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2018年12月27日 (木)

島田陽一・菊池馨実・竹内(奥野)寿編著『戦後労働立法史』

427925島田陽一・菊池馨実・竹内(奥野)寿編著『戦後労働立法史』(旬報社)をお送りいただきました。ありがとうございます。

http://www.junposha.com/book/b427925.html

我が国の労働法制はどう形成されてきたのか。戦後の労働立法それぞれの成立と展開を描く「労働立法史」

なんだかここに来て、労働法の歴史の分厚い本が立て続けに出てますね。

この本は、早稲田大学を退職された石田眞先生の古稀記念論集ということで企画されたようで、目次は下にコピペしておきますが、労働法の各個別分野ごとにその立法史を叙述するというスタイルは、まさに拙著『日本の労働法政策』と正面からかち合っています。

本書は、第Ⅰ部「戦前における労働立法形成の歴史的前提」と第Ⅱ部「戦後労働立法史」の2部構成となっています。

 第Ⅰ部は、第1章「戦前における労働立法の歴史的前提」、第2章「戦前の労働市場立法」、第3章「戦前の雇用関係法」および第4章「戦前における労使関係立法」と4章構成となっており、石田先生自らがその全体を執筆されています。
第Ⅰ部は、労働市場法、雇用関係法および労使関係法という現在の労働法体系における法領域に即して戦前の労働立法が分析されています。このことによって、戦後のそれぞれの労働立法の分析との接続が図られていると言えます。そして、戦前の労働立法を踏まえて、労働立法史を分析する視点として、①戦前戦後の断絶と連続、②ILOを中心とする国際的影響および③雇用システムと労働立法の相互構築という興味深い視点が提起されています。

 第Ⅱ部は、15章構成となっており、労働基準法、労働契約法、最低賃金法、賃金の支払の確保等に関する法律、男女雇用機会均等法、パートタイム・有期雇用労働法、労働安全衛生法、労災保険法、職業安定法、職業能力開発促進法、雇用保険法、労働組合法、労働紛争処理法、公務労働法が取り上げられています。

本書が労働法学における労働立法史研究の活性化の契機となることを願ってやみません。

では、濱口の『日本の労働法政策』と、この早稲田勢+αの総力を挙げた本書との違いはどこにあるか?

敢えて言えば、それは戦時体制期の見方にあるように思います。

本書は第Ⅰ部が戦前で、第Ⅱ部が戦後と、綺麗に分けており、分野ごとの通史と雖も、戦前、戦時、戦後を一気通貫した叙述にはなっていません。

正確に言えば、第Ⅱ部の各章の中にも、第4章の最低賃金が戦時下の賃金統制令を扱ったり、労災や職安法など戦前に言及しているのもありますが、大枠は戦前と戦後で大分割しており、これは日本の労働法制史が(戦前を前史として持ちながらもそれは戦時体制で断ち切られ)戦後改革で一から形成されたという歴史観が基本にあるからだと思います。

おそらくそこが、拙著との大きな違いでしょう。私はむしろ、個々の分野ごとの立法史をたどればたどるほど、戦時体制下の統制立法が戦後改革期の労働立法と直接間接に繋がっていると考えており、むしろ戦時期と終戦直後期を一括して「社会主義の時代」と呼んで、現代労働法体制が形成された時期だと認識しているのです。これは、孫田良平さんの「戦時労働論への疑問」に淵源する歴史観で、2004年に『労働法政策』を刊行したときにも、JIL雑誌の書評で和田肇さんからこのような批判をいただいていたところです。

https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2005/01/pdf/063-068.pdf

・・・とりわけ1930 年代半ばから50 年代半ばまでを「社会主義の時代」と一括りにし, 戦中を「労働法政策の立場からすれば決して悪い時代ではなかった」と評価し,戦後を「1930 年代半ば以降の路線の延長線上に, そこから国家社会主義的なゆがみを取り除いて純化発展することのできた時代」と位置付けることには, なお抵抗がある。たとえばドイツでも国家社会主義の時代に中小企業や労働者の保護政策が積極的に採られたことは有名であるが, それでも戦後をこの時代とつなげることには, 賛成が得られないでいる。と同時に, 本書の中では労基法を中心とした労働条件法政策の一部(204 頁以下等) を除いて戦後改革の叙述が少ないが(著者はむしろ戦前, 戦中期に戦後労働法の胚胎があると考えている), これを過小評価することにも(たとえば団結弾圧立法から憲法28 条へ), 異論があるのではないだろうか。・・・

ここは歴史観の根幹にかかわるところだと思いますので、是非もっと突っ込んで議論をしてみたいですね。

第Ⅰ部 戦後労働立法史の歴史的前提―戦前の労働立法史…………石田 眞
はじめに
第1章 戦前における労働立法形成の歴史的前提
    ――労働関係における市民法秩序の形成
はじめに
一 「株仲間」の解体と「営業の自由」
二 労働関係における「人身の自由」と「契約の自由」
三 職工・徒弟条例案
四 民法典の編纂と労務供給契約規定の成立

第2章 戦前の労働市場立法
 はじめに
一 職業紹介・労働者供給など就業の仲介に関する立法
二 失業に直接対処するための立法

第3章 戦前の雇用関係立法
一 雇用関係立法の源流
二 鉱業条例と鉱業法
三 工場法

第4章 戦前の労使関係立法
 はじめに――戦前における労使関係立法史の起点と問題
一 治安警察法17条
二 労働組合法の制定問題
三 労働争議調停法
むすびにかえて

第Ⅱ部 戦後労働立法史

第1章 労働基準法――全体的な概観…………中窪裕也
はじめに
一 法制定の背景と準備
二 法案の起草過程
三 議会における審議
四 労基法の施行
五 その後の法改正
おわりに

第2章 労働基準法の労働時間規制の変遷過程…………和田 肇
はじめに
一 労基法第4章の変遷
二 労働時間規制の変遷過程の分析
三 労働時間規制の効果・影響
まとめ

第3章 労働契約法…………大木正俊
はじめに
一 労働契約法理形成期
二 労働契約法成立期
結語

第4章 最低賃金法――「最低賃金」立法の史的展開…………唐津 博
はじめに――本稿の課題
一 「最低賃金」立法のあり方―制度設計上の論点(選択肢)
二 国家総動員法(1938年)と賃金統制令
三 労働基準法と「最低賃金」条項
四 最低賃金法の制定と改正
五 「最低賃金」立法小史―-戦前・戦後の労働立法の「断絶」と「継承」
おわりに―「最低賃金」立法と「賃金の法原則」

第5章 賃金の支払の確保等に関する法律…………藤本 茂
はじめに
一 法制定前史
二 賃金支払確保法案
三 労働側の賃金支払確保の方策
おわりに――制定後の賃金支払確保法

第6章 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律…………浅倉むつ子
はじめに
一 前史
二 均等法の制定過程
三 「福祉法」としての1985年均等法
四 均等法の展開過程(その1)――1997年第1回目の法改正
五 均等法の展開過程(その2)――2006年第2回目の法改正
六 均等法の現在
おわりに

第7章 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律…………水町勇一郎
一 前史
二 1993(平成5)年パートタイム労働法制定
三 2007(平成19)年改正
四 2014(平成26)年改正
五 働き方改革関連法――2018(平成30)年改正
六 結び―要約と課題

第8章 労働安全衛生法…………鈴木俊晴
はじめに
一 立法の背景事情と経緯
二 労働安全衛生法の概要と単独立法化の理由
三 その後のおもな法改正
おわりに

第9章 労働者災害補償保険法…………有田謙司
はじめに
一 労災保険法の形成
二 労災保険法の展開
三 労災保険法の立法史の今日的意義――その将来の発展の方向

第10章 職業安定法―その制定と労働力需給システムの転換…………島田陽一
 はじめに
一 第二次世界大戦前の労働力需給システムの概要
二 占領政策の展開のなかでの職業安定法の成立
三 職安法による有料職業紹介の厳格な規制と労働者供給事業の禁止
 四 GHQの雇用政策の変化と労働者供給事業の取締緩和
 おわりに

第11章 職業能力開発促進法…………矢野昌浩
一 課題設定と時期区分
二 第1期――基軸としての公共職業訓練
三 第2期――企業内職業訓練への基軸の移行
四 第3期――個人主導の強調
五 展望

第12章 雇用保険法…………菊池馨実
 はじめに
一 雇用保険の歴史的沿革
二 現行の仕組みと適用状況
三 歴史的展開からみた雇用保険の特徴と限界

第13章 第2次世界大戦後における労働組合法立法史――総則、労働組合、団体交渉および労働協約にかかわる事項に焦点をあてて…………竹内(奥野)寿
 はじめに
一  労働組合法の制定と改正の経過
二  目的、刑事民事免責
三  労働組合の定義、労働者の定義、労働組合の設立や運営にかかる規定
四  団体交渉、労働協約
むすび

第14章 労働紛争処理法――個別労働紛争を対象とした労働紛争処理法の生成と課題…………浜村 彰
 はじめに
一 なぜ個別的労働紛争処理システムが立法課題となったのか
二 90年代からどのような議論がなされてきたのか
三 個別労働関係紛争解決促進法の制定
四 司法制度改革と労働審判制度の登場
五 労働紛争処理システムの実情と課題
むすびにかえて――行政型紛争処理システムと司法型紛争処理システムの関係

第15章 労働基本権制約理論の歴史的検討――「全体の奉仕者論」を中心に…………清水 敏
はじめに
一 旧労働組合法制定過程における公務員の労働基本権
二 旧労働関係調整法と公務員の労働基本権
三 官吏法案要綱
四 教育基本法および教員身分法案要綱案
五 マッカーサー書簡と国家公務員法の制定
まとめにかえて

労働立法史年表…………岡田俊宏

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