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『日本労働研究雑誌』2019年5月号

706_05 『日本労働研究雑誌』2019年5月号が刊行されました。

https://www.jil.go.jp/institute/zassi/new/index.html

特集は、働き方改革シリーズ3「その他の実行計画」で、次のようなラインナップです。

提言 法規制と労使自治のRebalancing 菅野和夫(東京大学名誉教授)

解題 働き方改革シリーズ3「その他の実行計画」編集委員会

論文 雇用によらない働き方をめぐる法的問題 鎌田耕一(東洋大学名誉教授)

「就職氷河期世代」の現在─移行研究からの検討 堀有喜衣(JILPT主任研究員)

働く質を高めるための基礎条件─事例研究からの示唆 小野浩(一橋大学教授)

「同一労働同一賃金」は企業の競争力向上につながるのか?─待遇の説明義務に着目して 中村天江(リクルートワークス研究所主任研究員)

スウェーデンにおける再就職支援 福島淑彦(早稲田大学教授)

どれも読み応えのある論文で、特に堀有喜衣さんのは、ちょうど先日経済財政諮問会議が就職氷河期世代対策を打ち上げたところだけに、この問題をちゃんと考える上での重要なデータが入っていて、この分野の人には必読です。

本稿は、景気回復の中で取り残されているとされ、「働き方改革実行計画」で支援の対象とされている「就職氷河期世代」の現状を平成29年度『就業構造基本調査』(総務省統計局)の二次分析を通じて明らかにした。中年期を迎えてもなお「就職氷河期世代」のフリーターやニートは一定規模で存在している。さらに労働市場に入った時の雇用状況を示す新卒正社員率に基づき世代を「バブル後期」「就職氷河期前期」「就職氷河期後期」「回復期」「リーマンショック期」「アベノミクス期」に分類して性別・学歴別に分析したところ、大卒男女、高卒男性については「就職氷河期後期」の新卒正社員率が最も低く、その後すぐに「就職氷河期前期」の水準にまで回復したが、高卒女性については近年の景気回復まで低位にとどまっていた。また初職が正社員でなかった場合、現在無業状態にあったり、現職が正社員でない割合が高くなっており、年齢を重ねても初職時の状況が中年期まで持続的な影響を及ぼしていることが観察された。「就職氷河期世代」は若者に対する支援の必要性を高度成長期以降の日本社会に初めて認識させた存在であったが、今後も安定した雇用が前提となっている日本社会のありようにゆらぎをもたらしていくものと考えられる。

ですが、ここでは巻頭の菅野提言を熟読玩味していただきたいと思います。

・・・・法規制の追加に伴う問題は,常に,それが所期のとおり機能するかである。今回の働き方改革関連法の第1 の目玉・時間外労働の上限規制では,長時間労働を批判する世論のバックアップが何よりの援軍であり,これを背景として監督行政が強気の姿勢を続けることができよう。しかしながら,そのキャパシティは限られている。何より重要なのは,三六協定の当事者である労使が改正法の趣旨と内容を十分に理解し,協定を適正に締結し運用することである。しかしながら,JILPTの最新の調査でも,過半数組合がある事業場は1割に達せず,過半数代表者がいる事業場も4 割台前半にとどまる。しかも過半数代表者の選出手続の多くは適正さが疑わしく,三六協定の適正化について楽観論はとりにくい。この見通しもあってか,今回は過半数代表者の選出について使用者の意向を反映したものとならないように規則改正がなされ,また,その活動への便宜供与の配慮義務も規定された。既存の規定も合わせれば,過半数代表者に関する規制がずいぶん整ってきた感があるが,やはり法律にしないとインパクトに欠ける憾みがある。
もう1 つの目玉である「日本版同一労働同一賃金」の方は,最高裁二判決と指針が出て,諸手当については規範内容がかなり明確化したが,肝心の基本給,賞与,退職金についてはいまだ曖昧模糊としている。法の趣旨に則した好事例を労使で作り出して,そこから是正のモデルをいくつも提示してほしいものである。司法判断はそれらを参考にして行わないと,適切なものとはなりにくい。
要するに,両者を通じて,今回の法改正を機能させる一番の推進力は労使関係のはずであるが,今回の改正では,この点の手当がほとんどなされておらず,それが喫緊の課題と思われる。総じて,今回の労働法制改革は,労使関係の推進力を利用する姿勢なしに行われ,法規制が労使関係システムとの関係で肥大化しすぎている感がある。両者のRebalancing が今後の基本課題である。

そう、まさにここで言われている点、やたら細かな法規制を導入しようとするわりに、それをエンフォースするための集団的労使関係システムの活用に対する奇妙なまでの消極性こそが、(細かな点を全部除いても)今回の働き方改革を特徴付けている最大の問題点だと思います。

 

 

 

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