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2018年11月 8日 (木)

お客さまへの笑顔は同意にあらず

一昨日(11月6日)に最高裁が下した判決は、直接には公務員の停職処分にかかわる事件ですが、昨今話題の顧客によるハラスメントの問題に対しても示唆するところが大きいと思われますので紹介しておきます。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/104/088104_hanrei.pdf

平成30年11月6日最高裁判所第三小法廷判決(破棄自判)

地方公共団体の男性職員が勤務時間中に訪れた店舗の女性従業員にわいせつな行為等をしたことを理由とする停職6月の懲戒処分について,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法があるとした原審の判断に違法があるとされた事例

まず、この原告男性がなにをやったかというと、

被上告人は,勤務時間中である平成26年9月30日午後2時30分頃,上記制服を着用して本件店舗を訪れ,顔見知りであった女性従業員(以下「本件従業員」という。)に飲物を買い与えようとして,自らの左手を本件従業員の右手首に絡めるようにしてショーケースの前まで連れて行き,そこで商品を選ばせた上で,自らの右腕を本件従業員の左腕に絡めて歩き始め,その後間もなく,自らの右手で本件従業員の左手首をつかんで引き寄せ,その指先を制服の上から自らの股間に軽く触れさせた。本件従業員は,被上告人の手を振りほどき,本件店舗の奥に逃げ込んだ。

で、これに対して原審はこう判断して、請求を認容したわけですが、

被上告人による行為1は,以前からの顔見知りに対する行為であり,本件従業員は手や腕を絡められるという身体的接触をされながら終始笑顔で行動しており,これについて渋々ながらも同意していたと認められる。・・・

行為1は,・・・犯罪行為であるが,本件従業員及び本件店舗のオーナーは被上告人の処罰を望んでおらず,そのためもあって被上告人は行為1について警察の捜査の対象にもされていない。・・・

・・・行為1が悪質であり,被上告人の反省の態度が不十分であるなどの事情を踏まえても,停職6月とした本件処分は重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠く。したがって,本件処分は,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものであり,違法である。

最高裁はそれを否定しました。

しかし,上記①については,被上告人と本件従業員はコンビニエンスストアの客と店員の関係にすぎないから,本件従業員が終始笑顔で行動し,被上告人による身体的接触に抵抗を示さなかったとしても,それは,客との間のトラブルを避けるためのものであったとみる余地があり,身体的接触についての同意があったとして,これを被上告人に有利に評価することは相当でない。上記②については,本件従業員及び本件店舗のオーナーが被上告人の処罰を望まないとしても,それは,事情聴取の負担や本件店舗の営業への悪影響等を懸念したことによるものとも解される。

「お客様は神様です」という言葉が、どんな無理無体でも笑顔で受入れなければならないかのように言われる日本社会では、こういう行為に対してやられた女性従業員が終始笑顔で対応し、経営者側も事を荒立てないようにしようという傾向が強いわけですが、それを理由にやった行為がたいしたことでないかのように主張するわけにはいかないよ、というまことにまっとうな判断でしょう。

そして近年、顧客によるセクハラや嫌がらせが頻発している状況を考えると、この最高裁の判断は拳々服膺すべき内容があるように思われます。

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