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2018年11月28日 (水)

勝谷誠彦氏死去で島田紳助暴行事件を思い出すなど

Katuyaほとんど限りなく雑件です。

勝谷誠彦氏が死去したというニュースを見て、

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181128-00000060-spnannex-ent(勝谷誠彦氏 28日未明に死去 57歳 公式サイトが発表)

吉本興業で勝谷氏担当のマネージャーだった女性が島田紳助に暴行された事件の評釈をしたことがあったのを思い出しました。

これは、東大の労働判例研究会で報告はしたんですが、まあネタがネタでもあり、『ジュリスト』には載せなかったものです。

せっかくなので、追悼の気持ちを込めてお蔵出ししておきます。

http://hamachan.on.coocan.jp/yoshimoto.html

労働判例研究会                             2014/01/17                                    濱口桂一郎
 
中央労働基準監督署長(Y興業)事件(東京地判平成25年8月29日)
(労働経済判例速報2190号3頁)
 
Ⅰ 事実
1 当事者
X(原告):Y興業の従業員(文化人D(勝谷誠彦)担当のマネージャー)、女性
被告:国
Y:興業会社(吉本興業)
E:Y専属タレント(島田紳助)
 
2 事案の経過
・平成16年10月25日、Xは担当文化人Dに同行して赴いた放送局内で、面識のないEに話しかけたが、その際の態度を不快に感じたEがXに説教し、さらに立腹してEの控室に連れ込み、暴行を加えた(「Xの左側頭部付近を殴り、Xの髪の毛を右手でつかみ、3,4回壁に押さえつけたり、リュックサックで左耳付近を殴り、唾を吐きかけたりするなど」)。同日、警察に通報
・Xは同日から11月2日まで各病院で、「頚部、背中、左前腕捻挫」「頭部外傷I型、頸椎捻挫」「左上肢、背部打撲」「頸椎捻挫」「外傷性頭頸部障害、背部打撲」の診断を受けた。また11月9日には「急性ストレス障害」の診断を受け、平成17年1月「外傷性ストレス障害」(PTSD)に変更された(L意見書)。
・(本判決には出てこないがマスコミ報道によれば)平成16年12月9日、Eは傷害罪で略式起訴され、同日大阪簡裁が略式命令、罰金30万円を納付。Xは事件後休職、平成18年6月に休職期間満了で退職。平成18年8月5日、XはEとY興業を相手取って損害賠償請求訴訟を起こし、同年9月21日、東京地裁はEとY興業に1,045万円の支払を命じる判決を下した(判例集未搭載)。雇用関係確認も訴えたが認めず。双方控訴。平成19年9月22日、東京高裁で1,450万円を支払う旨の和解が成立。
・平成19年7月4日、Xは業務が原因で発症したPTSDとして監督署長に休業補償給付を請求。監督署長は平成20年7月2日、不支給処分(①)。平成19年7月4日、Xは業務が原因の外傷性頭頸部障害、背部打撲として休業補償給付を請求。平成20年7月2日、不支給処分(②)。平成19年8月16日、Xは業務が原因の外傷性頭頸部障害、背部打撲として療養補償給付を請求。平成20年7月2日、不支給処分(③)。
・平成20年8月28日、Xは上記3件の不支給処分を不服として審査請求。①については、平成21年7月21日、東京労働者災害補償保険審査官が棄却、8月19日に再審査請求、平成22年2月17日、労働保険審査会が棄却。②、③については、平成21年10月6日、東京労働者災害補償保険審査官が棄却、11月30日に再審査請求、平成22年8月4日、労働保険審査会が棄却。
・Xは、①について平成22年7月27日、②、③について同年11月15日、取消訴訟を提起。両事件は併合。
 
Ⅱ 判旨
1 本件事件(Eによる暴行)による災害の業務起因性
「本件事件は、・・・業務遂行中に発生したものといえる。」
「しかしながら、本件事件の発端についてみるに、XはY興業の社員(マネージャー)であり、EはY興業の専属タレントであるが、XはEの担当マネージャーではないことはもちろん、タレントとは異なる文化人マネジメント担当であり、Xの主たる業務上の接触先は,担当文化人やテレビ・ラジオのプロデューサーやディレクターであって(書証略)、XとEは、同じ会社に所属する社員と専属のタレントということのみで、具体的な業務上のつながりは認められない。」
「本件事件当日の具体的状況としても、・・・Xが、Dのマネージャーとしての担当範囲を超えて業務上のつながりがないEに対して何らかの業務上の行為を行うべき必要性は認められない。」
「これらの点からすれば、XはEに対して、東京広報部文化人マネジメント担当としての業務のために話しかけたものではなく、Eの上司であるMやNとの個人的つながりを持ち出して、私的に自己紹介しようとしたものであるとみるのが相当である。
 したがって、本件事件の発端となるXのEに対する話しかけ行為は、業務とはいえないというべきである。」
「また、XがEから暴行を受けるに至った経緯についてみても、・・・確かに、Eが立腹するに至った事情として、Y興業の社員であるXがM及びNを呼び捨てにしたことがあり、同人らは本件事件前後の時期においてY興業の幹部であったことは認められる。しかし、Xは両名を高校生の頃に面識のあった人物として名前を出したものであって、Xの発言内容自体は、本来のXの業務との関連性は乏しいし、Eが立腹した理由の一つがXがY興業の社員であることであったとしても、XのEに対する話しかけやこれに続くXとEとの口論はXの業務とは関連性がない。」
「以上の通り、本件事件の発端は、XがEに対して私的にX自身を自己紹介しようとしたところ、Eがその態度に不快感を覚えたというものであって、そのXの行為について業務性は認められないこと、暴行に至る経過において、XがM及びNを呼び捨てにしたことがあるが、その発言自体は、Xの業務との関連性に乏しいことなどからすれば、本件事件による災害の原因が業務にあると評価することは相当ではなく、Xの業務と本件事件による災害及びそれに伴う傷病との間に相当因果関係を認めることができないから、業務起因性を認めることはできない。」
2 精神障害による休業(①)の業務起因性
「客観的にみれば、本件事件におけるその心理的負荷が「死の恐怖」を味わうほどに強度のものであったとまで言えるかは疑問である。」
「L医師による、Xの供述に全面的にあるいはXの本件における供述以上の暴行態様を前提としたPTSDの判断については、疑問を呈さざるを得ない。」
「以上によれば、Xが本件事件後、PTSDに罹患していたとは認めがたい。そして、Xの時間外労働の内容及び本件事件後に生じた事情等を考慮しても前期判断は左右されるものではない。したがって、XがPTSDに罹患したことを前提として、本件処分①の違法をいうXの主張は採用することができない。」
3 外傷・打撲による休業・療養(②、③)の業務起因性
「以上からすると、Xの外傷に対する治療は、平成16年11月2日までに終了していると判断されるべきであり、同日以後の療養については、本件事件との因果関係は認められず、同日以降の療養について療養補償給付を求める本件請求③は支給要件に該当しないというべきである。」
「そもそも、休業補償給付が支給されるのは、療養のために労働をすることができず、労働不能であるがゆえに賃金も受けられない場合であることからすれば、療養が必要でなければ休業も当然必要ではないこととなるので、本件においては、休業補償給付の支給の要件を満たさないというべきである。したがって、平成16年11月2日以降の休業は、本件事件との因果関係が認められず、同日以降の休業について休業補償給付を求める本件請求②は支給要件に該当しないというべきである。」
 
 
Ⅲ 評釈 1に疑問あり。2,3は賛成。
 
1 本件事件(Eによる暴行)による災害の業務起因性
 本判決は、Xの遂行すべき業務範囲が「文化人D担当のマネージャー」であることから、その範囲外である専属タレントEへの話しかけを私的行為と判断している。しかし、被告主張にもあるように、「XがY興業所属の社員(マネージャー)であり、EがY興業の専属タレントであることから、このような両者の会話については業務性が肯定されるという見解もあり得る」のであり、もう少し細かな考察が必要である。
 事実認定において、判決はX側の「Xが業務遂行場所における業務遂行途上において、Y興業専属の大物タレントが一人で放置されていたことから声かけするのは職場における社員として常識的な行動である」との主張に対し、「本件事件当時、Eが特に担当マネージャー以外のY興業の社員からの声かけを必要とするような状況にあったことはうかがわれない」とか「XがEに話しかけた動機としては、職務上の立場とは無関係に、個人的な懐かしさの感情から話しかけたとみるのが相当である」と退けている。しかし、この論点の立て方では、Xがたまたまその時点で担当していたDのマネージャー業務以外は、Yの業務であっても特段の理由がない限り私的行為となってしまい、現実の日本における仕事のあり方とやや齟齬があるように思われる。X側が以下の論点をまったく提起していないので、いささか仮想的な議論になるが、本来はこういう議論があるべきではないか。
 判決文には示されていないが、XはDのマネージャー業務に限定してY興業に採用されたわけではないように思われる。本件事件当時Dのマネージャーを担当していたとしても、今後他の様々なタレントを担当する可能性はあったであろうし、その時のために、担当ではない時期から他のタレントに挨拶し、いわゆる顔つなぎをしておくことは、職業人生全体の観点からすれば将来の業務の円滑な遂行のための予備的行為としての側面があり、まったく個人的な行為とみることはかえって不自然ではなかろうか。現実の社会では、業務の輪郭はより不分明であって、Eに挨拶すること自体を厳密にXの業務範囲外と断定することには違和感がある。ちなみに、判決文ではEは「大物タレント」、Dは「文化人」と書かれており、それぞれのマネージャー業務は一見異なる種類の業務のように見えるが、実は両者ともY興業に属してテレビのバラエティ番組で半ば政治評論的、半ば芸能人的なコメントを行うタレントであって、一般社会的にはほとんど同種の業務と見なしうるように思われる。
 そしてこれを前提とすれば、将来担当する可能性を否定できないEが、過去幾多もの暴力事件を起こし、社内やテレビ局内でも暴力事件を起こしていたことから、本件事件による災害がEを専属タレントとして抱えて業務を遂行する過程に内在化されたリスクとのX側の主張も、「相当でない」と安易に退けることは疑問がある。
 もちろんこれに対しては、その時点での担当業務ではないにもかかわらず、将来担当したり関わったりする可能性のあるタレントと顔つなぎをしておきたいという意図で声かけをすることには、業務性は認められず、業務に関連した私的行為に過ぎないという反論もあり得る。ただ少なくとも、この論点を欠いたままの「個人的な懐かしさの感情」との判断には、いささか短絡的との感を免れない。
 
2 精神障害による休業の業務起因性
 現在、精神障害の認定基準は、「心理的負荷による精神障害の認定基準について」(平成23年基発1226第1号)及び「心理的負荷による精神障害の認定基準の運用等について」(平成23年基労補発1226第1号)によって行われているが、本件について給付請求、審査請求が行われていた時点においては、「心理的負荷による精神障害等に係る業務場外の判断指針について」(平成11年基発第544号)、平成21年4月6日以降は同通達の改正通達(平成21年基発第0406001号)、及びその関連通達によって行われていた。
 本件に対するこの通達の基準の当てはめについては、争点②についての被告側主張に詳細に述べられており、心理的負荷の強度はⅡ、総合評価は「中」であって、業務に起因するとは認められないとしている。この判断は基本的に是認しうる。
 また被告側主張では、訴訟提起後に発出された上記認定基準へのあてはめも行っており、そこでも総合評価を「強」とする「特別な出来事」はなく、「具体的出来事」としては「中」であって、業務起因性を否定している。この判断も是認しうる。
 また、X側のPTSDとの主張に対しても、詳細な反論を行っており、納得できるものがある。ちなみにL医師によるPTSDとの診断に対する疑念は、本人供述に基づく診断を基本とせざるを得ない精神医学について本質的な問題を提起しているようにも思われるが、ここでは深入りし得ない。
 なお、本件労災給付申請は事件発生の3年近く後に、民事訴訟の和解が近づいた時点で行われており、その動機にやや不自然なものも感じられる。
 
3 外傷・打撲による休業・療養の業務起因性
 これについても、被告側主張に詳細に述べられており、是認できるものである。
 

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コメント

>Y興業の社員であるXがM及びNを呼び捨てにした


全く確証がないので妄想の類ですが

事件当時、マネージャー氏が島田氏に話す時にマネージャ氏の上司を呼び捨てにした事を島田氏が怒ったという報道を聞いて、マネージャー氏は島田氏が吉本興業の社員ではないと思っていたという気がしました。
マネージャー氏が担当する勝谷氏は、吉本興業にマネジメント業務を委託していたそうです。つまり勝谷氏は吉本興業にお金を払ってマネージメントをやってもらっていたので、吉本興業にとって勝谷氏は顧客に当たります。このため吉本興業の社員であるマネージャー氏が顧客である勝谷氏にM氏やN氏の事を話す場合は(上司であっても社内の人間なので)呼び捨てだと思います。
当時の島田氏は飛ぶ鳥を落とす勢いの大物芸能人でした。このためマネージャー氏は島田氏がとっくに吉本興業から独立して顧客になっていると思い、身内の上司を呼び捨てにしたのだと思いました。
島田氏はデビュー当時はツッパリ(ヤンキー)を売りにしていました。その世界では上下関係を非常に重視するそうです。島田氏から見ると下っ端が目上の人を呼び捨てにしているので、つい”教育的指導”をしてしまったのかと思いました。
入社直後の研修で、講師から
 ”顧客には上司の事も謙譲語を使う(名前は呼び捨て)”
と言われたのを思い出しました。

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