労働法はギグれるか?
『ジュリスト』と『労働時報』という二大法律雑誌に、興味深い短い文章が載っています。『ジュリスト』3月号は、特集は「ブロックチェーンと商取引」ですが、「働き手・働き方の多様化と労働法」というオムニバス連載の最後として、大内伸哉さんの「雇われない働き方」が載っています。
http://www.yuhikaku.co.jp/jurist/detail/020187
例によって大内節が炸裂しているんですが、
「個人事業主は事業者として、下請法の適用か、そうでないとしても独占禁止法の規定によって、不当な取引から守られる可能性がある。独占禁止法の世界で掬われるのなら、労働法の方で無理をする必要はないとも言える」
という文章に対して、陰の声が
おいおい、労働法でやれることについて、わざわざ独占禁止法の世話になる必要はないだろう。企業と対等に取引できないで働くというのは、まさに労働法の守備範囲じゃないか。君は本当に労働法の研究者なのか。
とつぶやいていて、いろいろと考えさせます。
実は、これにまさに対応するような 論考が『法律時報』に載っています。
https://www.nippyo.co.jp/shop/magazines/latest/1.html
特集は「わが国におけるコーポレート・ガバナンスの諸層」ですが、小特集が「デジタルプラットフォームと独占禁止法」で、その中に
ギグ・ワーカーと経済法……長谷河亜希子
という4ページばかりの小論文があるのですが、これがまさにクラウドやらプラットフォームやらといったギグな働き方に対して経済法でどのように保護をできるかを論じています。
その論文の最後が、経済法だけの対応では足りず、
・・・フリーランスは、・・・のように、経済法だけでは到底対応できない諸問題にも多々直面している。加えて、本稿で取り上げた諸問題についても、独禁法での対応は、例えば契約条件を「曖昧な形で示さないこと」という大雑把なものとなりがちであることから、労働者保護体系の見直しが迅速に進行することを期待したい。
と、労働法のほうでちゃんとやれ!というボールが返ってきていることが、私の目からすると一番示唆的でありました。
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