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« 労働者性の問題、団体交渉権の問題 | トップページ | 高齢者雇用をめぐる課題と展望@『生産性新聞』3月15日号 »

2019年3月18日 (月)

フランスにおける若者の就職とキャリア@五十畑浩平

シノドスに、五十畑浩平さんが「フランスにおける若者の就職とキャリア」を書かれていますが、フランス、というかドイツみたいなデュアルシステムのない欧米型労働社会では若者がどういう目に遭うのかを、わかりやすく説明しています。

https://synodos.jp/economy/22490

フランスの場合、あるいはフランス以外の欧米諸国で一般的であるが、日本のように職務経験のない新卒者を採用し人材を育成する慣行はなく、あくまで個人の保有する資格や職務経験によって採用される。

こうした即戦力重視の採用では、したがって、働いたことのない若者は、必然的に一番不利になるため、希望の職が見つからなかったり、安定したポストが見つけられなかったりする・・・

というのは、拙著や海老原さんの本で繰り返し説いていることですし、

・・・では、職務経験のまったくない一般的な若者はどのように就職をするのであろうか。フランスでは、職務経験の乏しい、あるいはまったくない若者は、有期雇用や派遣などの非正規雇用を経験し、職務経験を積んだうえで、日本の正社員に相当する無期限雇用にたどり着くのが一般的である。・・・

というのも口が酸っぱくなるほど言っていることですが、それが学歴別に大きな格差があるというのは、この五十畑さんの文章が一番明確に示していることでしょう。

・・・この状況を学歴別にみてみよう。修士修了レベル(グランドゼコール卒も含む)の場合、4人に3人以上の76%の若者がすぐに就職しており、遅れて就職した10%の若者とあわせ、9割近い86%が卒業3年後の時点で職に就くことができている。この状況は学歴の水準が低くなるにつれてさがっていく。大卒レベルとなると77%となり、高卒レベルであれば67%にまでさがる。中卒程度である無資格の若者にいたっては、卒業3年後に就職できている割合は、37%にまで落ち込んでいる。

すごく露骨に言えば、未経験でもすぐに採用してくれる高学歴者と、(非正規で)経験を積んでもなかなか採用してくれない低学歴者の間の落差が、日本では想像がつかないくらい大きいのがフランスであると。

・・・実際、中卒程度の無資格者は工員に、高卒者は従業員に、大卒者は中間職に、修士修了者は管理職に就く割合がもっとも高くなっている。このように、最初から学歴によって就く役職のすみわけがしっかりとできており、キャリア形成の「スタートライン」が学歴によって変わっているのが特徴と言える。あくまで「スタートライン」は一緒でその後の昇進スピードや昇進の幅に学歴によって差を持たせる日本に対し、学歴によって入職時「スタートライン」そのものが変わるフランスは、ある意味、日本よりも学歴主義であると言える。

そして、これも拙著や海老原さんの本では結構繰り返し説いている割に、あまり皆さんの胸にすとんと落ちていなさそうなのが、修士卒という高学歴者は採用当初から管理職という職種で採用されているのであり、学士卒という中学歴者は採用当初から中くらいのポストで採用され、高卒という低学歴者は(何とか潜り込めても)採用当初からずっとヒラ従業員であり、中卒という最低学歴者は(なんとかたどりついても)ずっと末端の労務者であるという、学歴が即職種であり、即会社内の地位であり、即社会階級であるという露骨な構造です。

逆に言えば、戦後日本はそういう(戦前の日本には同じように明確に存在した)学歴即職種、即社内地位、即階級という社会のあらゆる場面を貫く階級構造を(少なくとも)目に見えなものにしたという点で世界的には極めて異例の存在であったということなわけです。

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コメント

“「スタートライン」は一緒でその後の昇進スピードや昇進の幅に学歴によって差を持たせる”
“学歴即職種、即社内地位、即階級という社会のあらゆる場面を貫く階級構造を(少なくとも)目に見えなものにした”

「出世を望まない社員が多数派」となった今では、社員(労働者)としても、株主(資本家)としても、利点がありませんね。

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