライフバランス(WLB)理念の法的検討-再構成に向けての一考察 河合塁
ワークライフバランスと公共的相互性 後藤玲子
保険料拠出の意義と被保険者の地位に関するメモランダム 小西啓文
災害時の労働者の労務給付拒絶権に関わる一試論 春田吉備彦
ドイツの障害者雇用における使用者の法的義務と障害に関する情報の取得について 松井良和
日本福利厚生形成史に関する一考察 森田慎二郎
なぜ在華紡は大事か 篠田徹
ちなみに、この中でいちばん面白かったのは、大森真紀さんの論文です。『働く女子の運命』で触れた1960年代の企業の感覚とほぼ同じ感覚が地方自治体でも支配的で、あちこちの自治体で退職勧奨の対象が「満30歳以上で在職10年以上の女子」とか「有夫・有児で月収3万5千円以上の女子」とか、あるいは採用時に結婚退職の誓約書を提出させていたとか、山のようにあります。
某市の総務課長曰く、「市職員になりたい人が多い現状なので、市としては1世帯にひとりずつ採用する方針を採っており、一部には結婚して出産したら辞めるよう勧告したこともある。昇給ストップもやむを得ない」
大森さん曰く:大都市圏でもなく大企業が立地しない地方地域において、地方公務員職は、性別にかかわらず希少な雇用機会を提供していたから、夫婦で安定した現金収入を稼ぐことへの住民の反発も強く、それが地方自治体による女性への退職勧奨圧力を支えていたのだろう。
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