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2019年3月

『労働法の人的適用対象の比較法的考察』

Jinteki JILPTの資料シリーズ No.214『労働法の人的適用対象の比較法的考察』がアップされました。
https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2019/214.html

「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)において、雇用類似の働き方については、順次実態を把握し、雇用類似の働き方に関する保護等の在り方について、法的保護の必要性を含めて中長期的に検討するとされている。このような状況下で、JILPTでは厚生労働省の要請を受け、諸外国における労働法の人的適用対象のあり方に関する比較法的研究を行った。

というわけで、JILPTの研究員(細川良、池添弘邦)と外部研究者(岩永昌晃さん)が英仏米の労働者概念について詳しく解説しています。

・イギリスの労働者性の判断基準は、コモンローにおいて使用者責任の有無を決定するために発展してきた基準であり、現在でも指揮命令の欠如が労働者性(雇用契約性)を否定するとされている。一方1960年代以来、当該労務供給者が自己の計算において事業を行う者といえるかという経済的実態の観点も考慮して総合的に判断されるようになった。1980年代には、継続性のない一回的・単発的な労務供給契約による労務供給者(casual worker)の労働者性が否定されることとなり、これが後に「就労者」概念を生み出すこととなる。1990年代には、労務供給者が自身の労務を提供することが労働者性の必要条件とされ、実務では代替者による労務供給を認める旨の契約条項を入れることにより当該労務供給者の労働者性を否定することを狙う例が見られる。
なお1997年労働党政権以降、主として上記労働者性を否定されたcasual workerを包摂するために設けられた概念が就労者(worker)であり、その要件は契約者自身による労務供給と契約の相手方が専門職の依頼人や当該人によって営まれる事業の顧客でないことである。なお近年のギグ・エコノミーに対応して、2017年のテイラー報告書は就労者概念を依存的契約者に変え、その判断においては自身による労務供給は重視せず、指揮命令基準をより重視すべきと提言している。

・フランスでは、破棄院の判例により指示、統制、制裁という3要素によって労働契約の性質決定の有無を判断するという手法が維持されている。労働契約の性質決定に当っては、法的関係としての「法的従属」ではなく、事実としての「従属的地位」が基準となっている。経済的依存は、労働契約の基準としては退けられているが、従属の証明に寄与する考慮要素ではある。他方、組織への組み込みを基準とする考え方は明確に退けられている。
一方、立法により雇用類似の働き方について労働法の適用領域を拡大する規定が存在し、一定の職業の契約を労働契約と同一視するものとして、家内労働者、外交商業代理人、新聞記者、興業役者があり、一定の就労者に対し労働法典の一定部分の適用を認めるものとして、労働者でない支配人等について労働時間や賃金、解雇に関する規定が適用される。近年の新たな就労形態としては、疑似派遣型独立労働者やプラットフォーム型就労者があり、後者については2016年の労働法改革により保護するためのいくつかの規定が設けられた。

・アメリカでは、コモンローに由来するコントロールテストと、公正労働基準法で用いられている経済的実態テストがある。現在では経済的実態テストが用いられる根拠法令は公正労働基準法のみであり、大多数の立法においてはコントロールテストで労働者か否かが決せられている。なお、差別禁止法における労働者性判断に際しては、両者をミックスしたハイブリッドテストが用いられるケースもある。さらに、州労災補償法においては、就業者が行う職務が使用者の事業の不可欠な一部をなしているか否かによって就業者を労災保証法上の労働者であるかを判断する業務相関性テストを用いる州がある。
現在、プラットフォーム・ビジネスにおける働き方に含まれる独立契約者や請負といった非労働者に係る問題への対処として、就業者の誤分類を是正しようという動きがある。すなわち、本来であれば法的には労働者として扱われてしかるべき就業者が非労働者として分類されてしまうために、労働者として扱われていれば給与から源泉徴収される連邦保険税を政府は徴収し損ねてしまい、税収確保が困難になるという現実的な問題への対処である。また、州や地方自治体レベルで非労働者に係る条例を定める動きもある。

なお、序章と補章(EU)は私も執筆しています。

ちなみに、細川さんは併せて『資料シリーズ No.211 フランス労働法改革の意義と労使関係への影響』も書いていますのでご参考までに。

https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2019/211.html

エル・コムリ法とマクロン改革について詳しく解説しています。

また、雇用類似の働き方にかかわっては、中国の法制の動向も注目すべきものがあり、そちらについても 仲琦さんによる『労働政策研究報告書 No.202 中国におけるシェアリング・エコノミー下の「新たな就労形態」と就労者保護―その光と影』がアップされています。

https://www.jil.go.jp/institute/reports/2019/0202.html

 

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医師の働き方改革に関する検討会報告書もうすぐ発表?

原則の上限が1年960時間で、地域医療でやむを得ないところや研修医は1年1860時間という数字が載っている報告書が、たぶんもうすぐ発表されることになるのでしょう。ちょうど現在第22回医師の働き方改革に関する検討会が開催されていて、

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04232.html

その報告書案がこちらです。

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000494765.pdf

中身を一枚にまとめるとこれです。

 

Ishi01

 

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OECD『Policy Responses to New Forms of Work』

0763f1b7 OECDの報告書『Policy Responses to New Forms of Work』が去る3月21日に刊行されていました。


https://www.oecd-ilibrary.org/docserver/0763f1b7-en.pdf?expires=1553587732&id=id&accname=ocid194735&checksum=28153C2F18E3E06F59A12DAAAD52CDE3



This report provides a snapshot of the policy actions being taken by OECD, EU and G20 countries in response to growing diversity in forms of employment, with the aim of encouraging peer learning where countries are facing similar issues. It shows that many countries are reflecting on whether existing policies and institutions are capable of addressing effectively the current (and future) challenges of a rapidly changing world of work. In recent years, many countries have seen the emergence of, and/or growth in, particular labour contract types that diverge from the standard employment relationship (i.e. full-time dependent employment of indefinite duration). These include temporary and casual contracts, as well as own-account work and platform work. Several countries have also seen growth in false self-employment, where employers seek to evade tax and regulatory dues and obligations. These changes are driving policy makers worldwide to review how policies in different areas – labour market, skills development, social protection – can best respond. How can policymakers balance the flexibility offered by a diversity of employment contracts, on the one hand, with protection for workers and businesses, on the other?



ここでいう新たな就業形態には、自営業やプラットフォーム労働といった今はやりの論点だけではなく、ゼロ時間契約のような雇用内部の非典型形態も含まれます。


むしろ、目次の邦訳を示した方が、多くの人々には有用かも知れませんね。



第1章 導入


第2章 各国は「新たな就業形態」でなにを意味しているか


第3章 労働者の分類


第4章 プラットフォーム労働


第5章 有期契約


第6章 変動時間契約


第7章 横断的問題


第8章 社会保護の強化


第9章 技能と生涯学習


第10章 公共職業安定サービス


第11章 団体交渉と労使対話


第12章 データ収集と調整


第13章 政策方向



 


 

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『「独立自営業者」の就業実態』

Jiei JILPTの調査シリーズNo.187『「独立自営業者」の就業実態』がようやく刊行されました。西村純、前浦穂高両研究員による労作です。


https://www.jil.go.jp/institute/research/2019/187.html


ようやく、というのは、厚生労働省の検討会での報告や概要の記者発表からほぼ1年たったからで、皆さん覚えていますかね?


ただそれだけに、結構分厚く、中身の多い報告書になっています。



主な事実発見



  1. 仕事の受注方法について見てみると、対象サンプル全体では「自分で営業活動をして」、「現在の取引先から声がかかった」、「知人・親戚等から紹介された」が上位の三つに挙げられている。仕事別に見てみると「デザイン・映像製作関連」は、上位三つの方法によって仕事を受注していると答えた割合がいずれの場合であっても最も高い。また、仕事別に見た場合の受注方法の特徴として、「事務関連」は他の仕事に比べるとクラウドソーシングの会社や仲介企業などの仲介組織を活用している傾向が窺われる(図表1)。

    図表1 受注方法(仕事別)


    図表1画像



    注1)無回答144サンプル(2.3%)については、図表に表記していない。


    注2)一般消費者のみに対して業務やサービスを提供していた者を除く6,329サンプルが対象。




  2. 作業内容や範囲に関する取引先からの指示の有無について見てみると、対象サンプル全体としては、6割弱が指示を受けていない傾向にある(「全く指示されなかった」と「あまり指示されなかった」の合計:図表2)。この点について主な仕事別に見てみると、六つの仕事の中でより指示を受けない傾向にあるのは、「専門業務関連」であり、一方、指示を受ける傾向にあるのは、「事務関連」、「デザイン・映像製作関連」、「IT関連」となっている。

    図表2 作業内容・範囲に関する取引先からの指示の頻度(仕事別)


    図表2画像



    注)一般消費者のみに対して業務やサービスを提供していた者を除く6,329サンプルが対象。




  3. 取引社数は、「1社」と「2~4社」の割合が高かった。「独立自営業者」は、多数の企業と取引するというよりは、特定の企業と取引をしていることが窺われる(図表3)。

    図表3 取引社数(仕事別)


    図表3画像



    注)一般消費者のみに対して業務やサービスを提供していた者を除く6,329サンプルが対象。




  4. 1年間の報酬総額について見てみると、200万円未満の割合が6割を超えている。仕事別に見ると、特に「事務関連」が低い。専業/兼業別に見ると、「兼業(独立自営業が副業)」は、専業や兼業(独立自営業が本業)に比べると、報酬総額が低い傾向にある。

  5. 「独立自営業者」になった理由の上位三つは、「自分のペースで働く時間を決めることができると思ったから」、「収入を増やしたかったから」、「自分の夢の実現やキャリアアップのため」となっている。この点について専業と兼業別に見てみると、「専業」と「兼業(独立自営業が本業)」は、「自分のペースで働く時間を決めることができると思ったから」が最も多かった回答で、「兼業(独立自営業が副業)」は、「収入を増やしたかったから」が最も多かった回答となっている。

  6. 今後(約3年後)のキャリア展望について見てみると、「独立自営業者としての仕事を専業とする」の割合が最も高く、これに「独立自営業者の仕事を兼業とする」、「分からない」が続く。「独立自営業者」を辞めようと考えている者は、1割未満となっている。専業/兼業別に今後のキャリア展望について見てみると、独立自営業が本業の兼業「独立自営業者」の中には、将来的に専業「独立自営業者」への移行を考えている者が一定数存在している(「兼業(独立自営業が本業)」33.5%:図表4)。

    図表4 今後(約3年後)のキャリア展望のまとめ


    図表4画像



  7. 専業「独立自営業者」の「独立自営業者」になる前のキャリアを見てみると、雇用労働者であった者が多いことが窺われる。「正社員・正規職員」と答えた者は、6割を超えており、「非正規雇用・非正規職員」と併せると8割弱に上る。

  8. 「独立自営業者」として必要なスキルを身につけた場所について見てみると、上位三つは、「会社(以前の会社を含め)での経験、研修及び勉強会」、「特にない」、「関連書籍等を使って自学自習」となっている。

  9. サンプル全体の傾向として約半数の者はトラブルを経験していない。仕事別の傾向を見てみると、「事務関連」は、六つの仕事の中ではトラブルを経験している傾向がある。一方、トラブルを経験しない仕事としては、「専門業務関連」が挙げられる。

  10. 2017年にトラブルを経験したサンプル全体の傾向として、「作業内容・範囲についてもめた」、「仕様を一方的に変更された」、「一方的に作業期間・納品日を変更された」が経験したトラブルの上位三つとなっている。

  11. トラブル解決の困難さについて確認すると、2017年にトラブルを経験した者のうち、「全て解決した」が6割以上のトラブルは、「作業内容・範囲についてもめた」、「一方的に作業期間・納品日を変更された」、「報酬の支払いが遅れた・期日に支払われなかった」、「予定外の経費負担を求められた」となっている。逆に「全て解決した」が4割以下のものは、「報酬が支払われなかった・一方的に減額された」、「自分の案が無断で使われた」、「セクハラ・パワハラ等の嫌がらせを受けた」となっている。

  12. 「独立自営業者」を続ける上での問題点について確認してみると、サンプル全体で上位に挙げられている三つは、「収入が不安定、低い」、「仕事を失った時の失業保険のようなものがない」、「仕事が原因で怪我や病気をした時の労災保険のようなものがない」となっている。

  13. 整備・充実を望む保護施策について、サンプル全体のニーズを見てみると、上位三つは、「特に必要な事柄はない」、「取引相手との契約内容の書面化の義務付け」、「トラブルがあった場合に、相談できる窓口や僅かな費用で解決できる制度」となっている(図表5)。

    図表5 整備・充実を求める保護施策(MA)(仕事別)(列%)


    図表5画像



  14. 労働法上の「労働者」の判断基準を参考にスコア(「労働者性スコア」)を算出し、その働き方別に「独立自営業者」の特徴を確認すると、働き方が労働者に近い(「労働者性スコア」が高い)と思われる「独立自営業者」は、そうではない働き方の「独立自営業者」に比べると、次のような特徴を持っていることが窺われる。すなわち、「中・高卒」が多く、「生活関連サービス、理容・美容」や「現場作業関連」の仕事に携わっており、収入アップを目的として「独立自営業者」という働き方を選択しているケースが多い。そうした働き方が労働者に近い「独立自営業者」は、他の者でも代替可能な業務を提供していることが窺われる。そのような業務の提供に必要なスキルは、自然に身につけたか、もしくは、企業内での訓練や高校、専門学校、大学などの教育機関で身につけている場合が多い。

  15. 本調査結果より、サンプル全体の「独立自営業者」と比較した際の「クラウドワーカー」の特徴として、次のような点が浮かび上がってくる。すなわち、女性が多く、主たる生計の担い手ではない者が多い。兼業として「独立自営業者」の仕事に携わっている者が多い。従事している主な仕事は、「事務関連」が多く、収入アップを目的として「独立自営業者」という働き方を選択している。そうした「クラウドワーカー」は、他の人でもできるような業務を提供している。取引先から作業場所や作業時間についての指示は受けないが、作業内容や進め方については指示を受ける傾向がある。このような特徴を持つ業務の提供に必要なスキルは、自然に身につけている場合が多いようである。




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『POSSE vol.41 特集 移民が開く新しい時代』

Hyoshi41『POSSE vol.41 特集 移民が開く新しい時代』をお送りいただきました。ありがとうございます。


http://www.npoposse.jp/magazine/no41.html



外国人労働者の受け入れを拡大する改正入管法が成立した。


すでに外国人労働者の数は140万人を超えており、


今後も増えつづけていくことになる。


いま必要なのは、移民受け入れの是非を問うことではなく、


移民と共により良い社会を作るための議論だ。


本特集では、これまでの日本の外国人政策を振り返りながら、


私たちがこの新局面にどのように向き合うべきかを展望する。 



施行が1週間後に迫る改正入管法ですが、そろそろじっくりと論じるべき時期なのでしょう。『POSSE』はPOSSEらしい記事のラインナップです。



◆特集「移民が開く新しい時代」
[座談会]これからの「移民」の話をしよう。――外国人労働者とともに歩むニッポンのゆくえ 明石純一(筑波大学准教授)×岡部みどり(上智大学教授)×八代尚宏(昭和女子大学グローバルビジネス学部長・特命教授) 司会 五十嵐泰正(筑波大学准教授)


外国人労働者受け入れの歴史と入管法改定 ――都合の良い労働力に依存する地域をどう変えるか 鈴木江理子(国士舘大学教授)


新世代農民工は、技能実習をどのように経験したのか 劉 芮竹


シャープ亀山工場におけるストライキ闘争 ――iPhone部品下請生産の減産に伴う外国人労働者の不当解雇をめぐって 広岡法浄(ユニオンみえ書記長)


入管法改正を労働運動はどう見るべきか?――定住化を支援し、外国人労働者を組織化する運動へ 指宿昭一(弁護士)



それ以外の記事は以下の通りですが、ここでは常見さんの「体育会」論から、ある意味で今日的な企業論そのものでもある部分を。



・・・このように、今どきの体育会は昭和の体育会とは違うのである。我々が体育会を語るとき、いつの間にか昭和を前提とした、理不尽な体育会の話をしてしまっていないだろうか。


ここまで論じてきて、ちゃぶ台をさらにひっくり返すことにする。では科学的ならいいのか。若者に寄り添っていたらいいのか。・・・


・・・これらのノウハウにより「明るく合理的なブラック職場」が生まれている。労働時間や業務内容は、いかにも『POSSE』が批判しそうなブラック職場そのものだが、モチベーションで満ちあふれているのである。まさに21世紀の体育会ではないか。・・・



いやあ、まさに。



◆ミニ企画1「東京オリンピックと体育会系社会のゆくえ」
矛盾だらけの五輪ボランティア問題――史上空前の巨大商業イベントの裏で何が目指されているのか 本間 龍(作家)


体育会について語るときに僕の語ること 常見陽平(千葉商科大学国際教養学部専任講師)


アスリートたちのもう一つの試合場(前編)――世界の選手会が闘うなか、日本はどうする?  川井圭司(同志社大学教授)


◆ミニ企画2「沖縄の貧困と基地問題」
ねじれた糸を解きほぐす、メインプレイヤー不在の沖縄――沖縄の基地問題・雇用問題・貧困問題  春田吉備彦(沖縄大学教授)


貧困を構造化する沖縄振興体制――ナショナルミニマムからソーシャル・ビジネスへの予算組み替え 島袋 純(琉球大学教授)


◆ミニ企画3「After #Marx200 ――社会運動とマルクスの可能性」
政治主義、制度主義的な反貧困運動から当事者のアソシエーション活動への発展  藤田孝典(NPO 法人ほっとプラス代表理事)


労働者に語りかけるマルクス、一人では生きられない社会で 真島 隆
フェミニズムとマルクス 鈴木由真(ちゃぶ台返し女子アクション メンバー)


社会変革の主体としての労働者階級を形成するための思想  指宿昭一(弁護士)


日本でもマルクスをリバイバルさせよう! マルチェロ・ムスト(ヨーク大学准教授)


◆書評
井手英策・今野晴貴・藤田孝典 著 『未来の再建――暮らし・仕事・社会保障のグランドデザイン』 本誌編集部


◆連載
My POSSEノート page6 労働から社会を変える 田澤 斎


NGOレポートで読み解く第三世界の労働特別編 アパレルブランドが依存する第三世界の過酷労働――労働運動のグローバルな連帯に向けた取り組み


社会を変えるのは私たち 第2回  大澤祥子(一般社団法人ちゃぶ台返し女子アクション 共同代表理事)


海外留学見聞録 No.4 イギリス リーズ大学  眞鍋せいら


知られざる労働事件ファイル No.14 大阪・地場スーパーの長時間労働・残業代不払い事件  木下進(全国一般大阪地方労働組合執行委員)×池田伊佐男(サンプラザ労働組合特別執行委員)×上西順一(サンプラザ労働組合執行委員長)


立ち上がる労働者たち 第3回 労働組合は「強くなくてもできる」――仲間に支えられて勝ち取った和解


それぞれの町で 第6回 空白地帯と制作のリズム――2拠点活動の模索  石井雅巳×瀬下翔太



 


 


 


 

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『日本労働研究雑誌』2019年4月号

705_04『日本労働研究雑誌』2019年4月号は、「研究対象の変化と新しい分析アプローチ」が特集です。


https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2019/04/index.html


 


経済学


インターネットを利用した「経済実験」の動向と展望 森 知晴(立命館大学准教授)


エビデンスに基づく政策形成と経済学 川口 大司(東京大学教授)


チーム研究の作法─フィールド実験の立上げから運営まで 佐々木 周作(京都大学大学院特定講師)


企業内データの活用─人事データで何がわかるのか? 佐藤 香織(国士舘大学講師)


人的資源管理


相互行為分析のアイディア─ワークプレイス研究とのかかわり 秋谷 直矩(山口大学講師)


人的資源管理論と社会ネットワーク分析─人事管理施策による組織活動の変化を焦点に 若林 直樹(京都大学教授)


マルチレベル分析の特徴とHRM研究に関するレビュー─HLMを中心に 小川 悦史(大阪経済大学准教授)


法律


労働法における立法学・法政策学 中窪 裕也(一橋大学教授)


労働法学における比較法の今日的意義 桑村 裕美子(東北大学准教授)


心理学


ポジティブ心理学の挑戦 宇野 カオリ(筑波大学研究員)


クラウド型オンライン心理学実験参加者募集・管理システムの普及に向けて 村山 綾(近畿大学講師)


教育


回顧調査とパネル調査の特性を考える─「教育と職業」の調査に関連して 中澤 渉(大阪大学教授)


記述されにくい働き方・生き方を記述する─若者の仕事と生活をめぐるインタビュー,エスノグラフィー 尾川 満宏(愛媛大学准教授)


「言葉」を分析することの意義とその留意点 牧野 智和(大妻女子大学准教授)


労使関係


労働史研究におけるオーラルヒストリーと現状調査インタビュー 南雲 智映(東海学園大学准教授)


動態的で調整的な〈課業〉を書く─事業計画とPDCAに着目したA社事例調査の方法 上田 眞士(同志社大学教授)


今いちばん時宜に適しているというか時の話題にどんぴしゃなのは川口大司さんのEBPMの話でしょうが(毎勤の話も出てきます)、私の関心からするとやはり労働法分野の二つの文章を挙げておきます。中窪さんのはまさに立法学、法政策学という私の主著に関わる分野で、「いずれにしても、今日の状況下で労働法に関してどのような法政策学を形成し、発展させるべきか。その具体的な方法論を含めて、議論はまだ始まったばかりである」と述べています。


 

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『労働六法2019』

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旬報社より『労働六法2019』をお送りいただきました。毎年ありがとうございます。

労働法に関係する法律だけでなく重要な告示や通達も網羅。また、労働法に関係する憲法や民法なども掲載。国際労働法も掲載し、重要判例も紹介し、労働法の実務に最適。毎年刊行し、その時々の法改正等にも対応。
労働時間法制の見直しや同一労働同一賃金などを規定する「働き方改革関連法」、外国人材の拡大をめざす「入国管理法」の改正に対応。働き方改革関連法の施行にあたっての簡単な解説を掲載!!
重要判例に「ハマキョウレックス事件」を追加収録。
という趣旨は変わりませんが、今年の版は苦労したようです。というのは、もう働き方改革のいくつかの施行が目の前(1週間後の4月1日)に迫っているのに、まだ高度プロフェッショナル制度の省令や指針がでておらず、本書ではやむを得ず労政審で了承された案をのっけているからです。p90以下参照。
また、やはり4月1日施行の入管法改正(特定技能関係)も、省令が間に合わなかった跡が残っています。まあ、本来は先月出版するはずのものをぎりぎりまで遅らせて、もう待ちきれないと年度内刊行に踏み切ったということなんでしょうが。

 

(追記)
というわけで、ぎりぎりまで待って見切り発車(発行)したとたんに、その高度プロフェッショナルの省令指針が公布されて、悔しい思いをにじませながらツイートする『労働六法』アカウントがこちらです。

 

本日、やっと、高度プロフェッショナル制度等に対応した労基法施行規則と安全衛生法施行規則の改正が公布されました。また、新たな指針(厚労告88号)も出されています。

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大内伸哉『非正社員改革』

大内伸哉さんより新著『非正社員改革―同一労働同一賃金によって格差はなくならない』(中央経済社)をおおくりいただきました。旺盛な筆力に衰えはないようです。


正社員と非正(非正規)社員の格差が社会問題化するなか打ち出された同一労働同一賃金の原則は、何が問題か。非正社員をめぐる紆余曲折を正しく理解し、格差対策を考える。
例によっていつもの大内節全開ですが、過去の『解雇改革』『労働時間制度改革』がどちらかというと立法の不活動を打破するために「さあ、これをやれ!!」と鼓吹する感じの本であったのに対して、本書は「はしがき」の言葉を借りれば、「立法の過活動を抑えるために、なぜ立法介入が必要なのかを問い直すという、逆方向の検討をしようと」しています。
ただ、私の見るところ、その議論は必ずしも整合的ではなくなっているのではないかとも思われます。
まず今回の働き方改革の「同一労働同一賃金」なるものへの批判については、実は似たような感想を抱いている人は多いのではないかと思いますが、まあ、あんまりはっきり言う人がいないので、こうなっている面もあるのでしょう。ただまあ、これは政治的な絡みもあったりして、みんないささか歯に衣着せてしまうので、大内節が目立ったりするわけです。
それに対して、とりわけ2012年改正による無期転換ルールに対して、「採用の自由」を旗印に掲げての批判は、正直いささかずれている感があります。そもそも反復更新された有期契約労働者の雇止めの場面で、全くの新規採用でどんな奴かわからない者を前提にした採用の自由の議論を持ってくることには違和感があります。それこそ、その場面は実態として解雇の場面と類似しているという日欧共通の社会認識があるからこそ、雇止めを濫用と考える思考が生まれてくるのであって、そこを、EUでは入口規制があるから出口規制が正当化されるが、日本は入口規制がないのだから出口を規制するのはおかしいというのは、やや逆転していると思います(というか、EUの入口規制は事実上空洞化しているわけですし)。
ただ、雇止め規制に危惧が持たれるのはそれなりの理由があって、それはむしろ正社員の解雇規制(というのは実はミスリーディングで、解雇がしにくくなっているという社会的事態)が、無期転換に反射して、永遠に切れなくなってしまうんではないかという危惧なのですが、それは本来解雇規制の問題として論じるべきことなんですね。
という風に、読むと山のように感想が湧いてきます。物事を表層的にではなく考えるためには、時々こういう本を読むことが必要です。

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佐藤厚「スキル形成の独英米日比較」@『生涯学習とキャリアデザイン』Vol.16-1

一昨日(3月20日)、JILPT主催でロナルド・ドーア先生追悼記念シンポジウム「産業社会の座標軸-ロナルド・ドーアの遺産」を開催し、予想を上回る多くの方々が詰めかけました。
で、そのパネルディスカッションでフロアからコメントされた法政大学キャリアデザイン学部の佐藤厚さん(JILPTのOBでもあります)から、「これ読んで」と渡されたのが、標記論文でした。探すと既にネット上にPDFファイルで全文が読めるようになっています。
この論文、比較雇用システム論を徒弟制の歴史から分析したもので、上記シンポジウムが捧げられたドーアをはじめ、ストリーク、ホールとソスキス、マースデン等々を吟味した上で、各国の徒弟制の歴史を振り返って各国の雇用システムがなぜこのようになったのかを論じています。
大変面白く、読みながらわくわくするような論文なので、是非リンク先を読んでみて下さい。
ちなみに、注の1)に、「本ノートの構成に際しては、濱口(2018)から多くの示唆を得ている」とありまして、これはJIL雑誌に書いた「この国の労働市場」という特集の「横断的論考」という文章のことです。
こういう形で、わたくしの問題意識が反響してより深みのある論文が書かれていくのはありがたいことです。

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学校事務のおばちゃんと労働基準法

昨日のエントリ(地方公務員と労働基準法(『労基旬報』2019年3月25日号))に、焦げすーもさんからツイッターでコメントが:
地方公務員と労働基準法@『労基旬報』3月25日号
→学校事務のおばちゃんであるオカンから、36協定の適用について質問を何度も受けているが、明確に答えづらいのよね。。
なかなかニッチなところを狙ってきますな。
えーと、学校事務のおばちゃんというのは、事業で言うと第12号「教育、研究又は調査の事業」なので、官公署とともに労働基準監督官が臨検監督できない領域です。
ところが、教員ではないので、給特法の適用は受けません。なので、
①第36条はフルに適用される。ゆえに36協定を締結しなければ残業させられない
②第33条第3項は適用されない。ゆえに以下同文。
③第37条はフルに適用される。ゆえに残業させたら残業代を払わなければならない
ということになります。
そう、労働時間法制自体は他の労働者(官公署及び教員以外の地方公務員)と基本的に同じなのですが、ただ一つ違っているのは、これらの違反を摘発すべきは人事委員会または地方公共団体の長であるという点だけなのです。

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地方公務員と労働基準法@『労基旬報』3月25日号

『労基旬報』3月25日号に「地方公務員と労働基準法」を寄稿しました。
 前回の「公立学校教師の労働時間規制」では、給特法という特別法が教師という職種に着目したものではなく、あくまでも地方公務員という身分に基づくものであり、民間労働者である私立学校や国立学校の教師には一切適用されないものであることを解説しました。そしてそこで「ここも誤解している人がいますが、労働基準法は地方公務員にも原則的に適用されます」と述べたのですが、ここはもう少し親切に詳しく解説しておかなければならなかったところかも知れません。そこで、今回はやや基礎知識になりますが、地方公務員への労働基準法の適用について解説しておきたいと思います。
 そもそも、1947年に労働基準法が制定されたとき以来、同法第112条は「この法律及びこの法律に基いて発する命令は、国、都道府県、市町村その他これに準ずべきものについても適用あるものとする」と明記しています。反対解釈される恐れがあるので念のために設けられた規定です。現在は別表第1に移されてしまいましたが、かつては第8条に適用事業の範囲という規定があり、そこには「教育、研究又は調査の事業」(第12条)、「病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業」(第13号)に加え、第16号として「前各号に該当しない官公署」まであったのです。公立学校や公立病院はもとより、都道府県庁や市町村役場まで、何の疑問もなく労働基準法の適用対象でした。制定時の寺本広作課長は、「蓋し働く者の基本的権利としての労働条件は官吏たると非官吏たるとに関係なく同一に保障さるべきものであって、官吏関係に特別な権力服従関係はこの法律で保障される権利の上に附加されるべきものとされたのである」と述べています。
 これを前提にわざわざ設けられたのが法第33条第3項です。災害等臨時の必要がある場合は36協定がなくても時間外・休日労働をさせることができるというだけでは足りないと考えられたからこそ、「公務のために臨時の必要がある場合」には「第八条第十六号の事業に従事する官吏公吏その他の公務員」に時間外・休日労働をさせることができることとしていたのです。また、労働基準法施行規則には次のような、公務員のみが対象となるような特別規定がわざわざ設けられていました。
第二十九条 使用者は、警察官吏、消防官吏、又は常備消防職員については、一日について十時間、一週間について六十時間まで労働させ、又は四週間を平均して一日の労働時間が十時間、一週間の労働時間が六十時間を超えない定をした場合には、法第三十二条の労働時間にかかわらず、その定によつて労働させることができる。
第三十三条 警察官吏、消防官吏、常備消防職員、監獄官吏及び矯正院教官については、法第三十四条第三項の規定は、これを適用しない。
 こうした規定を見てもし今の我々が違和感を感じるとすれば、それはその後の法改正によって違和感を感じるようにされてしまったからなのです。そして、公務員の任用は労働契約に非ずという、実定法上にその根拠を持たない概念法学の影響で、いつしか公務員には労働法が適用されないのが当たり前という間違った考え方が浸透してしまったからなのです。ちなみに労働法学者の中にも、労働基準法が地方公務員に原則適用されるという事実に直面して「公務員の任用関係は労働契約関係と異なるという議論も、これでは説得力を失いかねない」などとひっくり返った感想を漏らす向きもありますが*1、そもそも「働く者の基本的権利としての労働条件は官吏たると非官吏たるとに関係なく同一に保障さるべきもの」というのが労働基準法の出発点であったことをわきまえない議論と言うべきでしょう。
 その経緯をざっと見ておきましょう。早くも占領期のうちに、公務員の集団的労使関係法制の改正のあおりを食らう形で労働基準法制まで全面的ないし部分的な適用除外とされてしまいました。1948年7月、マッカーサー書簡を受けて制定された政令第201号は公務員の団体交渉権及びスト権を否定しましたが、その中で労働基準法第2条の「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきもの」との規定が、マッカーサー書簡の趣旨に反するとして適用されないこととされました。これはまだ集団的労使関係法制に関わる限りの適用除外でしたが、同年11月の改正国家公務員法により、労働組合法と労働関係調整法にとどまらず、労働基準法と船員法についてもこれらに基づいて発せられる命令も含めて、一般職に属する職員には適用しないとされました(原始附則第16条)。そして「一般職に属する職員に関しては、別に法律が制定実施されるまでの間、国家公務員法の精神にてい触せず、且つ、同法に基く法律又は人事院規則で定められた事項に矛盾しない範囲内において、労働基準法及び船員法並びにこれらに基づく命令の規定を準用する」(改正附則第3条第1項本文)とされ、準用される事項は人事院規則で定める(同条第2項)とされましたが、そのような人事院規則は制定されていません。また、「労働基準監督機関の職権に関する規定は、一般職に属する職員の勤務条件に関しては、準用しない」(同条第1項但書)と、労働基準監督システムについては適用排除を明確にしました。この改正はどこまで正当性があったか疑わしいものです。否定された団体交渉権やスト権と全く関わらないような最低労働条件を設定する部分まで適用除外する根拠はなかったはずです。時の勢いとしか説明のしようがありません。
 これに対して、1950年12月に成立した地方公務員法では、少し冷静になって規定の仕分けがされています。労働組合法と労働関係調整法は全面適用除外であるのに対し、労働基準法については原則として適用されることとされたのです。ただし、地方公務員の種類によって適用される範囲が異なります。地方公営企業職員と単純労務者は全面適用です。教育・研究・調査以外の現業職員については、労使対等決定の原則(第2条)及び就業規則の規定(第89-93条)を除きすべて適用されます。公立病院などは、労使関係法制上は地公労法が適用されず非現業扱いですが、労働条件法制上は現業として労働基準法がほぼフルに適用され、労働基準監督機関の監督下におかれるということになります。近年、医師の長時間労働が問題となる中で、公立病院への臨検監督により違反が続々と指摘されているのはこのおかげです。
 ところがこれに対して、狭義の非現業職員(労働基準法旧第8条第16号の「前各号に該当しない官公署」)及び教育・研究・調査に従事する職員については、上の二つに加えて、労働基準監督機関の職権を人事委員会又はその委員(人事委員会のない地方公共団体では地方公共団体の長)が行うという規定(地方公務員法第58条第3項)が加わり、労働基準法の労災補償の審査に関する規定及び司法警察権限の規定が適用除外となっているのです。人事委員会がない場合には、自分で自分を監督するという、労働基準監督システムとしてはいかにも奇妙な制度です。このため、教師の長時間労働がこれほど世間の話題になりながらも、公立学校への臨検勧告が行われることはないのです。
 しかし、にもかかわらず、労働基準法が原則適用されているという事実には何の変わりもありません。上で労働基準法施行規則旧第29条、第33条を引用しましたが、これらは1950年の地方公務員法成立後もずっと労基則上に存在し続けてきました。第29条が削除されたのは労働時間短縮という法政策の一環として1981年の省令により1983年度から行われたものであり、第33条の方は対象を増やしながらなお現在まで厳然と存在し続けています。
第三十三条 法第三十四条第三項の規定は、左の各号の一に該当する労働者については適用しない。
一 警察官、消防吏員、常勤の消防団員、准救急隊員及び児童自立支援施設に勤務する職員で児童と起居をともにする者
 団結権すら禁止されている警察官や消防士にも、労働基準法はちゃんと適用されていることを示す規定です。 

*1小嶌典明・豊本治「地方公務員への労働基準法の適用」『阪大法学』63巻3-4号。

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高齢者雇用をめぐる課題と展望@『生産性新聞』3月15日号

『生産性新聞』3月15日号に「高齢者雇用をめぐる課題と展望」を寄稿しました。
少子高齢化が進み、労働力不足が深刻化する中で、60歳以降の高齢者の雇用確保や就業機会の拡大が社会的な問題となっている。 高齢者雇用をめぐる最近の展開を見ると、「働き方改革実行計画」に基づき、2018年3月に年齢にかかわりない多様な選考・採用機会の拡大に向けて、転職者の受入れ促進のための指針が策定され、同年6月には、人生100年時代構想会議が「人づくり革命基本構想」を策定し、65歳以上への継続雇用を唱道した。そして、同年10月には、「未来投資会議」が70歳までの就業機会確保を唱道し、2019年夏までに方針を決定し、法案を提出というスケジュールになっている。・・・・

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フランスにおける若者の就職とキャリア@五十畑浩平

シノドスに、五十畑浩平さんが「フランスにおける若者の就職とキャリア」を書かれていますが、フランス、というかドイツみたいなデュアルシステムのない欧米型労働社会では若者がどういう目に遭うのかを、わかりやすく説明しています。

https://synodos.jp/economy/22490

フランスの場合、あるいはフランス以外の欧米諸国で一般的であるが、日本のように職務経験のない新卒者を採用し人材を育成する慣行はなく、あくまで個人の保有する資格や職務経験によって採用される。

こうした即戦力重視の採用では、したがって、働いたことのない若者は、必然的に一番不利になるため、希望の職が見つからなかったり、安定したポストが見つけられなかったりする・・・

というのは、拙著や海老原さんの本で繰り返し説いていることですし、

・・・では、職務経験のまったくない一般的な若者はどのように就職をするのであろうか。フランスでは、職務経験の乏しい、あるいはまったくない若者は、有期雇用や派遣などの非正規雇用を経験し、職務経験を積んだうえで、日本の正社員に相当する無期限雇用にたどり着くのが一般的である。・・・

というのも口が酸っぱくなるほど言っていることですが、それが学歴別に大きな格差があるというのは、この五十畑さんの文章が一番明確に示していることでしょう。

・・・この状況を学歴別にみてみよう。修士修了レベル(グランドゼコール卒も含む)の場合、4人に3人以上の76%の若者がすぐに就職しており、遅れて就職した10%の若者とあわせ、9割近い86%が卒業3年後の時点で職に就くことができている。この状況は学歴の水準が低くなるにつれてさがっていく。大卒レベルとなると77%となり、高卒レベルであれば67%にまでさがる。中卒程度である無資格の若者にいたっては、卒業3年後に就職できている割合は、37%にまで落ち込んでいる。

すごく露骨に言えば、未経験でもすぐに採用してくれる高学歴者と、(非正規で)経験を積んでもなかなか採用してくれない低学歴者の間の落差が、日本では想像がつかないくらい大きいのがフランスであると。

・・・実際、中卒程度の無資格者は工員に、高卒者は従業員に、大卒者は中間職に、修士修了者は管理職に就く割合がもっとも高くなっている。このように、最初から学歴によって就く役職のすみわけがしっかりとできており、キャリア形成の「スタートライン」が学歴によって変わっているのが特徴と言える。あくまで「スタートライン」は一緒でその後の昇進スピードや昇進の幅に学歴によって差を持たせる日本に対し、学歴によって入職時「スタートライン」そのものが変わるフランスは、ある意味、日本よりも学歴主義であると言える。

そして、これも拙著や海老原さんの本では結構繰り返し説いている割に、あまり皆さんの胸にすとんと落ちていなさそうなのが、修士卒という高学歴者は採用当初から管理職という職種で採用されているのであり、学士卒という中学歴者は採用当初から中くらいのポストで採用され、高卒という低学歴者は(何とか潜り込めても)採用当初からずっとヒラ従業員であり、中卒という最低学歴者は(なんとかたどりついても)ずっと末端の労務者であるという、学歴が即職種であり、即会社内の地位であり、即社会階級であるという露骨な構造です。

逆に言えば、戦後日本はそういう(戦前の日本には同じように明確に存在した)学歴即職種、即社内地位、即階級という社会のあらゆる場面を貫く階級構造を(少なくとも)目に見えなものにしたという点で世界的には極めて異例の存在であったということなわけです。

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労働者性の問題、団体交渉権の問題

例のコンビニエンスストア店長の労働者性の問題について、中央労働委員会が労働者性を否定する決定を下したという件ですが、

https://www.mhlw.go.jp/churoi/houdou/futou/dl/shiryou-31-0315-2.pdf (ファミリーマート事件)

https://www.mhlw.go.jp/churoi/houdou/futou/dl/shiryou-31-0315-1.pdf (セブンイレブン事件)

まあ、労働者性ありやナシやという法学的な議論を厳密にやれば、こういう結論になる可能性が高いということは想定されていたところです。

一方で、労働者であるかどうかは別として、集団的な形で交渉して物事を決めるという枠組みが不適切なものかそれともむしろ適切なものかという点からすると、コンビニオーナーたちの団体交渉適格性はかなり高いように思われますが、残念ながらそれにふさわしい法的枠組みはないということなのでしょう。

いや実は、一見これにふさわしいように見える法制度はあるのです。経済産業省が所管する中小企業等協同組合法では、事業協同組合等に団体交渉権を認めています。

http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=324AC0000000181#65

第九条の二 事業協同組合及び事業協同小組合は、次の事業の全部又は一部を行うことができる。
六 組合員の経済的地位の改善のためにする団体協約の締結
12 事業協同組合又は事業協同小組合の組合員と取引関係がある事業者(小規模の事業者を除く。)は、その取引条件について事業協同組合又は事業協同小組合の代表者(これらの組合が会員となつている協同組合連合会の代表者を含む。)が政令の定めるところにより団体協約を締結するため交渉をしたい旨を申し出たときは、誠意をもつてその交渉に応ずるものとする。
13 第一項第六号の団体協約は、あらかじめ総会の承認を得て、同号の団体協約であることを明記した書面をもつてすることによつて、その効力を生ずる。
14 第一項第六号の団体協約は、直接に組合員に対してその効力を生ずる。
15 組合員の締結する契約であつて、その内容が第一項第六号の団体協約に定める基準に違反するものについては、その基準に違反する契約の部分は、その基準によつて契約したものとみなす。

(あつせん又は調停)
第九条の二の二 前条第十二項の交渉の当事者の双方又は一方は、当該交渉ができないとき又は団体協約の内容につき協議が調わないときは、行政庁に対し、そのあつせん又は調停を申請することができる。
2 行政庁は、前項の申請があつた場合において経済取引の公正を確保するため必要があると認めるときは、すみやかにあつせん又は調停を行うものとする。
3 行政庁は、前項の規定により調停を行う場合においては、調停案を作成してこれを関係当事者に示しその受諾を勧告するとともに、その調停案を理由を付して公表することができる。
4 行政庁は、前二項のあつせん又は調停については、中小企業政策審議会又は都道府県中小企業調停審議会に諮問しなければならない。

ただ、労働組合法上、労働組合というのは全く自由に結成することができ、許可だの認可だのは一切必要はなく、勝手に労働組合を作って団体交渉を要求すれば、彼らが労働組合法上の労働者である限り、相手方はそれに応じなければいけませんが、この中小企業協同組合法では、この団体交渉権その他を得るためには、行政庁の設立の認可を受けなければなりません。

(設立の認可)
第二十七条の二 発起人は、創立総会終了後遅滞なく、定款並びに事業計画、役員の氏名及び住所その他必要な事項を記載した書面を、主務省令で定めるところにより、行政庁に提出して、設立の認可を受けなければならない。

労働者性の議論をぎりぎりやっていくという方向も重要ですが、労働者であるか否かを超えて、社会的にある種の集団的«労使»関係の枠組みで物事を解決していくような枠組みをいかに広く作っていくかという観点も同時に必要になっていくように思われます。

11021851_5bdc1e379a12a (参考)

『日本の労働法政策』

第3部 労働条件法政策
第7章 非雇用労働の法政策
第2節 その他の非雇用労働者への法政策

3 協同組合の団体協約締結権*21

 労働組合法上の「労働者」は「賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」とされており、労働基準法上の「使用される者で、賃金を支払われる者」よりもやや広くなっている。実際に、プロ野球選手や建設業の一人親方の労働組合も存在する。
 しかし、それだけではなく、法制的には明らかな自営業者に対しても、日本の法制は既に集団的労使関係システムに類似した法制度を用意している。すなわち、各種協同組合法は組合員の経済的地位の改善のためにする団体協約の締結を各種組合の事業として挙げ、しかもこれに相手方の交渉応諾義務や団体協約の規範的効力、行政庁による介入規定などが付随している。
 このうち、特に労働者との連続性の強い商工業の自営業者を対象とした中小企業等協同組合法についてみると、1949年7月の制定時に既に事業協同組合の事業として「組合員の経済的地位の改善のためにする団体協約の締結」(第70条第1項第5号)を挙げ、この「団体協約は、あらかじめ総会の承認を得て、同項同号の団体協約であることを明記した書面をもつてすることによつて、その効力を生」じ(同条第4項)、「直接に組合員に対して効力を生ずる」(同条第5項)とともに、「組合員の締結する契約でその内容が第一項第五号の団体協約に定める規準に違反するものについては、その規準に違反する契約の部分は、その規準によつて契約したものとみなす」(同条第6項)とその規範的効力まで規定した。これらは協同組合連合会の締結する団体協約についても同様である。
 これら規定は1955年改正で第9条の2に移されたが、その後1957年改正で団体交渉権の規定が設けられた。すなわち、「事業協同組合又は事業協同小組合の組合員と取引関係がある事業者(小規模の事業者を除く)は、その取引条件について事業協同組合又は事業協同小組合の代表者(これらの組合が会員となつている協同組合連合会の代表者を含む)が政令の定めるところにより団体協約を締結するため交渉をしたい旨を申し出たときは、誠意をもつてその交渉に応ずるものとする」(第9条の2第5項、現第12項)とされており、この「誠意をもつて」とは、下記商工組合について「正当な理由がない限り、その交渉に応じなければならない」と規定しているのと同趣旨と解されている。
 さらに同改正によって斡旋・調停の規定も設けられた。すなわち、「交渉の当事者の双方又は一方は、当該交渉ができないとき又は団体協約の内容につき協議が整わないときは、行政庁に対し、そのあつせん又は調停を申請することができ」(第9条の2の2第1項)、「行政庁は、前項の申請があつた場合において経済取引の公正を確保するため必要があると認めるときは、速やかにあつせん又は調整を行」い(同条第2項)、その際「調停案を作成してこれを関係当事者に示しその受諾を勧告するとともに、その調停案を理由を附して公表することができる」(同条第3項)。
 なお、これら改正と同時に中小企業団体の組織に関する法律が制定され、商工組合及び商工組合連合会に組合協約締結権が認められ(第17条第4項)、商工組合の組合員と取引関係にある事業者等は「正当な理由がない限りその交渉に応じなければならない」(第29条第1項)。もっとも組合協約は「主務大臣の認可を受けなければその効力を生じ」ず(第28条第1項)、また主務大臣は商工組合又はその交渉の相手方に対し、組合協約の締結に関し必要な勧告をすることができる」(第30条)と、行政介入が強化されている。商工組合等に関しては、1999年に中小企業の事業活動の活性化等のための中小企業関係法律の一部を改正する法律によって組合協約関係の規定がばっさりと削られ、上記事業協同組合の規定を準用する(第17条第7項)という形になった。
 なおこの外に、自営業者の団体による団体協約の締結を規定している法律としては、1947年の農業協同組合法(組合員の経済的地位の改善のためにする団体協約の締結、規範的効力あり)、1948年の水産業協同組合法(同前)、1954年の酪農及び肉用牛生産の振興に関する法律(規範的効力の規定なし)、同年の輸出水産業の振興に関する法律(規範的効力あり)、1957年の内航海運組合法(認可制、規範的効力あり)、1978年の森林組合法(規範的効力あり)がある。
 ちなみに、こういった自営業者よりも実態としては労働者に近いはずの家内労働者については、家内労働法において特に団体協約締結権の規定は置かれていない。なまじ、労働法制の枠組みの中におかれると、かえって柔軟な対応は困難になるように見える。もっとも、かつての社会党の法案には家内労働者組合と委託者との団体協約の規範的効力や、斡旋、調停、委託者の不当行為に対する命令といった規定が盛り込まれていた。

(参考)

https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2017/0809/007-009.pdf (基調報告 日本的柔軟性からデジタル柔軟性へ(『ビジネス・レーバー・トレンド』2017年8・9月号))

集団的“労使”関係の再認識

 最後に、一つ指摘しておきたいのは、集団的労使関係 の意義を、再認識する必要があるのではないかという ことです。自営業(雇用類似の働き方)は、法的には 厳密な意味で労使関係はないわけです。しかし、エン プロイヤーではなくても、使う側、ユーザーというの はあるわけですし、エンプロイーではなくても、労務 を提供する人、ワーカーはいるわけです。事実上、労 使関係に近い社会関係が存在するはずです。

 そうすると、こうした人々にどういうルールを設定 するか。そして、そのルールをどのように実施していくかについて、これを労使関係といっていいのか、わ かりませんが、集団的な労使関係を活用できるかどう かが、今後の課題になるのではないでしょうか。集団 的といっても大きく2種類あり、一つは、労働組合タ イプの結社型の集団性、もう一つは労使協議会タイプ の機関的な集団性。これを組み合わせながら、解決の 方向性を考えていく必要があるのではないかと考えて おります。

 日本には労働組合法があり、そこで労働組合は労働 協約を締結することができますが、実はそれだけでは なく、六法全書の経済法のところに中小企業協同組合 があり、それを見ると、多くの方はご存じないかもし れませんが、協同組合も自分たちのメンバーのために 交渉をし、団体協約を締結する権利があると書かれて います。

 いわゆる独禁法などの競争法との関係をどう整理す るか。労働者の外縁にあるような人々を集団的な枠組 みでどのように対応していくかを考える上で、拠り所 になる法制度があるのかもしれない。若干トリビアル な知識を提供させていただいて、私の基調報告にした いと思います。

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セバスチャン・ルシュヴァリエ『日本資本主義の大転換』(再掲)

20190315flier2x 昨日、JILPTとフランス国立社会科学高等研究院/日仏財団の共催で、「働き方改革・生産性向上・well-being at work─日仏比較・労使の視点から」を開催しました。

https://www.jil.go.jp/event/sympo/20190315/index.html

Sebastien わたくしは後半のパネルディカッションのモデレーターと称して、単に「はい、次」と言っていただけですが、パネル冒頭で一番中心的なテーマを話していただき、また最後の締めの言葉も語っていただいた、日仏財団理事長でもあるルシュヴァリエさんについては、実は以前本ブログでその著書を紹介していたことがあります。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2016/03/post-cfa8.html

0610870セバスチャン・ルシュヴァリエ著・新川敏光監訳『日本資本主義の大転換』(岩波書店)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/06/2/0610870.html

かつて「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と称賛され,世界各国の注目を集めた日本経済の凋落はなぜ生じたのか.1980年代以降の日本経済の歩みを新たな枠組みで分析.「改革の遅れが原因」とする通俗的な見方を排して,一連の改革の失敗や問題点を指摘しながら,日本経済が現在どのような道を歩んでいるのかを明らかにする.フランス人研究者による新しい日本経済論!

フランス人による日本経済分析というと、今から30年~20年前に流行したレギュラシオン学派が思い出されますが、その頃のポストフォーディズムの熱狂の憑き物が落ち、失われた20年が過ぎた今、改めてこの30年間の日本の来し方を冷静に考える上で、こういう欧風制度学派のまなざしは役に立ちます。

まえがき

序章 なぜフランス人経済学者は日本の資本主義に興味をもったのか,そしてそれが日本にとってなぜ重要なのか

第1章 資本主義の多様性と資本主義の未来への日本からの教訓

第2章 J企業モデルの終焉?

第3章 日本の資本主義は今なお調整的なのか

第4章 現代日本の社会的和解の特質

第5章 新自由主義世界の教育システムとは

第6章 シリコンバレー・モデルが日本にとって唯一の道か

第7章 日本資本主義はグローバリゼーションに順応すべきか

終章 資本主義と新自由主義――日本からの教訓

監訳者あとがき

雇用システムに関わる論点としては、とりわけ第4章の最後のところで、平等社会から非平等社会への移行の本質として、「労働市場の再断片化」という概念を提案しています。

・・・労働市場の断片化が構造的にもたらされたにせよ、歴史的に見れば、それは戦後の亀裂に沿って強化されてきたといえる。今日議論されている日本の不平等は、1990年代に生み出されたものではなく、むしろずっと古く、終戦直後に形成された雇用制度、そしてそれに伴う不平等に関するもう一つの論争にまでさかのぼる。問題は、日本の賃金労働関係は、雇用保障創出のために断片化を必要とするのか、あるいは一時的に特定の種類の労働者を不安定な状況にさらすとしても、本質的には包摂的な制度であるのかと言うことである。本書の考えでは、断片化は、戦後の社会的和解にとって不可欠なものであった。したがって、日本の雇用システムは、三種の神器(・・・・)よりも、安定と不安定の均衡による労働市場の異なる断片の接合として定義される。このような均衡と妥協こそ、直接あるいは間接に新自由主義的な政策によって挑戦を受けているのである。危機ではなく、これらの政策こそが亀裂の真の源泉である。

ということで、昨日のパネルでルシュヴァリエさんという方に興味を持たれた方は、ぜひこの本を読んでみてください。

なお、彼の奥さんは、本ブログでも何冊かその著書を紹介してきた笠木映里さんです。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-3226.html (笠木映里『社会保障と私保険』)

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「労働法の人的適用対象の法政策」@『季刊労働法』264号

264_hp『季刊労働法』264号がとどきました。

https://www.roudou-kk.co.jp/books/quarterly/6701/

◎特集 動き出す「働き方改革」
鼎談・働き方改革関連法と人事管理 中央大学教授(司会) 佐藤博樹  中央大学客員教授 荻野勝彦 東京大学教授 水町勇一郎
雇用形態による労働条件格差是正法の展開と課題 千葉大学教授 皆川宏之
わが国における労働時間規制の適用除外制度―高度プロフェッショナル制度の創設に関連して― 税理士・博士(法学) 幡野利通
36協定の上限規制をめぐる法解釈・実務対応上の課題 社会保険労務士 北岡大介
テレワーク再考―雇用型テレワークの実態と課題の理解に向けて 労働政策研究・研修機構主任研究員 池添弘邦
韓国版働き方改革の行方 韓国外国語大学・ロースクール教授/東京大学法学政治学研究科・客員研究員 李ジョン

第2特集 「2018年問題」を振り返る
非正規労働者の雇用終了法理と2018年問題 駒澤大学教授 篠原信貴
2018年問題を考える~労働者側弁護士の立場から~ 弁護士 嶋﨑 量
有期雇用契約と派遣の2018年問題について 弁護士 木下潮音

■論説■
割増賃金請求訴訟における労使協定を用いた実労働時間数の推定方法に関する一考察 弁護士 渡邊 岳
「仕事の世界における暴力とハラスメント」に関する国際労働機関(ILO)での議論 ILO駐日事務所 田口晶子   ILO駐日事務所 木下徹郎

■アジアの労働法と労働問題 第36回■
金属労協のアジアでの活動 全日本金属産業労働組合協議会(金属労協/JCM)事務局長 浅沼弘一

■労働法の立法学 第53回■
労働法の人的適用対象の法政策 労働政策研究・研修機構労働政策研究所長 濱口桂一郎

■判例研究■
グループ会社におけるセクハラ事案の申出を受けた親会社の対応義務 イビデン事件・最判平成30・2・15労判1181号5頁 岡山大学准教授 土岐将仁

労働契約法7条における周知の意義 河口湖チーズケーキガーデン事件・甲府地判平成28・11・29 LEX/DB 25545729 弁護士 倉茂尚寛

■キャリア法学への誘い 第16回■
就労請求権とキャリア権 法政大学名誉教授 諏訪康雄

■重要労働判例解説■
雇止めと無期転換ルールの潜脱意図の有無 高知県立大学後援会事件・高松高判平成30年10月31日LEX/DB 25561627 日本大学教授 新谷眞人
船舶借入人の事業譲渡と雇入契約の承継 新協和海運事件・東京高判平成30年4月25日D1-Law28262570 日本大学准教授 南 健悟

わたくしの「労働法の人的適用対象の法政策」 は、遙か昔に遡ってこの問題を論じております。

はじめに
1 民法
2 商法
3 工場法
4 労働者災害扶助法・労働者災害扶助責任保険法
5 退職積立金及退職手当法
6 商店法
7 労働組合法案
(1) 法案の文言等
(2) 帝国議会の質疑
(3) 学者の意見
8 賃金統制立法におけるブルーカラーとホワイトカラー
(1) 賃金統制令
(2) 会社経理統制令
9 「従業者」概念の拡大
10 労働組合法
11 労働基準法
12 労働者災害補償保険法
(1) 制度の谷間
(2) 一人親方の擬制適用と特別加入
13 家内労働法
(1) 西陣に関する労基局判定
(2) 家内労働法をめぐる議論
14 労働者性に関する行政研究会報告
(1) 労働基準法研究会報告
(2) 労使関係法研究会報告
15 雇用類似就業者の法政策
(1) 個人請負型就業者研究会
(2) 経済産業省の動き
(3) 公正取引委員会の動き
(4) 雇用類似の働き方検討会

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給特法制定時の中基審建議及び覚書

先月、『労基旬報』に「公立学校教師の労働時間規制」を寄稿したのですが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2019/02/2019225-de99.html

その後、興味を持って給特法が1971年に制定されたときの解説書をぱらぱらと読んでいくと、

https://www.amazon.co.jp/%E6%95%99%E8%82%B2%E8%81%B7%E5%93%A1%E3%81%AE%E7%B5%A6%E4%B8%8E%E7%89%B9%E5%88%A5%E6%8E%AA%E7%BD%AE%E6%B3%95%E8%A7%A3%E8%AA%AC-1971%E5%B9%B4-%E6%95%99%E5%93%A1%E7%B5%A6%E4%B8%8E%E7%A0%94%E7%A9%B6%E4%BC%9A/dp/B000J9JRF6(文部省初等中等教育局内教員給与研究会編『教育職員の給与特別措置法解説』第一法規

法案を国会に提出する前に、当時の労働省の中央労働基準審議会に報告し、1971年2月13日に同審議会から次のような建議が出されていたんですね。

1 労働基準法が他の法律によって安易にその適用が除外されるようなことは適当でないので、そのような場合においては、労働大臣は、本審議会の意向を聞くよう努められたい。

2 文部大臣が人事院と協議して超過勤務を命じうる場合を定めるときは、命じうる職務の内容及びその限度について関係労働者の意向が反映されるよう適切な措置がとられるよう努められたい。

この建議はあくまでも労働大臣に宛てたもので、文部大臣宛ではないのですが、これを受けてその二日後、次のような覚書が結ばれていたようです。

覚書

昭和46年2月15日

文部省初等中等教育局長

労働省労働基準局長

「国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(案)」について

第65国会に提案される「国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(案)」に関し、文部省と労働省は下記の通り諒解し、文部省はその趣旨の実現に努めるものとする。

1.文部省は、教育職員の勤務ができるだけ、正規の勤務時間内に行われるよう配慮すること。

2.文部大臣が人事院と協議して時間外勤務を命じうる場合を定めるときは、命じうる職務については、やむを得ないものに限ること。

なお、この場合において、関係教育職員の意向を反映すること等により勤務の実情について十分配慮すること。

60年近く昔の証文ですが、給特法がほぼそのまま生きている以上、これも一応生きているはずでしょうね。

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道幸哲也『労働組合法の応用と課題』

07989道幸哲也『労働組合法の応用と課題 労働関係の個別化と労働組合の新たな役割』(日本評論社)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.nippyo.co.jp/shop/book/7989.html

一見個別的であっても、実際には集団的な側面を備えている紛争は少なくない。著者渾身の、生きる労組法体系を具体的に展開する。

ここ数年来雑誌等に書かれてきた今までの集団法と個別法の区別を踏み越えて新たな次元を切り開こうとする論文が並んでいます。

第1章 個別労働紛争は個別的か――集団性の端緒
 1 労働組合法にみる集団性の内実
 2 個別紛争処理の集団(法)的視点
 3 紛争処理における集団(法)的性質

第2章 集団法からみた就業規則法理
 1 集団法的視点から見た就業規則法理の問題点
 2 組合法からみた就業規則

第3章 労働法における集団的な視角
 1 労働契約法理の見直し
 2 就業規則法理の見直し
 3 個別代理を超えた組合の役割

第4章 協約自治と就業規則の不利益変更の合理性
     ――リオン事件を素材として
 1 事実関係と判旨
 2 検討

第5章 協約上の人事協議条項をめぐる法理
     ――個別人事に対する組合の関与
 1 人事協議・同意条項の実態
 2 平成以降の裁判例の傾向
 3 組合員の意向と組合の協議義務

第6章 権利実現への組合のサポート
 1 意見表明や同僚への働きかけをめぐる紛争
 2 個別紛争と組合の役割

第7章 合同労組の提起する法的課題
 1 労働組合かどうか
 2 組合活動の評価
 3 団交

第8章 非正規差別と労使関係法
 1 従業員代表制構想
 2 組合法上の解釈問題

第9章 非正規労働者の組織化と法
 1 労働契約関係での試み
 2 集団法での試み

このテーマ、私にとっては今から10年前の『新しい労働社会』の第4章で、盲蛇に怖じずよろしく無手勝流で論じてみたものととても重なっています。

現代日本で集団労使関係法の最大の論者である道幸さんが、それを忘れてしまったような個別労働法のトピックに、集団というなたを振り下ろしている感があります。

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商店の閉店時刻限定に関する建議書(昭和6年)

昭和13年制定の商店法に向けて、昭和6年4月に行われた標記建議書の文章が、90年近く後の今日にもそのまま使えてしまうのが恐ろしい・・・。

商店の閉店時刻に関し之が限定の法規なき為、徒に深夜店舗を開きて営業を為し、之が為に従業者の健康を害し、又教育修養に関する余暇を奪ひ、一面営業上に於ても営業時間の長き割合に其の能率上がらざるのみならず、徒に照明等の費用を費消するの実情なり。依て適当に営業時間の合理化を図り、此等の弊害を防ぐの必要あり。而して此の閉店時刻の限定は、購買者側に対し多少の不便あるが如きも、閉店後に於ける営業を絶対に禁止するものに非ず。且、業種、時期に依り或は地域に依り閉店の時刻を異にするを必要とする場合には、之を斟酌して適当に之を案配することとせば大なる不便を来すことなかるべし。是、本案を提出する所以なり。

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ハラスメント紛争の調停に参考人制度@WEB労政時報

WEB労政時報に「ハラスメント紛争の調停に参考人制度」を寄稿しました。

https://www.rosei.jp/readers-taiken/hr/article.php?entry_no=840

今期の通常国会に提出される予定となっている法案に、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案」がありますが、101~300人規模の中堅企業にも行動計画策定と情報公表を義務づける女性活躍推進法の改正がさほど興味を惹かないものであるのに対して、職場のいじめ・嫌がらせ、いわゆるパワーハラスメントに対する事業主の措置義務等を定める労働施策総合推進法の改正は大きな注目を集めています。この問題は、法律上は「職場における労働者の就業環境を害する言動に起因する問題」という表現になりました。・・・

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商店法(昭和13年法律第28号)

今から80年前、戦争直前のころのこの法律のほうが、24時間営業やめろは無責任だとかブランド力がどうのこう言うおっさんよりもよっぽどまともに見える今日この頃であった。

商店法(昭和13年法律第28号)
第一条 本法ハ市及主務大臣ノ指定スル町村(町村ニ準ズベキモノヲ含ム)ニ於テ物品販売業又ハ理容業ヲ営ム店舗ニ之ヲ適用ス
2 前項ノ物品販売業及理容業ノ範囲ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第二条 店主ハ本法ニ定ムル閉店時刻以後顧客ニ対シ前条ノ営業ヲ為スコトヲ得ズ但シ閉店時刻前ヨリ引続キ店舗ニ在ル顧客ニ対シテハ此ノ限ニ在ラズ
2 店主ハ閉店時刻以後ト雖モ負傷、疾病、災害其ノ他緊急ノ事由ヲ提示セル顧客ニ対シ其ノ必要ニ応ズル物品ヲ販売スルコトヲ得
第三条 閉店時刻ハ午後十時トス
2 行政官庁ハ命令ノ定ムル所ニ依リ地域ヲ限リ前項ノ時刻ヲ午後十一時迄繰延ブルコトヲ得
第四条 業務ノ繁忙ナル時期ニ付行政官庁必要アリト認ムルトキハ期間又ハ地域ヲ限リ一年ヲ通ジ六十日以内前二条ノ規定ヲ適用セズ又ハ前条ノ時刻ヲ繰延ブルコトヲ得
2 前項ノ外行政官庁臨時必要アリト認ムルトキハ期間又ハ地域ヲ限リ前二条ノ規定ヲ適用セズ又ハ前条ノ時刻ヲ繰延ブルコトヲ得
第五条 店主ハ使用人ニ毎月少クトモ一回ノ休日ヲ与フベシ
第六条 左ニ掲グル店舗ニシテ行政官庁ノ許可ヲ受ケタルモノニ付テハ第二条及第三条ノ規定ハ之ヲ適用セズ
 一 興行場、観覧場、遊技場其ノ他之ニ類スル場所ニ於ケル店舗
 二 展覧会場、共進会場、博覧会場其ノ他之ニ類スル場所ニ於ケル店舗
 三 停車場又ハ船舶発着所ニ於ケル店舗
 四 其ノ他主務大臣ノ指定スル場所ニ於ケル店舗
2 前項第二号ノ店舗ニシテ行政官庁ノ許可ヲ受ケタルモノニ付テハ前条ノ規定ハ之ヲ適用セズ
第七条 常時五十人以上ノ使用人ヲ使用スル店舗ニ在リテハ店主ハ十六歳未満ノ者及女子ヲシテ一日ニ付十一時間ヲ超エテ就業セシムルコトヲ得ズ
2 前項ノ店舗ニ在リテハ店主ハ十六歳未満ノ者又ハ女子ノ就業時間ガ六時間ヲ超ユルトキハ少クトモ三十分、十時間ヲ超ユルトキハ少クトモ一時間ノ休憩時間ヲ就業時間中ニ於テ之ニ与フベシ
3 業務ノ繁忙ナル時期ニ於テハ店主ハ行政官庁ノ許可ヲ受ケ一年ヲ通ジ六十日以内第一項ノ就業時間ヲ延長スルコトヲ得
4 前項ノ外臨時必要アル場合ニ於テハ店主ハ行政官庁ノ許可ヲ受ケ第一項ノ就業時間ヲ延長スルコトヲ得
第八条 前条第一項ノ店舗ニ在リテハ店主ハ十六歳未満ノ者及女子ニ毎月少クトモ二回ノ休日ヲ与フベシ
2 業務ノ繁忙ナル時期其ノ他臨時必要アル場合ニ於テ店主行政官庁ノ許可ヲ受ケタルトキハ前項ノ休日ヲ一回ト為スコトヲ得
第九条 行政官庁ハ命令ノ定ムル所ニ依リ店舗又ハ其ノ附属建設物ニ於ケル使用人ノ危害ノ防止又ハ衛生ニ関シ必要ナル事項ヲ店主ニ命ズルコトヲ得
第十条 天災事変ノ為又ハ事変ノ虞アル為必要アル場合ニ於テハ主務大臣ハ期間又ハ地域ヲ限リ本法ノ全部又ハ一部ヲ適用セザルコトヲ得
第十一条 行政官庁監督上必要アリト認ムルトキハ当該官吏ヲシテ店舗又ハ其ノ附属建設物ニ臨検セシムルコトヲ得但シ使用人以外ノ者ノ居室ハ此ノ限ニ在ラズ
2 当該官吏前項ノ規定ニ依リ臨検スル場合ハ其ノ証票ヲ携帯スベシ
第十二条 店主ハ店舗ノ管理ニ付一切ノ権限ヲ有スル店舗管理人ヲ選任スルコトヲ得
2 店主本法施行地内ニ居住セザルトキハ店舗管理人ヲ選任スルコトヲ要ス
3 店舗管理人ノ選任ハ行政官庁ノ認可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ但シ法令ノ規定ニ依リ法人ヲ代表スル者及支配人ノ中ヨリ選任スル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第十三条 前条ノ店舗管理人ハ本法及本法ニ基キテ発スルム命令ノ適用ニ付テハ店主ニ代ルモノトス
2 店主営業ニ関シ成年者ト同一ノ能力ヲ有セザル未成年者若ハ禁治産者ナル場合又ハ法人ナル場合ニ於テ店舗管理人ナキトキハ其ノ法定代理人又ハ法令ノ規定ニ依リ法人ヲ代表スル者ニ付亦前項ニ同ジ
第十四条 店主又ハ前条ノ規定ニ依リ店主ニ代ル者第二条第一項、第五条、第七条第一項第二項又ハ第八条第一項ノ規定ニ違反シタルトキハ五百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
第十五条 正当ノ理由ナクシテ当該官吏ノ臨検ヲ拒ミ、妨ゲ若ハ忌避シ又ハ其ノ尋問ニ対シ答弁ヲ為サズ若ハ虚偽ノ陳述ヲ為シタル者ハ三百円以下ノ罰金又ハ科料ニ処ス
第十六条 店主又ハ第十三条ノ規定ニ依リ店主ニ代ル者ハ其ノ代理人、戸主、家族、同居者、雇人其ノ他ノ従業者ガ其ノ業務ニ関シ本法又ハ本法ニ基キテ発スル命令ニ違反シタルトキハ自己ノ指揮ニ出デザルノ故ヲ以テ其ノ処罰ヲ免ルルコトヲ得ズ
第十七条 本法及本法ニ基キテ発スル命令ハ営利ヲ目的トセザル物品販売又ハ理容ノ事業ヲ為ス店舗ニ之ヲ準用ス但シ国、道府県、市町村其ノ他之ニ準ズベキモノニ付テハ店舗管理人ニ関スル規定及規則ハ此ノ限ニ在ラズ
第十八条 本法ハ汽車、汽船其ノ他ノ交通機関内ニ於ケル店舗及露店ニ之ヲ適用セズ
2 行政官庁ハ物品販売業ヲ営ム露店ニ付終業スベキ時刻ヲ定ムルコトヲ得
  附 則
本法施行ノ期日ハ各規定ニ付勅令ヲ以テ之ヲ定ム

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吉見俊哉編『平成史講義』

9784480071989 吉見俊哉編『平成史講義』(ちくま新書)を、執筆者の一人である本田由紀さんよりお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480071989/

と、お礼を言った舌の根も乾かぬうちにこういうことを言うのは失礼千万ですが、この本、はっきり言って失敗作だと思います。

平成の三〇年間は、グローバリゼーションの進展の中で、戦後に形成された日本的システムが崩壊していく時代だった。政治、経済、雇用、教育、メディア、防衛―。昭和の時代にはうまく回っていたものがすべて機能不全に陥り、そこから立ち直ろうとする挑戦の失敗と挫折の繰り返しが、平成史を特徴づけている。「平成」という時代を過去に葬り去ることなく、失敗の歴史を総括し、未来への指針を示すために。各分野の第一人者が一〇のテーマで見通す、最もリアルな平成史。

同じちくま新書の『昭和史講義』や『明治史講義』が、筒井清忠さんの下で若手歴史家たちの短い各章が統一感の取れた全体性を示していたのと対照的に、この本はてんでんばらばらの勝手な小論文を寄せ集めたものになっています。

いや、それこそ吉見俊哉先生還暦記念集とかいうなら中身バラバラでもかまわないんですが、少なくともこの内容で『平成史講義』と銘打って出すのは、平成終焉まじかに売らんかなででっち上げたといわれても仕方がないんじゃないでしょうか。

第1講 昭和の終焉
第2講 「改革」の帰結
第3講 官僚制・自治制の閉塞
第4講 会社の行方
第5講 若者の困難・教育の陥穽
第6講 メディアの窮状
第7講 平成リベラルの消長と功罪
第8講 中間層の空洞化
第9講 冷戦の崩壊
第10講 アメリカの後退・日本の漂流

私にお送りいただいた本田由紀さんの「第5講 若者の困難・教育の陥穽」の直前で「第4章 会社の行方」を書いているのは石水喜夫さんです。どちらもちくま新書で本を出しているとはいえ、その教育=労働ネクサスに対する視角はまったく逆向きであることは、彼らの本を少しでも読んでいればわかるはずでしょう。現政権に対するスタンスなどという全く表層的な次元のことは別にして。

各章を読めば読むほど、全体を貫く視角は雲散霧消していき、最後に吉見御大がまとめてくれるのかと思いきや違う方向に行って全部ほったらかし。

でも、逆にあまりにもバラバラな各章のはざまから、この本は失敗作だけれども、そうではないこういう平成史講義という本の作り方はありうるんじゃないか、というそこはかとない感覚がにおい立ってくる面もあったりします。

それはやはり、平成が始まる頃に頂点に達していた、昭和後期に確立した日本型社会システム、その部分システムとしての企業システム、雇用システム、教育システム、政治システム、行政システム等々が、この平成という30年間に、いかに変容しなかったか/したか、という観点から、その入り組んだせめぎあいとして描き出すことができれば、もう少し全体の見通しの良いすっきりした本になりえていたように思うのです。

残念ながら本書は、もっとうまく編集されていればそうなりえていた素材を、そうならなくしてしまった失敗作ですが、しかし逆に言えば、同じテーマの成功作はこう作ればいいのではないかというヒントをいっぱい提供してくれる本であるように思います。

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JILPT『カンボジアの労働・雇用・社会』

Chosa03JILPTから『海外調査シリーズ3 カンボジアの労働・雇用・社会─日系進出企業の投資環境─』が刊行されました。

https://www.jil.go.jp/publication/kaigai/chosa03.html

メコン地域の中央に位置する南部経済回廊の要衝の地。内戦や地雷というかつての負のイメージから脱却し、タイやベトナムとともに共同体の一角として存在感を増すカンボジア。そのカンボジアに進出する日系企業が円滑な経営を行うために必要な労働・雇用・社会の情報を収集しました。

カンボジアの社会経済の特質、労働市場、労働法制、労使関係、社会保障などの情報を網羅的に整理した、カンボジアの労働情勢を正しく理解するための1冊です。

1冊目がインド、2冊目がミャンマーときて、3冊目がカンボジアとは、またえらくマイナーなニッチを狙ってきたなとお思いのあなた。安心して下さい。4冊目はさらに奥地のラオスが待っています。

冗談はともかく、いままでほとんど紹介されたことのないカンボジアの労働法について、香川孝三さんが詳しく解説しています。また日系進出企業からの聞き取りによる事例紹介も興味深いと思います。

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有斐閣ストゥディア『労働法 第3版』

L15064小畑史子,緒方桂子,竹内(奥野)寿著『有斐閣ストゥディア 労働法 第3版』(有斐閣)をお送りいただきました。

http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641150645

労働法と日常生活との関わりを意識して読み進められるよう事例を活用しつつ,労働法の基本的な考え方を丁寧に解説。労働法を学ぶ意義や楽しさを実感できる,初学者に最適の1冊。第2版刊行後の新たな判例や働き方改革関連法の成立に対応した最新版。

初版が2013年、第2版が2016年なので、ほぼ3年おきというペースで改訂されています。

もはや中堅を超えつつある著者らによる初心者向けテキスト。

発行日は2019年4月1日なので、たとえばp103の「時間外労働の上限規制」の項は、その日から施行される中身を淡々と書いてあります。

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全国一律産別最賃?

まだマスコミ報道だけなので、どこまで方向性が固まっているのかよくわかりませんが、

https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201903/CK2019030702000289.html(最低賃金、業種で一律化 政府検討会、来月にも発足)

政府は、地域間で異なる最低賃金について、全国一律化を業種別に導入する方向で検討に入った。四月に始まる外国人労働者の受け入れ拡大の後、労働者を地方へ定着させる効果を狙う。厚生労働省が七日の自民党議員連盟会合で明らかにした。厚労省は、建設や介護など受け入れを拡大する十四業種を対象にすることを想定。外国人だけでなく、日本人も対象となる。

 厚労省は四月にも最低賃金の在り方を検討する有識者会議を発足させる。また関係省庁と連携し、各業界団体に働き掛ける方針で、早ければ今夏の導入を目指す。

 現行制度は毎年、厚労省の審議会を経て都道府県ごとに地域別最低賃金を決定。都市部の方が高い傾向があるため外国人労働者が地方に定着せず、地方の人手不足対策が進まないと懸念されている。

 ただ、現行でも特定の産業について労使の申し出があれば、厚労省の審議会での議論を経て、全業種共通の地域別最低賃金より高い金額を設定できる。厚労省はこの仕組みを十四業種にも適用することなどを検討する。

これ、外国人労働対策から始まった話ではありますが、最低賃金政策としても大変踏み込んだもので、ある意味では今や地域最賃に追い抜かれて消滅しかかっている産別最賃を、よりマクロな土俵で大々的に再生させるものになるのかも知れません。

今回の特定技能14業種、業界の思惑やら業所管官庁の力関係やらでこういう風に決まったんでしょうが、介護業などそのかなりのものは構造的低賃金業種でもあり、労働組合もほとんど組織されておらず、とても現行の産別最賃の枠組みでどうにかできるような状況ではないことを考えると、これはものすごいインパクトのある一打になる可能性もあります。

介護業▽ビルクリーニング業▽素形材産業▽産業機械製造業▽電気・電子情報関連産業▽建設業▽造船・舶用工業▽自動車整備業▽航空業▽宿泊業▽農業▽漁業▽飲食料品製造業▽外食業

ただ、この中のとりわけ経済産業省所管のいくつかの製造業については、それはどうかという感じもしますね。

電気・電子情報関連産業なんて、世界の最先端で競争するために、自発的に高い給料出して優秀な人材を集められるんじゃなければそもそも駄目でしょ。

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小室淑恵『働き方改革』

Komuro 昨夜、都内某所(思わせぶりだな)で小室淑恵さんより『働き方改革 生産性とモチベーションが上がる事例20社』(毎日新聞出版)をいただきました。ご本人から直接お手渡しでいただいたのです。

http://mainichibooks.com/books/business/20.html

いま日本では、「働き方改革」が政策として推進されていますが、企業の生産性向上ばかりが注目されがちです。 社会で本当の「働き方改革」が進むと、夫婦間の信頼関係が再構築され、家庭内の幸福度が上がり、子どもたちを包み込む空気に変化が起きるのだと、私たちは実感しています。

長時間労働社会では、働く人たちが疲弊し、家族との関係性に悪影響を及ぼします。たとえば、子育てや介護の現場ではイライラばかりがぶつけられます。

日本の子どもたちの自己肯定感は、先進国で最も低い。少子化は加速し、社会保障負担は年々重くなる、という悪循環が繰り返されてきました。こんな社会はもう終わりにしなくてはならない。私たちはそう思っています。 だからこそ、「働き方改革」をブームで終わらせてはならないのです。・・・

株式会社ワーク・ライフ・バランスの代表取締役社長として全国を飛び回って布教宣伝に努めている小室淑恵さんが、手掛けた20社の事例を詳しく紹介している本です。

ただその前の、「第1章 「働き方改革」が政府の大方針になるまで」で、小室さんの(言葉の正確な意味での)政府中枢へのロビイングが、決してストレートに実現していったわけではなく、スリルとサスペンスに満ちたプロセスであったことを告白しているところが興味深かったです。

彼女が前著『労働時間革命』を出した直後の2016年5月に、官邸で安倍総理に長時間労働の是正を訴え、労基法上に時間外の上限規制を設定するとともにインターバル規制を義務化すべきだと説いたそうです。

ところがその後経済界が危機感を持ち、ロビイングしたことでトーンダウンしてきたところに、例の電通事件が報じられ、一気に流れが変わった、と。

この辺りは、まさにその渦中にいた人の証言だけに、迫真みがあります。

【本書で紹介する取り組み事例】
1.UQコミュニケーションズ株式会社
2.株式会社シップス
3.大東建託株式会社
4.愛知県警察
5.株式会社えがお
6.有限責任あずさ監査法人
7.大塚倉庫株式会社
8.新菱冷熱工業株式会社
9.三菱地所プロパティマネジメント株式会社
10.株式会社かんぽ生命保険
11.日本通運株式会社 海運事業部門
12.マニュライフ生命株式会社
13.パナソニック ヘルスケア株式会社
14.静岡県教育委員会
15.岡山県教育委員会
16.自治体・三重県
17.株式会社エムワン
18.自治体・岩手県、盛岡市
19.信幸プロテック株式会社
20.中央官庁・内閣府

ちなみに、なぜか労務屋さんのブログでも、同じ本を紹介していますな。

https://roumuya.hatenablog.com/entry/2019/03/07/190832

 (株)ワーク・ライフバランスの小室淑恵さんから、ご著書『働き方改革-生産性とモチベーションが上がる事例20社』をご恵投いただきました(昨日お会いした際に手渡しで頂戴しました)。ありがとうございます。・・・

都内某所・・・・

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ロナルド・ドーア先生追悼記念シンポジウム@JILPT

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後房雄・坂本治也編『現代日本の市民社会 』

Isbn9784589039910後房雄・坂本治也編『現代日本の市民社会 サードセクター調査による実証分析』(法律文化社)をおおくりいただきました。ありがとうございます。

http://www.hou-bun.com/cgi-bin/search/detail.cgi?c=ISBN978-4-589-03991-0

市民社会の実態をデータに依拠して総合的に把握・分析。社会運動や「組織離れ」についての考察も加えた市民社会研究の決定版。さまざまな理論と先行研究を体系的に整理したテキスト『市民社会論』(2017年)の成果をふまえつつ、130点を超える図表を掲載して実態を解明。

中身は以下の通りで、経済産業研究所(RIETI)における研究のとりまとめのようです。

はじめに
序 章 日本の市民社会の実態分析 〔後房雄・坂本治也〕
[第I部 サードセクター調査でみる市民社会の実態]
第1章 サードセクター組織の基本属性 〔後房雄・坂本治也〕
第2章 サードセクター組織の人的資源 〔後房雄・山本英弘〕
第3章 サードセクター組織の財務状況 〔後房雄・坂本治也〕
第4章 サードセクター組織の政治・行政との関係性 〔後房雄・坂本治也〕
第5章 サードセクター組織の持続と変容 〔後房雄・山本英弘・小田切康彦〕
[第II部 市民社会と政治・行政の相互作用]
第6章 2つの制度改革は非営利社団法人をどう変えたか 〔岡本仁宏〕
第7章 「主務官庁制下の非営利法人」の課題――職業訓練法人と更生保護法人 〔初谷 勇〕
第8章 政府への財政的依存とサードセクター組織のアドボカシー 〔坂本治也〕
[第III部 市民社会が直面する困難]
第9章 サードセクター組織のビジネスライク化と雇用 〔仁平典宏〕
第10章 非営利組織の財源とミッション・ドリフト 〔小田切康彦〕
第11章 協同組合の現状と課題――ビジビリティとアイデンティティを高めるために 〔栗本 昭〕
第12章 社会運動を受容する政治文化――社会運動に対する態度の国際比較 〔山本英弘〕
第13章 市民社会への参加の衰退? 〔善教将大〕
終 章 現代日本の市民社会の課題と展望 〔後 房雄〕
付録1:各章の元となったRIETIディスカッションペーパーの一覧
付録2:RIETIウェブサイト上で公開中のサードセクター調査の概要と関連研究

シルバー人材センターとか職業訓練法人なども出てきます。

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『季刊労働法』264号

264_hp『季刊労働法』264号の案内が早くも労働開発研究会のホームページにアップされています。

https://www.roudou-kk.co.jp/books/quarterly/6701/

特集は、「動き出す「働き方改革」」で、いろいろと面白そうなのが並んでいます。

まず冒頭に控えるのが、佐藤博樹、荻野勝彦、水町勇一郎というよだれが出るような鼎談。

鼎談・働き方改革関連法と人事管理

中央大学教授(司会) 佐藤博樹   

中央大学客員教授 荻野勝彦

東京大学教授 水町勇一郎

荻野さんがどれくらい水町さんをいじめているのかが見物です。

雇用形態による労働条件格差是正法の展開と課題

千葉大学教授 皆川宏之

わが国における労働時間規制の適用除外制度

―高度プロフェッショナル制度の創設に関連して―

税理士・博士(法学) 幡野利通

36協定の上限規制をめぐる法解釈・実務対応上の課題

社会保険労務士 北岡大介

テレワーク再考

―雇用型テレワークの実態と課題の理解に向けて

労働政策研究・研修機構主任研究員 池添弘邦

韓国版働き方改革の行方

韓国外国語大学・ロースクール教授/東京大学法学政治学研究科・客員研究員 李ジョン

第2特集は「「2018年問題」を振り返る」です。

第2特集 「2018年問題」を振り返る

非正規労働者の雇用終了法理と2018年問題

駒澤大学教授 篠原信貴

2018年問題を考える~労働者側弁護士の立場から~

弁護士 嶋﨑 量

有期雇用契約と派遣の2018年問題について

弁護士 木下潮音

それ以外の記事は次の通りですが、

■論説■

割増賃金請求訴訟における労使協定を用いた実労働時間数の推定方法に関する一考察

弁護士 渡邊 岳

「仕事の世界における暴力とハラスメント」に関する国際労働機関(ILO)での議論

ILO駐日事務所 田口晶子   ILO駐日事務所 木下徹郎

■アジアの労働法と労働問題 第36回■

金属労協のアジアでの活動

全日本金属産業労働組合協議会(金属労協/JCM)事務局長 浅沼弘一

■労働法の立法学 第53回■

労働法の人的適用対象の法政策

労働政策研究・研修機構労働政策研究所長 濱口桂一郎

■判例研究■

グループ会社におけるセクハラ事案の申出を受けた親会社の対応義務

イビデン事件・最判平成30・2・15労判1181号5頁

岡山大学准教授 土岐将仁

労働契約法7条における周知の意義

河口湖チーズケーキガーデン事件・甲府地判平成28・11・29 LEX/DB 25545729

弁護士 倉茂尚寛

■キャリア法学への誘い 第16回■

就労請求権とキャリア権

法政大学名誉教授 諏訪康雄

■重要労働判例解説■

雇止めと無期転換ルールの潜脱意図の有無

高知県立大学後援会事件・高松高判平成30年10月31日LEX/DB 25561627

日本大学教授 新谷眞人

船舶借入人の事業譲渡と雇入契約の承継

新協和海運事件・東京高判平成30年4月25日D1-Law28262570

日本大学准教授 南 健悟

私の立法学は、「労働法の人的適用対象の法政策」ですが、恐らくあまり人の気がつかない話にも言及しています。

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変革か衰退か~待ったなし!日本の雇用改革~@『HITO』13号

Hyo_hitovol13働いて笑ってるパーソルの総合研究所から、『HITO』13号が届きました。特集は「変革か衰退か~待ったなし!日本の雇用改革~」ということで、鶴光太郞さんのインタビュー構成記事をはじめ、いろいろと日本型雇用を論じています。

https://rc.persol-group.co.jp/research/hito/files/hitovol13_190301.pdf

かつて日本型雇用が日本社会に数多くのメリットをもたらしてきたことは事実です。しかし現在は、そのメリットより雇用や労働に関する数々の問題を引き起こす原因として指摘されることが多くなっています。これからますます進行する少子高齢化やグローバル化の中で日本が再び輝くためには、従来の日本型雇用から脱却し新しい雇用の仕組みを構築する必要があるでしょう。これから日本の雇用はどこに向かうべきなのか。本号では、識者や実務家へのインタビュー、企業の人事責任者・従業員への調査などを通して日本型雇用の実態や問題点、今後あるべき雇用システムの方向性について考察します。

Turu


曰く:

日本社会の将来に黒い影を落とす日本型雇用システムの機能不全

「無限定正社員システム」をやめ「ジョブ型正社員」をデフォルトにせよ

無限定正社員システムを変えるには「共有化された予想」の打破が必要

ジョブ型正社員がデフォルトの世界における新たなマネジメントのあり方とは

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『21世紀前半期の年金と雇用』

Logo 年金シニアプラン総合研究機構から『21世紀前半期の年金と雇用』という報告書が先月出されていたようです。

https://www.nensoken.or.jp/wp-content/uploads/H_30_03.pdf

急速な少子高齢化の進展により、若年・熟年層の労働力人口が減少している。これを補うためには、女性とならび高齢者の就労促進を本格的に進めなくてはならない。他方、公的年金制度の持続可能性を維持するためには、年金制度における就業インセンティブの強化を積極的に図る必要がある。すなわち、就業インセンティブの強化と、量質伴った高齢者の雇用確保、所得保障、中年期以降における能力開発などを統合した政策プランを早期に構築・推進することが重要である。 公益財団法人年金シニアプラン総合研究機構では、2015年8月、こうした問題意識を共有するメンバーからなる研究会を組織し、今後の高齢者の雇用促進方策、高齢者の雇用促進と整合的な年金制度のあり方につき、2年半にわたり21回の研究会を開催し、このたび報告書をとりまとめた。多くの論点に関し活発な議論を交わしてきたが、最終的に、まとまった結論を出すことなく終えることになった。しかし、日本の少子高齢化の急進展に即し、雇用制度・政策、年金制度・政策のあり方について多様な論点を提示することができたと考えている。

実質的には次のような人々による論文集ですが、

西村周三、岩田克彦、小峰隆夫、中井雅之、高山憲之、白石浩介、久保知行、小野正昭、駒村康平、西村淳、堀江奈保子、八代尚宏、福山圭一

このうち、特に第2章の3つの論文が、日本型雇用システムと高齢者雇用というテーマを取り扱っています。

第2部 日本的雇用システムと高齢者雇用
 第3章 日本型雇用慣行と高齢者雇用 小峰隆夫
 第4章 日本的雇用システムにおける高齢者雇用と今後の高齢者雇用のあり方 中井雅之
 第5 章 生涯就業をめざした日本の生涯学習及び職業教育訓練の課題  岩田克彦

これら論文の要旨を、岩田さんによる概要紹介から紹介しておきます。

第 2 部では、日本的雇用システムの今後の変化のあり方と高齢者雇用をテーマに、3 つの 論考を収録した。小峰が、同一労働同一賃金の実現等を通じた「メンバーシップ型からジョ ブ型への転換」等日本的雇用システムの見直しが急がれるとするのに対し、中井はこれまで の対応や労働現場の制度運用を踏まえ、漸進的な変化が必要と論ずる。岩田は、急速な高齢 化を迎え、日本的雇用システムの変化を踏まえた生涯就業の実現が必要とし、そのための施 策を、生涯学習政策及び教育訓練政策を中心に整理している。

第 3 章で、小峰隆夫(大正大学)が、「日本型雇用慣行と高齢者雇用」と題し、日本型雇 用慣行の特徴(メンバーシップ型で、社会の革新者であるべき若年層もまたメンバーシップ 型雇用を支持しているのだから、その改革は非常に難しいとする。)を論じた後、人口オーナ ス(生産年齢人口が絶対数でも人口比でも減少して行く人口構造を有する)の時代での女性 や高齢者の動員で対応できた第1期は限界に近付いており、人口オーナス第2期では、効率 性向上型による労働力生産性の向上が必須で、それが実現できるような働き方改革を進めて いくべきだとする。最後に、よりジョブ型に向けて日本的雇用システムを変えていくために、 同一労働同一賃金が働き方改革の切り札になるのではないかと指摘する。

第 4 章で、中井雅之(厚生労働省)が、「日本的雇用システムにおける高齢者雇用と今後 の高齢者雇用のあり方」と題し、日本的雇用システムとの関係を整理しながら、高齢者雇用 の現状と課題、今後の方向性について検討している。中井は、これまでの高齢者雇用対策は、 日本的雇用システムと整合性を図りつつ、可能な限り継続雇用を促進する方向で推進された 現実的な対応であり、一定の成果を挙げてきたが、今後については、安倍政権が進めている 「働き方改革」の必要性からも分かるように、均質な労働力から多様な労働力へと労働市場 の構造変化が進む中、仕事に人を合わせるのではなく、人に仕事を合わせることが求められ ており、従来型の日本的雇用システムを維持することは困難になっていると論ずる。但し、 労働現場の制度運用を考えた場合、日本的雇用システムの変化はドラスティックではなく、 漸進的な変化が必要だとし、多様な労働力が多様な就業形態で能力を発揮できる環境整備に 向けた政策的支援が求められている、とする。

第 5 章で、岩田克彦(ダイバーシティ就労支援機構)が、「生涯就業をめざした日本の生 涯学習及び職業教育訓練の課題」と題し、欧州諸国と比較しつつ、生涯就業をめざした日本 の生涯学習および職業教育訓練の課題を整理している。日本の雇用システムも、従来型の「メ ンバーシップ型」から「ジョブ型」の要素を強めていかなければならないとし、そのために は、従来の日本型フレクシキュリティ(労働者活用の柔軟性と雇用・所得の安定性の両立)・ モデルから新たな日本型フレクシキュリティ・モデルに移行していく必要があり、生涯学習・ 生涯就業を目指し年齢別重点課題に積極的に取り組むべしと論ずる。そして、とりわけ、職 業教育訓練の強化が重要とし、資格制度全体の一貫性と比較可能性を強化し、教育界・企業・ 労働市場関連機関が実施している教育・訓練と資格制度の連動を図る資格枠組み(資格レベ ルの物差し)を日本でも早期に導入すべきである、とする。

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過労死防止学会第4回大会報告集

昨年6月に北海学園大学で開かれた過労死防止学会第4回大会の報告集が同学会のホームページにアップされていたようです。

http://www.jskr.net/report-and-discussion/1235/

「ようです」というのは、2月9日にアップされていたようですが、私はさっき気が付いたところだから。

私の報告やパネルディスカッションでの発言も載っているのですが、私は内容の確認を求められておらず、事務局の責任でアップされたもののようです。

話の筋道自体はちゃんと再現されているとはいえ、細かなニュアンスがいささか意図と違う感もあり、こういうやり方はどうなのかな、という思いもあります。

私の報告「EUの労働時間法制とその含意」はこれですが、

http://www.jskr.net/wp-content/uploads/2019/02/20180603-K_Hamaguchi_rep.pdf

・・・実労働時間規制とはどういうことか。言葉ではわかるかもしれませんが、本当の意味を 理解している人は日本にはあまりいないと思います。第 6 条(b)7 日の期間ごとの平均労 働時間が、時間外労働を含め、48 時間を超えないこと、とあります。これをみて、「EU は 48 時間だ、日本は 40 時間だ、EU は遅れているな、日本は進んでいるな」、とうかつ な人は言います。「ボーッと聞いてんじゃねえよ!」と、たぶん、チコちゃんだったら言 うと思います。その後に NHK のアナウンサーが、「労働時間短縮」とか、「ワークライフ バランス」とか口走りながら、「自分たちに適用されている労働時間規制がどんなもので あるか全然理解していない、日本国、てなまあ」、とアナウンスが続く。「チコちゃんに 叱られる労働時間編」ということです。・・・

2sub21480x720 いやこれは当時はやりだしていた「チコちゃんに叱られる」を使ったところなので、「ボーッと聞いてんじゃねえよ!」じゃなくて、「ボーッと生きてんじゃねえよ!」と咆哮したつもりですし、そのあとも森田美由紀さんよろしく「労働時間短縮とか、ワークライフ バランスとか口走りながら、自分たちに適用されている労働時間規制がどんなもので あるか全然理解していない日本国民のなんと多いことか、しかしチコちゃんは知っています」としゃべったつもりなんですが、なんだか不完全に再現されてしまっていますね。文字起こしした方がチコちゃんを知らなかったのでしょうか。ここは、意図が大体伝わればいいんじゃなくて、言い方が伝わってほしかったところなんで、いささか残念です。

それから、質疑応答の部分も、これは直しておきたかったというところがあります。

http://www.jskr.net/wp-content/uploads/2019/02/20180603-K_Shitsugi_rep.pdf

【濱口さん】 ・・・だから、現場で守られないということは、たぶんすべてについて言える話で、これをど う守るかというと、まず今は、ただ長いというだけでは監督官は手出しができない。カネ を払ってないとなって初めて手が出るという、このねじけた仕組みがあります。ねじけた 仕組みがそのままでいいのか、というのが第 1 点目です。私は実はこの十数年間、それを 繰り返してきました。今はそれしか無いから、だからそれでやるのですというと、実はそ の永遠の、何て言うか、修羅道というか、そこから抜けられないでしょう、というのがひ とつです。

  だからといって、すぐにとはいかないのです。私は、今の年収の 3 倍で初めて残業代ゼ ロというのは、実はいいところではないかなと思っています。つまり、いきなりここで EU みたいに時間外含めて週 48 時間で絶対アウト、みたいなのができるならいいですよ。そん なことできるわけありません。今の時間外の規制で、みなさんががんがんやっているとこ ろだけ見えるかもしれませんが、水面下では中小企業団体がものすごく自民党にロビイン グして、政調会、総務会が 2 回流れて、もう出せないか、というようなところまで行った という話も一方であります。そういうせめぎ合いの中ででてきている話です。

そこでどうするのか。私、正直言うと、ゼロベースで考えた EU みたいに、48 で全部ア ウトにして、残業代規制みたいな変なものもの全部無くすというのはすっきりしているな と思います。しかし、いきなりそんなことはできるわけはないだろう。とうてい週 48 時間 いうのは無理なので、だとすると今の時間外規制が入るということと見合いで考えたら、 年収の 3 倍で初めて残業代を払わなくてもいいよというのは、それは有るべき姿では私は 無いと思いますが、今の段階で言うと、その辺ぐらいからやっていくしかたぶん無いだろ う、と思います。これはどちらかというとリアリズムです。理想論ではありません。さっ きは理想はこうだ、と言いましたが、まあリアリズムから言うと、なかなか実際にはそうはいかないので、まあ、そんなところから始めるしか無い。ただ、リアリズムと言っても、 いかなるリアリズムでも、理想の方向はこっちだっていうのが無くなってはいけない。理 想の方向は明らかだと思います。

その方向に一歩でも二歩でも、歩む。マックス・ウェーバーが「職業としての政治」で、 政治というのは大地にぎりぎりと穴を開けるようなもの、なかなか穴は開かない。だけど、 考えたらこの十数年、最初のころは誰もそんなことを言っても見向きもしなかった話が、 少しはこういう話が出てきているっていうことを考えると、少しは意味があるのかなとい うのは思わないでもありません。リアリズムから言うと、一歩二歩進んだぐらいからやっ ていくのがいいところなのかなというのが、今の正直な感想ですね。上西さんに対する答 えになっているかよくわかりませんが、私の今の気持ちはそんなところです。

Max_weber いやいや、マックス・ウェーバーは、大地にぎりぎりと穴をあけたりはしなかったと思いますよ。確か、硬い木の板にぎりぎりと穴をあけたりはするでしょうけど・・・。

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『日本の労働法政策』ついに通読した人現る

11021851_5bdc1e379a12a 分厚すぎるという批評は一杯いただきながらも、通読したという方はまだいなかった拙著『日本の労働法政策』ですが、遂にようやく通読したという方が現れました。今まで拙著を何回も批評していただいてきた細波水波さんです。

https://yaplog.jp/mizunami/archive/693

通読した!良く頑張った自分。索引なしの(笑)1074頁、これが通読できたのは思いもかけない入院(2wちょい)の不幸中の幸い?でした。家人に持って来てもらうのも「あのぶ厚いやつ」で通じたし。もちろんこの本以外にもベッドのお供は軽いの病院図書館でいろいろ借りておりますが、この本がなかったら入院がもっと辛かったのは間違いない。と、閑話休題。

あのやたら分厚い本を通読するなどという無謀なことをされたのは、2週間入院という事故のせいだったようですが、なにはともあれ、あの本を通読していただいたというだけで、もう感謝感激の極みです。

ありがとうございました。

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