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2019年4月17日 (水)

労働組合は賃金カルテルだが・・・(前書き付き再掲)

最近、全港湾がストライキの突入というニュースが流れてきたのですが、よく見ていくと、使用者側がいささかトンデモ系の主張をしていたようです。もとより、組合側の要求する賃金水準が妥当なのかそうでないのかはここで軽々しく言えるようなことではないですが、その前段階で、そもそも産別レベルで労使交渉で業界の最低賃金を決定すること自体が独禁法に違反するのではないかというようなことを言っているらしく、さすがにそれは労働法に対して無知、というかわざと無知を装っているように受け取られかねません。

情報労連の対馬洋平さんのツイートから:

https://twitter.com/yohei_tsushima/status/1118335827908501505

労働組合による企業横断的な賃金要求を「独占禁止法に抵触するおそれがある」って、いつの時代ですかっ! 産別の最低賃金には賃金ダンピングによる、業界の過当競争を防ぐ役割もあるんです! 協会側にそれがわからない?

https://twitter.com/yohei_tsushima/status/1117773475945406464

協会側が「産別最賃制度」について、中央労働委員会が「独占禁止法上問題にならない」とあっせん案を出しても、「独禁法に触れるかどうか、公正取引委員会に聞きに行く」と言っているそうです。http://zenkoku-kowan.jp/cgi/blog/diary.cgi?no=235

中労委は言う通りだと思いますが。労働組合は賃金カルテル

この最後の「労働組合は賃金カルテル」というのは、もう8年も前に本ブログに書いたエントリのタイトルとほぼ同じなので、労働関係者にとっては今更の話ですが、そこを一歩出ると意外にほとんどわきまえられていない「常識」を、改めてご紹介することにも何らかの意味があるかと、再アップさせていただきます。なお冒頭のごちゃごちゃした話は、あまり気にしないでいいです。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/post-1383.html (労働組合は賃金カルテルだが・・・)

「ニュースの社会科学的な裏側」さんに、評論家相手に詰まらん喧嘩を売るな、と諭されたこともあり、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/--9bf9.html(「犬も食わない池田-濱口論争を整理」されました)

淡々と、事実のみを指摘し、労働問題に関心のある方々への参考としたいと思います。そうしておけば、変なイナゴも湧いてこないでしょうし。

さて、例によって池田信夫氏のつぶやきですが、

http://twitter.com/#!/ikedanob/status/80854685522739200

>労働組合は賃金カルテル。ワグナー法までは違法だった

例によって、半分だけ正しいというか、一知半解というか、いやいやそういうことを言ってはいけないのであった。どこが正しいかというと、

1890年のシャーマン反トラスト法が、連邦最高裁によって労働組合にも適用されると判決されたことにより、まさに「労働組合は賃金カルテル」となりました。

これに対し、1914年のクレイトン法が「人間の労働は商品ではない」と規定して、労働組合の行動を反トラスト法の対象から除外したのですが、なお当時の司法はいろいろと解釈して反トラスト法を適用し続けたのです。

それをほぼ全面的に適用除外としたのが1932年のノリス・ラガーディア法で、これを受けて、むしろ積極的に労働組合を保護促進するワグナー法がルーズベルト大統領の下でニューディール政策が進められていた1935年に成立します。

ですから、学生ならお情けで合格点を与えてもいいのですが、社会科学に関わる人であれば「ワグナー法までは違法だった」で落第でしょう。

で、ここからが本題。

このように労働組合がカルテルであるというのは、つまり労働者が企業の一員ではなく企業に対する労働販売者であり、労働組合とはそういう労働販売者の協同組合であるという認識を前提にします。労働組合がギルドだという言い方も、同じです。

欧米の労働組合は、まさにそういう意味で労働販売者の協同組合として、社会的に位置づけられているわけですが、日本の労働社会ではそうではない、というのが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2007/09/post_a4ee.html(半分だけ正しい知識でものを言うと・・・)

の最重要のポイント。

日本の企業別組合は、企業の一員(メンバー)であることが要件であり、そのメンバーシップを守ることが最重要課題なので、自分が働いている職場に、自分のすぐ隣で、同じ種類の労働をものすごい安売りをしている非正規労働者がいても、全然気にしないのです。そんなもの、カルテルでもなければギルドでもあり得ない。

アメリカは自由市場イデオロギーの強い国なので、こういう反カルテル的発想から反労働組合思想が発生しがちなのですが、少なくともそのロジックをそのまま日本に持ち込んで、日本の企業別組合に対して何事かを語っているつもりになるとすれば、それは相当に見当外れであることだけは間違いありません。

批判するなら、「もっとまともなギルドになれ!」とでもいうのでしょうかね。それは立場によってさまざまでしょうが。

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