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2019年1月 6日 (日)

バカとアホが喧嘩するとワルが得する

昨年末、松尾匡さんからメールで、反緊縮マニフェストに名を連ねてほしいというご依頼があったのですが、そのマニフェストの冒頭に「1 消費税を上げて不況が戻ってもいいのですか? 消費税を5%に戻して、景気を確かなものに。」という項目があり、それがこのマニフェストの主張の筆頭代表的存在である限り、それは無理ですという旨をお伝えしました。

https://economicpolicy.jp/wp-content/uploads/2018/10/manifesto2017new.pdf

このマニフェスト、そのあとを読んでいくと、「2  働きたい人が誰でもまっとうな職で働ける世の中に! 雇用創出・最低賃金引き上げ・労働基準強化」といった賛成できる項目もあるのですが(もっとも、ベーシック・インカムは賛成できない)、世間的にはまず何よりも反消費税という主張に集約されるであろうことは間違いありません。

ただ、それだけではやや説明が不足かなという気もしてきたので、反緊縮を増税反対という旗印に集約させると何が起こるのかという観点からもう少しコメントしておきたいと思います。

結論から言うと、社会保障費に充てるために消費税を上げるという触れ込みで始まったはずの政策が、「増税しないと財政破綻」論のバカ軍団と「増税すると経済崩壊」論のアホ軍団の仁義なき戦いのさなかに放り込まれると、「社会保障なんか無駄遣いやからやめてまえ」論という一番あってはならないワル軍団お好みの結論に導かれてしまうからです。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38744460Q8A211C1EE8000/ (軽減税率、財源にメド 社会保障から1000億円 )

あえて表にすればこういうことになります。

123

おそらく松尾さんたちはこの表の左下の欄、つまり増税反対だけど再分配賛成というところに属しているのでしょう。ところが、その主張がもっぱら増税反対というところに集約され、もっぱら右上の「増税しないと財政破綻」論を仮想敵国として戦っていくと、現在の政治的配置状況の下では、それは右下の社会保障なんか無駄やからやめてまえ論との共闘になり、本来の政策だったはずの「増税して社会保障に」というのは冥王星の彼方に吹き飛ばされてしまいます。

そんなに増税が嫌なら、これくらい面倒見てやろうかという軽減税率の財源にそもそもの目標であったはずの社会保障費があてられるというのが今の姿ですが、この先、米中対決その他の影響で経済情勢波高しということになって「めでたく」(皮肉です)増税が回避されたら、結局得をしたのは社会保障を目の敵にするワル軍団でしたということになりかねません。正直、その可能性は結構高いように思います。そうでなくても、今ではそもそも何のために消費税を上げるという話になったのか、だれも覚えていないという状況ですから、その目論見は達せられたというべきかもしれません。

バカとアホが喧嘩するとワルが得するという教訓噺でした。

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コメント

>バカとアホが喧嘩するとワルが得する
もうこの構図が数十年続いているわけで、そろそろいい加減にしてほしいですね。

松尾氏は左派のなかで優れた人物だと思いますが、この構図から脱却して新しい左派的ビジョンを提示してほしいものです。さもなければ左派は戦前の二の舞となるでしょう。

まあ戦前の日本人の海外進出と、今般の外国人労働者受け入れはパラレルなものであって、すでに二の舞は始まっているのかもしれませんが。

 皆さん、今晩は。

>増税が回避されたら、結局得をしたのは社会保障を目の敵にするワル軍団でしたということになりかねません。

 申し訳ございませんが、これは、通貨の発行量が金の保有量に拘束される金本位制などの兌換通貨時代の発想に縛られているといわざるを得ません。

 現在の通貨は、アメリカ・ドルの保有量に応じて通貨の発行量が決まるドル・ペッグ制を採用している国々を除けば、金の保有量に拘束されずに通過を発行できる管理通貨制度を採用しています。我が国の円も1971年8月以降は管理通貨制度であり、日本銀行は金の保有量に拘束されずに円を発行できます。

 加えて我が国は、外貨建ての公的債務を事実上負っていないので、外貨を購入するために通貨を発行する→自国通貨が下落するので外貨を獲得するために通貨をさらに発行する→通貨が下落する→外貨獲得のためにさらに通貨を発行する…という形でのハイパー・インフレーションも起きません。

 私は、社会保障の財源は税金しかないという発想と決別し、通貨発行益で賄うことを真剣に考えるべきだと思います。そして我が国は通貨発行益を当てにできる条件を備えています。

うん、なるほど、↑こういう社会保障は後から何とでもなるという希望的観測に満ちたワルもはびこる、という話ですね。

 皆さん、今晩は。

 原口さん、御返事さ理が問うございます。

>↑こういう社会保障は後から何とでもなるという希望的観測に満ちたワルもはびこる、という話ですね。

 私のことを言っているのでしょう。

 私の主張は、ヨーロッパ左翼の「人民の量的緩和」とほぼ同じです。国が発行する国債を中央銀行に引き受けてもらうことで財源を賄うものです。

 そして我が国は、「人民の量的緩和」を唱えている人々の属するヨーロッパの国々以上に、「人民の量的緩和」を実行しやすい条件を備えています。

 まず、我が国は、国家に発行権のない単一通貨ユーロでなく、自国が通貨の発行権を有することです(正式には中央銀行である日本銀行)。

 加えて、我が国は1988年以降、外貨建ての公的債務を負っていません。つまりわが国の国債は全て、我が国が発行権を有する円建てです。つまり、我が国は公的債務を通貨発行益を行使することで償還できます。

 管理=不換通貨制度の下では、自国通貨建ての債務だけを追っている国は、原則として破産することはありません。

オリヴィエ・ブランチャードのAEAでの演説が話題になっているようで、日本では田中秀臣さんがラジオで紹介していました。
ポイントはブランチャードのTwitterコメント
Message from my AEA address: Low interest rates imply that, not only public debt may have small fiscal costs, it may also have low welfare costs. You can use it, if you use it wisely.

クルーグマンはつい昨日の9日のコラムでこの演説を引きながら、財政赤字や債務問題について論じています。
https://www.nytimes.com/2019/01/09/opinion/melting-snowballs-and-the-winter-of-debt.html
But what matters for government solvency isn’t the absolute level of debt but its level relative to the tax base, which in turn basically corresponds to the size of the economy. And the dollar value of G.D.P. normally grows over time, due to both growth and inflation. Other things equal, this gradually melts the snowball: even if debt is rising in dollar terms, it will shrink as a percentage of G.D.P. if deficits aren’t too large.
などなど。

さらに、反増税論者は増税自体に反対ではなく「イマではないデショ!」というスタンスで当のクルーグマンもそうだったはずが、
it’s becoming increasingly doubtful whether there’s any right time for fiscal austerity. The obsession with debt is looking foolish even at full employment.
とまで言っています。

ところで、国道134号鎌倉さんはこのクルーグマンコラムで言及されているMMT派に属していることになりそうですが、私はそこまで「過激」にはなれません。
財政赤字や債務自体を問題にするのは全くのナンセンス、という点では共通ですね。


 それでは、濱口さんは消費税増税に賛成なのですか、反対なのですか?

 私は、経済成長が進んで、景気が良くなる方がいいと思っているので、社会保障に反対するグループに乗っ取られるリスクを鑑みても、消費税増税には反対するつもりです。

バカ(財政再建を目的とする人)がいるのは右上の欄だけでしょうか?
もちろん右上にいるのはバカですが、そういう分かりやすいバカではなく本当の(怖い)バカは左上にいるような気がします。
 財務省は財政再建をしたいのでバカの一員だと思いますが、前回の増税でも今回の増税でも”社会保障費に充てるために消費税を上げる”と言っていたと思うので、右上ではなく左上にいる(怖い)バカだと思います。
 (政府にとっての)財政再建というのは、政府の収入と支出の差(赤字)を減らすという事です。ですから消費税の増税分の一部を再分配の費用に充てても、残りを赤字の削減に充てる事ができれば、財政再建に貢献できるので、左上にもバカはいると思います。
 これを民間から見ると、消費税増税で新たに取られた額のうち一部は財政再建用にピンハネされるので、取られた額の一部しか再分配で戻ってこないという事になると思います。特に消費税は再分配の対象となる低所得の人でも増税の対象なので、そのような人でも貰える額より取られる額が多い人も多いと思います。
 政府の”社会保障費に充てるために消費税を上げる”という主張にもかかわらず、消費税増税に反対する人が多いのは、低所得の人でも貰える額よりも取られる額が多くなる事を憂慮しているからではないかと思います。
 私はこういう状況はバカにとっても良くないと思います。もし消費税を10%にすれば財政が再建できるのであれば、現在の様に政治的技術(手練手管)を駆使して消費税増税を実現してめでたしめでたしで終わりだと思いますが、実際には消費税を10%にするだけでは財政再建はできないと思います。つまり財政再建のためには今後も15%、20%と増税をする必要があると思います。今回の増税で緊縮になった(再分配で貰える額より増税で取られる額のほうが多かった)と思う人が多ければ今後の増税は非常に困難だと思います。
 今後も消費税を増税するためには(”損して得取れ”ではありませんが)今回の増税では財政再建をあきらめて、増税分は(ピンハネせず)全額再分配に充てて、増税前よりもとられる額が少なくなった人を増やして消費税増税への反対を減らすべきだと思います(辻元清美議員が賛成できるような消費税増税を目指すべきだと思います)もちろん増税分を全額再分配に充てても国民全員がとられる額が少なく成る事はありまん。しかし定率で徴収した消費税を定額で徴収している税(や社会保険料)の軽減に充てれば、低所得者に対しては消費税増税によって負担が軽減できると思います。
 例えば前回の消費税増税では国民年金の国民負担を2/3から1/2に軽減するための財源として3兆円を充てたそうです。今回も3兆円で国民年金の国民負担を1/2から1/3に軽減すれば、国民年金の保険料(毎月約1万6千円)の1/3(約5千円)を軽減できます。つまり消費支出が毎月25万円以下で国民年金の保険料を払っている人は消費増税によって負担が減るので、低所得者の多くは負担が減ると思います。

https://www.economist.com/europe/2019/01/12/how-france-redistributes-more-from-rich-to-poor-than-sweden
黄色のベスト運動についての今週のThe Economistの記事。

再配分政策によりスェーデンに次いで平等度が高く、金融危機にもかかわらず2017年までの10年間で家計所得が8パーセント増加したフランスでの大規模抗議運動について、
according to research by the World Inequality Lab, linked to Thomas Piketty, a French economist, is that the bottom 50% are disproportionately touched by non-progressive social-security charges and indirect taxes, such as those on fuel.
非累進的な社会保険料や今回の引き金となった燃料税のような間接税を指摘しています。

日本では間接税である消費税を上げてもストも暴動も起こりませんが、購入のつど感じる痛税感が消費低迷を永続化させています。

松尾さん推奨の反緊縮マニフェストは、低所得者の不満を和らげ消費活性化につながる消費税減税を最初に掲げ、所得税のみならず社会保険料の累進、そして資産税と、ピケティ、ブランチャード、クルーグマン、ローマーなど世界を代表する経済学者の見解を集めたものと言っていいほどです。

ただ、もしこういう政策が実施されたら、高所得者や資産家が大きな負担増となってしまいます。政策立案者の官僚、それを評価する金融機関やシンクタンクのエコノミスト、評論家、さらに政治家まで「負け組」になってしまう。

本来あるべき政策が実施される見込みは残念ながら・・・

>反緊縮マニフェストに名を連ねてほしいというご依頼があったのですが、

ブレイディみかこさんがいらっしゃる英国(EU)は緊縮財政だと思いますが、日本ではEUと違って緊縮財政ではないと思います(今は緊縮ではなくても消費税を増税すれば緊縮になるので、あらかじめ反対しようという事でしょうか?)
日本の政府は現状では左下のアホ(財政健全化より社会福祉を重視)だと思います。例えば日本では、どこぞの国と違って国民が黄色い服を着て暴れ回らなくても、政府がちゃんと国民に忖度をして、EUに加盟していれば絶対認められない額の財政赤字を伴う予算を作ってくれます。
これは返す時の事を考えずにお金を借りて使ってしまうのと同じで、 ”何も考えていない脳天気なその場しのぎ” という批判は全くその通りだと思います。しかしこのやり方で今までその場をしのいできたのも事実です。
EUに”りふれは”の考えを普及し、黒田東彦氏に日銀退任後はEUか英国の中央銀行の総裁になってもらって、もう一度そこでバズーカを打ってもらえば、ブレイディみかこさん達の希望に(短期的かもしれませんが)近づくかもしれません。

>社会保障費に充てるために消費税を上げるという触れ込みで始まったはずの政策

これだって不誠実な言い方で、「今まで増税を待たずに増えた社会保障費で毎年恒常的に出ている赤字を埋めるため」がほとんどです。
だから財政再建のためというのが事実。

それを「社会保障に使うんだ!」とか見栄はるから、「増税したのに1割しか新規の社会保障に使われてない」と批判されるんです。

それに今更、弱者に好きなだけの福祉大盤振る舞いなんてできないのだから、増税も財政再建も福祉削減も全部必要。
がっつり増税して弱者はホクホク顔でフルスペックの福祉受給で遊んで暮らしますとか腹立つし。

みんなで増税も福祉抑制も財政再建もやって耐えるしかない。フリーランチはない。

福祉を無くせとは言わんが少なくとも今のフリーアクセス・待ち時間30分のアホみたいな豪華医療は見直さないと現役世代健常者が疲弊するわ

>Alberich氏
同意

本当に日本は今でも放漫財政だし高齢者や無職に異様に優しい国なのだから、消費税20パーくらいにして福祉ももっと減らすべき(特に医療削減、生保のワークフェア強化)

増税を財政再建に使うのがバカとか酷いな。
じゃあ毎年恒常的に社会保障その他で積む上がっているワニの口の赤字はなんやねん

社会保障費はほぼ投資にならないのだから使えば使っただけ赤字が積みあがり、かつ増税なしでそれが将来解決する見通しはない。

社会保障と言うのは、会社が投資(将来の儲け)のために銀行から借りるのではなく、労働者がサラ金から借り続けるようなもの。労働者の給料は増えないし借りた金を種銭にして増やすわけでもないので、破綻することは明らかだ。

連投すみません。

現状では日本の福祉と負担の関係は、異様に低所得者や老人や無職に優しい構造となっており、全体で見ても持続可能性がないのだから、「増税で財政再建」はバカなのではなくて議論の前提です。

増税して福祉を増やすか、増税せず現状維持か、減税して能力主義自己責任でやるかは、最低限「財政のワニの口」を閉じてから国民が選択する話だと思う。

現状、負担<<<歳出 であり、かつ財政赤字が定常状態で安定するという保証はなく、赤字が発散する可能性がある。すると、今のところは増税して、かつ増税分以上には福祉を増やさない(ネットで負担増)以外はない。

ちなみに、社会保障なんて無駄論は、過激な言い方ですが減税して社会保障も減らすという政策は正統な経済右派or経済リベラル政策として欧州でも伝統的に行われています。程度はともかくね。決しておかしな政策ではないです。

> バカとアホが喧嘩する

過去はそういうフェーズだったのかもしれませんが、最近は

 リベラルとバラモンの喧嘩によって、アジェンダが定まる ⇒ 社民の出る幕が無い(社民は注目されないので、バラモンになる) ⇒ 以下、無限ループ

みたいな感じなのでは?

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