労働時間毎日把握義務@EU司法裁判所
EU司法裁判所が去る5月14日に、労働時間指令と労働安全衛生指令の解釈として、使用者は実労働時間を毎日把握しなければならない義務があるという判決を下したようです。
判決文自体はこちら:
新聞発表資料はこちらです。
https://curia.europa.eu/jcms/upload/docs/application/pdf/2019-05/cp190061en.pdf
これ、原告はスペインの労働組合のCCOO、被告はドイツ銀行。
スペインの労働法では、使用者は毎日の実労働時間を毎日把握する必要はなく、月単位で時間外労働時間を把握すればよいとされているのですが、それはEU指令に違反すると。
Articles 3, 5 and 6 of Directive 2003/88/EC of the European Parliament and of the Council of 4 November 2003 concerning certain aspects of the organisation of working time, read in the light of Article 31(2) of the Charter of Fundamental Rights of the European Union, and Article 4(1), Article 11(3) and Article 16(3) of Council Directive 89/391/EEC of 12 June 1989 on the introduction of measures to encourage improvements in the safety and health of workers at work, must be interpreted as precluding a law of a Member State that, according to the interpretation given to it in national case-law, does not require employers to set up a system enabling the duration of time worked each day by each worker to be measured.
EU労働時間指令第3,5,6条と労働安全衛生指令第4条第1項、第11条第3項、第16条第3項は、国内判例法による解釈に従い使用者に各労働者が毎日労働した時間の長さを測定することを可能にする仕組みを設けることを要求しない加盟国の法律を排除すると解釈されなければならない。
判決文に引用されたスペイン法の条文(の英訳)を見ると、正確には使用者は毎日の労働時間を把握しなければならないけれども、労働者にはい単位で時間外労働の時間数だけ伝えればよいということのようですが、とにかく毎日何時間労働したかが確定しないまま1か月が過ぎるという状況のようです。
で、それはEU指令違反だと。EU法は労働者の安全衛生を目的として、1日単位の休息時間、1週単位の休日と最長労働時間を定めているので、それが守られているかどうかを1か月単位ではだめだということですね。日本では労働時間と言えば残業代と見込む人が多いですが、残業代の話では全然ありませんので、その点は誤解なきよう。
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