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« スウェーデンは「ナチ」か?(再掲その他) | トップページ | 年齢に基づく雇用システムと高齢者雇用@『週刊経団連タイムス』2019年1月1日 »

2019年1月 3日 (木)

外国人労働者受け入れ拡大に伴う海外人材派遣業の機能@上林千恵子

Top_newbook 新年早々届いた『學士會会報』1月号に、法政大学の上林千恵子さんの「外国人労働者受け入れ拡大に伴う海外人材派遣業の機能」という大変ポイントをついた文章が載っています。

http://www.gakushikai.or.jp/magazine/bulletin/index.html

今回の入管法改正に対しては、いろいろな観点から批判がされていますが、これまでの30年間にわたる技能実習制度の矛盾を見続けてきた上林さんは、とりわけ外国人労働者の仲介・あっせん機能がきちんと規制されていない点に問題を見出します。

・・・しかし受け入れ国側の日本では、労働者受け入れは個人の自発性に基づいたもの、仲介企業の善意に基づいたものといった暗黙の前提がある。とりわけこれまで単純労働者の受け入れ窓口の代替的役割を果たしてた技能実習制度においては、制度の目的が発展途上国への技能移転であったために、受け入れ管理団体は営利機関であることを否定されており、利益追求を設立目的としない中小企業団体や事業主組合が監理団体となっていた。しかし団体監理型受け入れ組合における技能実習生受け入れ問題が頻発したことにより、先の技能実習法ではこの組合が許可制の組織へと変更されたのである。

こうした日本の過去の経験を考えると、現在審議中の新入管法では労働者斡旋機関を「登録支援機関」という曖昧な形容で表現している国境をまたぐ人材派遣業には、それなりの人材を見極める能力、送り出し各国のそれぞれの事情、送り出し家庭の事情、日本の受け入れ先の事情などの個別案件に関する知識のほかに、送り出し国の法律、受け入れ側の日本の法律といった専門知識、送り出し予定の労働者の教育、受け入れ後の労働者の通訳や24時間の生活管理などの業務を遂行してきた。・・・

新入管法では、技能実習制度のような「技能移転」という建前は背景に退き、より労働力受け入れの側面が前面に出てくる。そうなると、それに伴って人材派遣業のビジネスとしての側面もより前面に出てくることになるだろう。その時に、日本で営業する人材派遣業に対して、適切に国家が管理し、その信頼性を保障する仕組みが必要とされるのではないか。・・・

・・・日本を外国人労働者にとって安全で魅力的な出稼ぎ先とするには、外国人労働者を仲介する海外人材派遣業が外国人労働者から信頼を得なければならない。外国人労働者が最初にコンタクトをとる人材派遣業者が信頼性を獲得し、労働者の安全を保障することほど、実は賃金以上に海外害から出稼ぎに来る人々にとって不安を除いてくれるものはない。

そしてそのためには、国際ビジネスとしての海外人材派遣業が適正なビジネスとして運営されるような仕組みを考案し、それを国家が後押ししていくことが重要である。・・・来日する低熟練外国人労働者は、法律といういわゆる人権を保障する道具があまりに抽象度が高いために、自国の法律も、ましてや日本の法律も理解できぬまま母国の農村地域から直接に日本の職場に派遣されている。したがって、その安全と人権を確保するには、まず彼らが最初に接する海外人材派遣業に安全網の提供を保障してもらわねばならないのである。

ありがちな、オール・オア・ナッシング的な批判論では見落とされがちな重要な側面を的確に指摘しているように思われます。

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