教員身分法案要綱案
昨年末にお送りいただいた島田陽一他編『戦後労働立法史』(旬報社)は、その大部分の記述はわたくしの『日本の労働法政策』と重なっており、それほど目新しい話というのはなかったのですが、最後の章になかなかすごいのがありました。
第15章「労働基本権制約理論の歴史的検討」(清水敏執筆)は、大筋は公務員の基本権問題で、大体は知っている話なんですが、その中に、1946年から47年に文部省高官によって作成された「教員身分法案要綱案」なるものが紹介されていて、これがすごい。
どうすごいかというと、
1,本法の目的
教員の身分が特殊なることに鑑み、官公私立学校を通じて、教員の種類、任用、資格、文言、服務、懲戒、給与その他の待遇、団結権、団体交渉権等について一般公務員に対する特則を設けること。
いやちょっと待て、「官公私立学校を通じて」って、れっきとした民間労働者である私立学校の教員をつかまえて「一般公務員に対する特則を設ける」とはそういう了見だ?と思ったら、その次にもっとすごいのが待っている。
2,教員の定義及び身分
右の教員は学校教育法の定める学校の教員いうのであって、官公私立の学校を通じて教員はすべて特殊の公務員としての身分を有する者とすること。
ええ?私立学校の教員が「公務員」だって?「私立」って言葉の意味分かってんのか?と言いたくなりますが、その調子ですから、
18,労働基準法の適用排除
教員については労働基準法の規定は適用されないものとすること。
こうなりますな。
この衝撃たるやなかなかすさまじく、その次に、
20,労働組合法の適用排除
教員は、労働組合法による労働組合を結成し又はこれに加入することができないもとすること。。
というのがかすんで見えてくるくらいです。
« “平成”の労務管理@『労務事情』2019年1/1・15日号 | トップページ | 日本現代話(笑) »
指導主事とかどういう想定なんでしょうね。
投稿: 通りすがりの研究者 | 2019年1月12日 (土) 09時58分