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2018年12月 2日 (日)

サンフォード・ジャコービィ『会社荘園制』@『HRmics』31号

1 『HRmics』31号。特集は「M&Aがあるじゃないか」ですが、私の連載「原典回帰」の第10回目は、サンフォード・ジャコービィの『会社荘園制』(北海道大学図書刊行会)です。

http://www.nitchmo.biz/hrmics_31/_SWF_Window.html

51w7pkhg2l_sx340_bo1204203200_  「原典回帰」連載開始以来、初めて現在なお活躍中の方の本を取り上げます。アメリカのサンフォード・ジャコービィ氏です。氏の『雇用官僚制』(Employing Bureaucracy)は、「アメリカの内部労働市場と“良い仕事”の生成史」という副題にあるように、アメリカ型の「ジョブ」に立脚した内部労働市場システムの歴史を描いた大著です。「アメリカに内部労働市場?」と思うかもしれませんが、内部労働市場という言葉はそもそもアメリカで生み出されたもので、それまでの「トレード」(職種)に立脚した外部労働市場型の社会のあり方から、20世紀前半に新たに登場しました。企業の事業を細かく分けていった管理単位としての「ジョブ」(職務)に立脚した仕組みは、20世紀アメリカ産業社会が生み出したものなのです。有名なドリンジャー&ピオリの『内部労働市場とマンパワー分析』がそのメカニズムを分析したものだとすれば、『雇用官僚制』はその生成の歴史を細かく跡づけた本と言えます。

 しかし、今回取り上げるのは誰もがジャコービィ氏の代表作と認める同書ではありません。『会社荘園制』(Modern Manors)というやや奇妙なタイトルのもう一冊の本です。『雇用官僚制』が20世紀アメリカのメインストリームとなった労働組合を組み込んだジョブ型内部労働市場を描いているのに対し、『会社荘園制』はその裏側でひっそりと生き延び、やがて組合の弱体化とともに勢力を拡大してきたノンユニオン型あるいはむしろ会社組合型の内部労働市場の歴史を描いているのです。なぜそっちを取り上げるのか?それは、それがいくつかの点で、日本的なメンバーシップ型の内部労働市場と似通った性格を示しているからです。 ・・・

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