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2019年5月21日 (火)

松尾匡編『「反緊縮!」宣言』

898 松尾匡編『「反緊縮!」宣言』(亜紀書房)をおおくりいただきました。ありがとうございます。

https://www.akishobo.com/book/detail.html?id=898&st=4

世界の政治・経済を動かす新座標軸、「反緊縮」を知らなければ、これからの社会は語れない!

人びとにもっとカネをよこせ!
そう、これは新たなニューディールの宣言だ。


日本の経済・社会を破壊した「緊縮」財政主義を超えて、いまこそ未来への希望を語ろう。

松尾さんをはじめとする薔薇マークキャンペーンの方々によるマニフェストの書ですね。

反緊縮って何だ! ? 松尾匡
おすそ分けのすすめ 池田香代子
なぜ消費税を社会保障財源にしてはいけないのか 森永卓郎
他者を殴る棒 岸政彦
わたしにとっての反緊縮 生活から政治を語る 西郷南海子
政府の借金なくしてデフレ脱却なし 井上智洋
反緊縮経済学の基礎 朴勝俊
リベラル再装塡のために 宮崎哲弥
日本におけるポピュリズムの困難と可能性:「アジア」という視座 梶谷壊
ヨーロッパを救うひとつのニューディール ヤニス・バルファキス
世界中の革新派勢力への呼びかけ プログレッシブ・インターナショナル

この運動については、以前から本ブログでも述べているように、消費税に対する否定的姿勢があまりにも強すぎ、それがかえって財政拡大による再分配や生活向上の妨げになる危険性が高いと思ってきましたし、今でもそう考えています。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2019/01/post-02b2.html (バカとアホが喧嘩するとワルが得する)

・・・結論から言うと、社会保障費に充てるために消費税を上げるという触れ込みで始まったはずの政策が、「増税しないと財政破綻」論のバカ軍団と「増税すると経済崩壊」論のアホ軍団の仁義なき戦いのさなかに放り込まれると、「社会保障なんか無駄遣いやからやめてまえ」論という一番あってはならないワル軍団お好みの結論に導かれてしまうからです。

あえて表にすればこういうことになります。

123

おそらく松尾さんたちはこの表の左下の欄、つまり増税反対だけど再分配賛成というところに属しているのでしょう。ところが、その主張がもっぱら増税反対というところに集約され、もっぱら右上の「増税しないと財政破綻」論を仮想敵国として戦っていくと、現在の政治的配置状況の下では、それは右下の社会保障なんか無駄やからやめてまえ論との共闘になり、本来の政策だったはずの「増税して社会保障に」というのは冥王星の彼方に吹き飛ばされてしまいます。
そんなに増税が嫌なら、これくらい面倒見てやろうかという軽減税率の財源にそもそもの目標であったはずの社会保障費があてられるというのが今の姿ですが、この先、米中対決その他の影響で経済情勢波高しということになって「めでたく」(皮肉です)増税が回避されたら、結局得をしたのは社会保障を目の敵にするワル軍団でしたということになりかねません。正直、その可能性は結構高いように思います。そうでなくても、今ではそもそも何のために消費税を上げるという話になったのか、だれも覚えていないという状況ですから、その目論見は達せられたというべきかもしれません。
バカとアホが喧嘩するとワルが得するという教訓噺でした。

いやもちろん、本書で言えば森永さんの章になりますが、薔薇マークの方々は増税自体には反対ではなく、むしろ、法人税率の引き上げとか、富裕層への課税とか、相続税の増税とか、分離課税の廃止とか、より「ソーシャル」な増税のメニューを提示しています。その議論そのものは私は大いに賛成です。しかしながら、政権の座にあってすら実現は極めて困難であろうそういった政策を、そこから極めて遠いところから今口先で転がすだけで、何か事態がいい方向に動くかのごとく論じるならば、それは正直言って自己欺瞞でしかないでしょう。

そういう、ソーシャルな価値基準からしてより望ましい増税策がほとんど実現の見通しがなく、その中で財源が無いからといって弱い立場の人々のための財政支出が削られていく中で、せめてものよりどころになりえたはずの消費税が、かくも「反緊縮」の旗印の下で叩き潰されてしまえば、それに代わる財源など追ってこれる政治力などあるはずもなく、これ幸いとますます緊縮財政に拍車がかかるだけになるでしょうね。この辺、現実の政治状況の中での政治的実現可能性を全く顧慮することなく、「できればいいな」のメニューだけを振り回すことが、かえってかろうじて細々と存在し得ていた改善の道を踏みにじることになるという、まあよくある話の一例なんですが。

という話ばかりではつまらないので、本書の中ではやや異質ですが大変興味深かった一章を。梶谷懐さんの「日本におけるポピュリズムの困難と可能性:「アジア」という視座」です。

ここで補助線として引かれているのは中国です。共産党一党独裁の資本主義経済という中国において、右派と左派が入違っているというのはよく言われることですが、それとポピュリズムとの関係がさらにねじれて、それが日本と欧米社会のねじれとある面で符合しているという、なかなかに複雑な話です。

 

 

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コメント

 皆さん、今晩は。

>ソーシャルな価値基準からしてより望ましい増税策がほとんど実現の見通しがなく、その中で財源が無いからといって弱い立場の人々のための財政支出が削られていく中で

 兌換性のない管理通貨制度の下では、いわゆるMMT、実際には通貨発行益充当の理論で財源を見つけることは可能です。特に外貨建ての公的債務のない我が国では、通貨価値の下落が債務返済に支障をきたすわけでもないので、実行可能性は十分にあります。

>その中で財源が無いからといって弱い立場の人々のための財政支出が削られていく中でせめてものよりどころになりえたはずの消費税が、

今回の消費税増税に反対する人が多いのは、低所得の人でも貰える額よりも取られる額が多くなる事を憂慮しているからではないかと思います。弱い立場の人々のための財政支出が削られないのは良い事だと思いますが、その財源が弱い立場の人々が払った消費税だとしたら、蛸が自分の足を食べるようなものだと思います。
しかも今回の消費税増税の目的に財政再建も含まれています。つまり増税分のうち一部は財政再建用にピンハネされるので、増税分の一部しか弱い立場の人々のための財政支出に充てられない事になります。特に消費税は再分配の対象となる弱い立場の人々でも増税の対象なので、そのような立場の人々でも貰える額より取られる額が多い人も多いと思います。
消費税を上げずに福祉支出が1兆円削減するのと消費税3兆円を負担し(財政再建分1兆円を除いた)2兆円で福祉支出を1兆円増やすのでは、(実質の負担が少ない)前者のほうが良いという人もいるのではないでしょうか?
例えば消費税の増収分を(財政再建用にピンハネせず)全額均等に配分すれば、定率で集めて定額で配るので支出の低い人ほど有利になります(肉を切らせて骨を断つ)。このような消費税増税であれば、賛成に回る人もいるのではないかと思います。


>かえってかろうじて細々と存在し得ていた改善の道を踏みにじることになるという

今回の消費税増税分の使い道は既に決まっていますが、hamachan先生はこの使い道で改善になるとお考えでしょうか?それとも今回の増税では改善にならないが今後さらに増税する事により改善になるとお考えでしょうか?

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